最後の夜
「ついに、明日だな」
「…そうだね」
明日はついに儀式を行う日。
すなわち、僕が元の世界へと帰る日だ。
街に戻ってから数日。
闘技場の皆に事情を説明したり、異世界へいける宝石をリリカさんから受け取って、儀式の手順を何度も確認したり。
とにかく、忙しい日々を過ごした。
ちなみに遺跡の場所はというと、なんと僕がこの世界に来た時に立っていた場所だった。
今はもう遺跡も朽ち果てて、大昔に居たとされる伝説の勇者の銅像だけがそこにはある。
今、この勇者の銅像を管理しているのはセトさんだ。
だから、あの日もセトさんはあの場所に居て、そして僕を見つけてくれたのだ。
何気なく窓の外をぼんやり見ていると、セトさんが「眠れないのか」と言って近くに来てくれた。
「ねえ、セトさん」
「何だ」
「僕、元の世界では剣闘士なんかじゃないんだ」
「それはそうだろう」
「あと、セトさん僕を10歳くらいって言ってたけど、あの時本当は8歳だったんだ」
見た目はね、と僕は心の中で付け足した。
元の世界の桜葉ミナトは14歳だ。
つまり、今の僕と同い年になる。
「そうか…人間は年が分かりずらいからな」
多分、嘘だ。
セトさんは、僕が10歳ではないと分かっていて僕を剣闘士にしたんだろう。
僕が、この世界でちゃんと生きていけるように。
「ほら、もう寝るぞ」
「うん」
きっと、今晩は眠れないだろう。
そう思いながら、寝室へ向かった。




