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プロローグ 処刑台の未来
私、公爵令嬢リアーヌ・ベネシュは処刑台へと歩いていった。
周囲には囃し立てる群衆たちが見える。悪人の処刑は最大の娯楽だ。その気持ちは人でなしと言われている私にもわかる。
処刑人が私の罪状を読み上げる。橋の下の浮浪者からどこぞの伯爵まで、身分や年齢を問わないありとあらゆる人間の死に関わったという容疑。日が暮れるのではないかと思う程の量だ。そして私はその全てに覚えがある。
「……もういいだろう」
延々と続く罪の読み上げを止めたのはロイク王子だった。かつては私の婚約者だった人だ。だが今その隣には別の人間が立っている。彼女が誰かなんてどうでも良い。大事なのは彼が私を裏切ったということと、そして私の方が罰されるということだ。
私はニコリと笑みを浮かべ彼に言った。
「私の言ったとおりになりましたね」
王子は苦いものを噛み潰したような表情をした。
「……ああ、そうだな」
「それでは、私が死ぬところを目に焼き付けておいてください」
処刑人がギロチンの刃を支えるロープを切る。
私の首が転がり、ロイクと目が合う。
これが私の見た私の最後の未来だ。