14/15
声の主
「魔王を倒さなかった勇者は、あんたが初めてだ」
「倒す必要がなかったから」
「そのようだな」
抑揚のない声ではあるが、敵意は感じなかった。
「魔王は人々を脅かすものではなくなった。私の役目も終わりだ」
「役目を終えたら、どうするの?」
「さあ、私にも分からない」
「なら、今度はあの世界で暮らしてみたらどうかな」
「そうだな…それは楽しそうだ」
抑揚のなかった声が、わずかに嬉しそうな声色に変わった。
「あんたを返すっていう最後の役割が終わったら、今度は私が行ってみるとしよう」
「そしたら、セトさんにもよろしくね」
「ああ。私がこの記憶を覚えていられたら、必ず伝えると約束する」
その言葉を最後に、僕の意識は途切れた。
意識が無くなる直前、可愛らしい天使のような女の子が、笑っているのが見えた気がした。




