【短編版】悪役転生令嬢、メモに書き起こした王子たちの攻略情報を本人たちに送付してしまう。
連載版、始めましたm(_ _)m
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――――やっばい!
やばいやばいやばいやばい、なにがやばいって、本気で生命の危機というか、社会的な危機というか、やばい。まじで、やばい。
いつからだっただろう。自分が転生していると気付いたのは。
わりと幼少期だったとは思う。
ただ、なんとなくくらいだった。前世の記憶があるっぽいけれど、そんなこと言うと皆が気持ち悪がるわよね? くらいの認識だった。
もうほぼ忘れかけていたのに……神様とは鬼畜だと思う。
王太子殿下の婚約者探しのお茶会に参加し、なんとなく見覚えのある風景に出くわした。
王太子殿下とふわふわ金髪のご令嬢が楽しそうに話している姿を見て『スチル』という言葉が脳内に浮かび上がった。
わぁ、スチルだぁ――――って、これ乙女ゲームぅぅぅぅ!? と。
今日、私は薄らぼんやりだった自分の前世をハッキリと思い出してしまった。そして、今世が前世でやっていたゲームの登場人物だったということも。
しかも、主人公やモブでもなく『悪役令嬢』だったことを知る。ヒロインをいじめていじめて、いじめ倒す、わっるーい黄緑頭のご令嬢。…………黄緑。脳内に流れ込んでくる情報に呑み込まれながら思う。
「きみどり……………………ないわ…………」
「イザベルッ!?」
遠くから駆け寄ってくる、幼馴染の近衛騎士の頭上に【♡♡♡】が見えた気がした――――。
「……づはぁぁぁぁ! っ、あれ? ここ?」
さっきまで王城の庭園にいた気がするのに、部屋の中。しかもふかふかのベッドに寝ていた。
「気が付いたか。全く、人騒がせな」
「王太子殿下……」
ベッドの横に置いてあるイスに王太子殿下が頭上に【♡♡♡♡♡】を浮かべ、足を組んで座っている。眉間にシワを寄せて、不機嫌そうな顔で。
――――あ、ツン多めのツンデレ殿下だ。
脳内にぶわりと膨れ上がる乙女ゲームの情報に、またもや目眩がした。
「……た、大変……ご迷惑をおかけしました」
パニクる頭をどうにか落ち着けてしどろもどろに謝罪すると、怪訝な顔をされてしまった。
「お前がそんなに素直だと気持ちが悪いな」
「…………あ」
「あ?」
そういえば私は超絶ワガママで高飛車な悪役令嬢だった。ワガママと暴走を繰り返して、首チョンパされる悪役令嬢。…………あれ? 全ルートで首チョンパされてたくない? え? 私、どうあがいても胴体と頭がさようならコースなの!?
怪訝な顔をしまくる王太子殿下から逃走を図り自宅に戻った。
あの頭上のやつは何なんだ。聞きたいが、たぶんあれは誰にも見えてないはず。だって、あれ前世のゲームの攻略対象の難易度だもん……。
「お嬢様、お顔が真っ青ですが、どうされました?」
「なんでもないわ! 部屋にこもるから、誰も入らないでね!」
大急ぎで部屋に向かい走っていたら、後から「またワガママ言ってるわ」とか「暫く放置しないと、癇癪起こすわね」と聞こえてきた。
ハッキリと前世を思い出したことで、今までの自分の振る舞いが恐ろしいほどに『イタい』ことを知る。
これはヤバい。あれやこれやあんなことやそんなこと、なんだかんだで首チョンパされる可能性は、ある気がする。
幸いなことに、ヒロインの物語はあのお茶会からスタートだった。ということはよ? ヒロインと攻略対象たちに嫌われなければ万事オッケーじゃない?
奮い立て、私! 記憶の中の記憶よ、甦れ! ややこしいが、甦れ!
各キャラの攻略法を思い出せぇぇぇ!
そうして書き上げたのは、三枚の攻略情報。
とりあえずそれぞれを封筒に入れた。どれが誰のかわかるように名前も書いて。
だって、封筒に入れてたら、誰も勝手には見ないでしょ? 私、天才じゃない!? と思ってたのよ。このときまでは。
夕食をダイニングで食べて、お父様とお母様とちょっと今後についてふわっとお話して、部屋に戻ったら、レターデスクの上に置いていた封筒がごっそりとなくなっていた。
「え? ねぇ、ここに置いていた封筒は?」
「発送いたしましたが……」
「あっ――――」
いつも、机の上に置いている封蝋済みの手紙は発送するよう言いつけていた。完っっっっ全に忘れていた。
そもそも、封蝋はしていなかったはずだけど、綺麗に重ねて置かれていて、名前も書かれていたので、封蝋は使用人が押して出しておけ、と怒られるパターンだと判断したそう。
確かに、以前の私なら言いかねない。つか、言うね。絶対に言うね。
「もももも申し訳ございません」
顔面蒼白になっている侍女に気にしなくていいよと言いつつも、頭を抱え踞る。
――――やっばい!
やばいやばいやばいやばい、なにがやばいって、本気で生命の危機というか、社会的な危機というか、やばい。まじで、やばい。
中身を見られたら人生さえも終わりそうだけど、時間的に全部配達済みっぽい。
まじで、やばい。人生詰んだ。
□□□□□
▷▷▷エドヴィン・クランツ【♡】
・ヒロインの隣家、クランツ伯爵家の長男
・ヒロインを妹のように可愛がっている
・エドヴィンルートでは、困窮しているクランツ家を我が家が支援する
・支援の代わりにエドヴィンがイザベルの婚約者になる
・愛のない結婚をすることになったエドヴィンの悩みをヒロインが聞く
・相談している内にヒロインとの愛が芽生える
・二人の関係に気づいたイザベルがヒロインを虐める
・なぜかなんやかんやで、真実の愛の方が正義扱いで、虐めたイザベルが修道院送り
・オトすなら、エドヴィンときちんと愛を育む
・好きな食べ物はチョコケーキ
イザベル・グランフェルト侯爵令嬢から手紙が届いたと、従僕から渡された。
中を確認すると、意味のわからない箇条書き。妄想だろうか? いやしかし、妙にリアルというか……困窮しているのがバレている。
ヒロインとは誰だろうか? 隣家? もしやクリスティーナか?
とりあえず、イザベル嬢に接触すべきか?
オトす? これは…………いや、深く考えてはいけない気がする。
□□□□□
▷▷▷近衛騎士ラウル【♡♡♡】
・イザベルの幼馴染
・幼い頃から、イザベルに恋をしている
・イザベルが王太子の婚約者になり失恋
・イザベルに虐められるヒロインを陰ながら助ける
・健気に耐え続けるヒロインに心打たれる
・ヒロインに暴漢をけしかけたのがイザベルだと知り、苦悩の末に斬首に持ち込む
・オトすなら……ってか、わりとすでに好かれている
・弱みは割と握っているからそれを使う
・王太子には逆らわないから、そのルートを使うのもあり
幼馴染のイザベルから手紙が届いたので開いたら、謎の箇条書きが記されていた。
私がイザベルを斬首? なぜそんなことになる……というか、王太子の婚約者がイザベル? いや、確かに殿下はイザベルを気に入ってはいるが、あの人に恋愛感情があるのか? そもそも、発表などなかったはずだが?
…………私が失恋? っ、イザベルを好きなことが、本人にバレている!?
いや、だがこれは、妄想? なぜ私にこれを送ってきた?
弱みを握られて…………いるな。幼い頃のあれやこれや程度だろうが。
昼間のお茶会でも様子が可怪しかった。気絶したのはドレスが苦しかっただけだと言っていたが、怪しい。
明日、本人に確認せねば……!
□□□□□
▷▷▷王太子ユリウス【♡♡♡♡♡】
・ユリウス・オードランド
・この国の王太子殿下
・性格はツンだらけで、ごく稀にデレる
・ユリウスルートでは、イザベルが婚約者
・新年を祝う夜会でユリウスとヒロインが仲良くなる
・それを見たイザベルが激怒、執拗な虐めの開始
・虐められても立ち上がるヒロインに心打たれるユリウス
・なんやかんやで、イザベルの処刑を決断
・オトすなら……オトしたくない
・激ツン過ぎてこっちの心が折れる
・顔はいい
イザベルから手紙が来たかと思えば、昼間の礼ではなく、謎の妄想が書かれていた。
ほう? イザベルは、私がツンだと思っているのか。
イザベルが婚約者? ヒロインとは誰だ? 虐める? イザベルが人を?
まぁ、やれるしやるだろうが。そこまでの労力を出していいと思うかどうかだな。あれは、教育のためにというか相手に期待して厳しくするきらいはある。多少やり過ぎだが。
だが、この文から行くと、イザベルは嫉妬から虐めているのだろう。妄想だが。
なぜ私がイザベルの処刑をする必要がある?
オトしたくない? 顔はいい? ふぅん? いい度胸だな。少し……わからせてやるか。
◇◇◇◇◇
――――やっばい!
やばいやばいやばいやばい、なにがやばいって、本気で生命の危機というか、社会的な危機というか、やばい。まじで、やばい。
どうか、誰も読みませんように!
何なら手違いとかで捨てられるか戻ってきますようにっ!
―― fin ……?
読んでいただき、ありがとうございます!
こちらの作品は小説仲間とドジはどうやったらなくなるのか……的なお話をしていて生まれましたw
タイトル:くるまさん
やらかし元ネタ:陽炎氷柱さん
あじゃまっっっす!
陽炎さんのやらかしは、別作品『https://ncode.syosetu.com/n0121if/』もおすすめです←
相変わらずアホだなぁwくらいの感覚で、ブクマや評価していただけますと、笛路が小躍りして喜びますヽ(=´▽`=)ノ