表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/152

30) 2周目 喜びと地獄

※ウィロー視点です。


 シンシアといちゃいちゃしている夢を見た。いちゃいちゃというか、少々いやらしい夢だった。


 目を覚ますと、リアの後頭部が見えた。長い黒髪がベッドに広がっている。慌てて、同じベッドで寝ている状況に飛び起きる。リアは背中を向けて、離れたところにいる。触っていないみたいだ。触っていない。たぶんセーフ……セーフだろうか?


 リアはベッドの端にいて、お腹を出して寝ている。すぴすぴ。淑女とは程遠い姿だ。そっと服をもとにもどす。


 まだ夜明け前だったが、起きて顔を洗う。


 もう今日一日、ダメな気がする。

 誰だ旅行に行こうなんて言ったのは。


(ぼくは、リアにいろんな景色を見せたかっただけなのに……)


 リアがキスに興味をもって、おかしくなってしまって――かと思えば無邪気に甘えて布団にもぐりこんでくる――


(もう本当に勘弁してほしい)

という気持ちだ。


ーーーーーーー


 ボートの上でリアに言ったこと、言わなかったこと。


「子どものようにも思っているし、妹のようにも思っている――それから――」


 それから、もちろんリアは、最愛の妻シンシア、その人であるということだ。


 同じ人だと考えないように努力している。しかし、考えなくても、いやでも思ってしまう。

 リアの声、まなざし、表情、体温やにおい、触れた手の感触で。

『シンシアが生きている』ということを実感する。


 それは最初、ただただ喜びだった。

 けれど最近は、喜びとともに、地獄のように感じるときがある。


 髪の色の魔法だって、もっと白に近い色は色々あった。でも、正反対の黒にしたのは「この子はあのシンシアではないのだ」と自分に戒めるためだ。シンシアではない、だから、自分とずっと一緒にいる存在ではない――添い遂げるわけではないのだと。


 けれど――ボートの上で自分の要求に負けて、髪の色の魔法を解いて、(ああ、あのときのシンシアと同じだ。赤い葉が、白い髪に映えて、綺麗だな)と感じたり……たびたび、混同してしまう。


 心のなかが、ごちゃごちゃになって、混ぜこぜにしてしまう。 


 いまのリアに――シンシアを愛するように、接するのは間違っている。リアは家族だけれども、恋人ですらないのだから。

 しかしたまに、混同してしまう。

 

 あの言葉も「思っている」というのは正確ではない。リアのことを「自分の子どものように、妹のように思わないといけない」と思っている。

 この子を、育てないといけない、しっかり守らないといけないと。

 今は、この子の保護者であって、もう、夫ではないのだと。


 そうでなければ、もう、やっていられないからだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ