第1話 未知との遭遇
俺の名前は小島優斗。平凡な高校2年生だ。学力、運動、容姿全てにおいて平均的。
しかし、そんな俺とはおさらばだ。俺は手に入れてしまった。人が隠していることを見抜く超能力を。
話は昨日に遡る。最寄り駅のホームでいつも通りゲームをしながら電車を待っていると肩を叩かれた。振り返ると、髭が長いいかにも不審者みたいなジジイがいた。
「これこれ、そこの若人。浮かない顔をしとるのう。わしの若い時を思い出すわい。お前の願いをひとつ叶えてやる」
唐突に知らんジジイに話しかけられた俺は少し動揺してしまった。頭のおかしいヤツにからまれたと思い、足早にその場を去ろうとするがジジイの言葉が俺の足を止めた。
「待ちなされ。お主の心はお見通しじゃ。お主、平凡な生活に嫌気がさしておるな」
「そして君は日常に求めている、刺激を。そしてワシは君の願いを叶えることが出来る。約束しよう、君に非日常を提供することを」
「しかし1つ条件がある。君が今やっているそのゲーム。弦神。わしもやっているのだが全くキャラが出んくての。そのデータをワシにくれるなら願いを叶えてやろう」
その瞬間俺の怒りは頂点に達した。なんてジジイだ。勝手に話しかけてきてしかも俺のアカウントを寄越せだと。図々しいにも程があるぞ。
「フォッフォッフォッ、そう怒りなさるな。これでどうじゃ、ワシの持つ108の力のひとつじゃ。ホレっ」
その瞬間視界が真っ白になったがすぐに元通りになった。
「一体、俺に何をしやがった。」
ジジイは言う
「何もしとらんぞ」
その瞬間、頭の中に文字が浮かぶ。「隠し事」
「か く し ご と ?」
「フォッフォッフォッ、どうやら上手くいったようじゃ。
これはワシが持つ力の54番目の能力。相手の隠し事を見抜く能力じゃ」
「それじゃ、ゲームのデータはいただくぞ、さらばだ〜」
仙人は一瞬で俺のゲームデータを移行し、パスワードを変えて去ってしまった。あまりにも早いデータ移行、一体何者なんだ。
「って、俺のアカウント返せー! 」
あっけにとられるも束の間、老人は姿を消してしまった。
「ハンザイシャジャンッ!」
俺の悲痛な叫びは虚しく誰も居ないホームに響き渡る。