宝石の在処
街へと帰ってきた後は、案の定リリカさんに怒られた。
正確には怒られていたのはセトさんだけで、僕はカナリさんと苦笑いしながらその光景を眺めていたのだが。
「…それで、その宝石があればミーナは故郷へ帰れるらしいんだ」
カナリさんへのお詫びという体でやってきた居酒屋(セトさんの奢り)で、二人にその話をすると、リリカさんは「宝石、私の部屋にありますよ」と軽い調子で答えた。
驚く僕らを他所に、リリカさんは話を続けた。
「私がまだ小さい時、おじいちゃんの友達が持ってきてくれたんです。あんたが言ってた宝石が遺跡から発見されたぞ、って」
「え…じゃあ何でひいじいちゃんは異世界に帰らなかったんだ?」
驚きを隠せない様子のカナリさんの問いかけに、リリカさんは笑って言った。
「そりゃあ、その時はもうおばあちゃんもいたし、お母さん…あんたのおばあちゃんもいたし、私もパパもいたしね。私のお腹にあんたもいたし」
じんわりと心が暖かくなっていくのが分かった。
そうか、彼は。
「この世界に家族がいたから、帰らなかったんだ」
「ミーナくんご名答。勿論少しは迷ったらしいけどね」
聞くところによると、彼は異世界では戦争孤児だったらしい。
「成程な。異世界で残してきた物よりも、この世界で得たものの方が多かったということか」
セトさんの言葉に、リリカさんは頷く。
「だと思いますよ。あのおじいちゃんらしいですけど」
僕は素直に感嘆した。
その決断をするには、相当な勇気が必要だっただろう。
「何より、おじいちゃんとおばあちゃん、すっごいラブラブだったから」
おばあちゃんと離れたくなかったんでしょう、とリリカさんは魚をつつきながら笑った。




