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2周目 うさぎのぬいぐるみ


 リアは、朝起きて誕生日だと気づく。去年の10歳の誕生日は、ばあやとふたりでささやかに、あたたかくお祝いをした。ばあやの手づくりのケーキを食べてお花をもらった。お花が良いにおいがしたのを、リアは今でも思い出せる。


(でも、私が誕生日だって、ウィロー様もロアンも知らないはずだわ)


 宿屋のベッドから起き上がると、リアのおなかの上に、うさぎのぬいぐるみが居た。


「お誕生日、おめでとう! リア」

 白いうさぎのぬいぐるみはリアのおなかの上で、動いている。

(え、えー! うさぎさんが動いてる!)

 11歳のリアは、目をまるくする。

(可愛い!)

 リアは、うさぎのぬいぐるみに手を伸ばして、ぬいぐるみと握手をする。


「うさぎさん、生きているの?」

「うん! ボクはリアのお誕生日をお祝いしにきたんだんだよ。リアのいちねんが、素敵なものになるように、ボクは心から願っているよ!」

「うさぎさん、ありがとう! ぎゅーってしてもいい?」

「もちろんだよ!」

 リアは嬉しそうに、うさぎのぬいぐるみをぎゅーっと抱きしめる。



 リアはうさぎのぬいぐるみが本当に生きていると信じているみたいだ。ぬいぐるみと少女の可愛いふれあいを、ドアの隙間からそっと覗いているあやしい魔術師がひとり。


(かっ かわ 可愛い〜〜!)

 リアはまだウィローにあまり気を許してくれていないので、うさぎに向けての微笑みが愛くるしくて仕方がない。

(可愛すぎる……天使なのかな? 毎日思うんだけど、小さなシンシアはやっぱり可愛すぎる……目が幸せすぎる……ぼくなんかと一緒に居て良い存在なのかな……天使だよ……)


 覗き見しているウィローの背中に、ロアンが声をかける。

「ウィロー 何してるんですか?」

「しー!」

 ウィローは慌てて、人差し指を口元にたててみせる。


ーーーーーーー


 その日のお昼ごはんはごちそうだった。

「お誕生日おめでとう、リア!」

「おめでとうございます、リア」

 リアは目をぱちくりさせる。

「どうして私のお誕生日だって知っているの?」

「リアのお誕生日を、忘れるわけがないよ」

 ウィローはニコニコしている。

「答えになってないわ……でも、ありがとう、ウィロー、ロアン」

 リアは変な顔をしながらも、ふたりにお礼を言う。


 リアは、うさぎのぬいぐるみをとなりに座らせている。食事をしながらリアは聞いた。

「ねえ、うさぎさんって何を食べるの?」

「うさぎ? うさぎは野菜を食べると思いますが……」

「違うわ、ぬいぐるみのうさぎさんだわ!」

「ええ……?」

 ロアンは困り顔でウィローに助けを求める。


 ウィローはリアに微笑みかける。

「リアが、うさぎさんを大切にしたら、その気持ちを食べるんじゃないかな? だから、大切にしてあげてね」

「うん、わかったわ!」

 リアは嬉しそうに、うさぎのぬいぐるみをぎゅーっと抱きしめている。


(可愛すぎる……可愛すぎて息が止まりそう、助けて欲しい……)

(リアはまだまだお子さまですね、ぬいぐるみのごはんだなんて……)

 ウィローがリアの可愛さをかみしめているとなりで、ロアンはやれやれ、といった感じだ。


 それからリアはうさぎのぬいぐるみをとても大切にして、いつも持ち歩いて過ごした。うさぎのぬいぐるみは、リアが元気がないときなどに、たまに動いて喋ることがあった。リアはなぐさめてくれるうさぎにお礼を言って、ぎゅーっと抱きしめた。

「うさぎさん、大好き!」

(可愛い〜〜!)

 リアから隠れながら、魔術師が毎回、可愛さにうちのめされていたのを誰も知らない。


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