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異世界との別れ
「準備はいいか」
「いいよ、セトさん」
「じゃあ、いくぞ」
やって来るのは二度目となったこの遺跡で、僕は魔方陣の中心に立っている。
この場にいるのはセトさんと僕だけだ。
別れの挨拶は、昨日までで済ませた。
誰も、引き止める人はいなかった。
元の世界へ帰るべきだと、皆が言ってくれた。
セトさんが『英雄伝説』に書いてあった祈りの言葉を唱え始めると、どこからか強い風が吹いた。
不思議と、僕もセトさんも風に飛ばされたりはしなかった。
ああ、本当にこれで帰るんだ。
そう思うと、頭の中にいくつも言葉が浮かんでくる。
あれも伝えればよかった。
これも伝えればよかった。
けれど、伝えたらきっと決意が揺らいでしまうから。
だから、一言だけ伝えることにした。
「ありがとうセトさん!僕の側に居てくれて!」
もう、光が強くてセトさんの姿も見えない。
それでも、風の中で確かにはっきりと聞こえた言葉。
「俺も、楽しかった!元気でな!」
それが、セトさんと最後に交わした会話だった。
「帰るんだな、あんたは」
どこからか、女性の声が聞こえた。
それは、異世界にやって来る時に聞いた声と同じものだった。




