表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
散文の後/北風(仮)  作者: 新辺守久/小珠久武
本編
16/17

初陣・一

 突然の降って湧いた出撃に戸惑っていると、ゼクスさんは後部にある主操縦席に乗り込んできた。そこに雑談という情報交換を切り上げてヴァルファ候補生が魔導機に駆け寄ってくる。


「聞いていたな、ヴァルファ訓練生。そう言う訳だから今回はオンワード艦内で待機していてくれ」

「いえ、ゼクス教導官了解しました。アルは初めてなんでしょう? 実戦経験させるに丁度いい機会だと思います」


 ヴァルファ候補生はゼクスさんにそう答えて俺の方を見る。


「アル、そこは俺の座席だからな。ゼクス教導官の操縦に驚いて漏らすんじゃないぞ」

「……は、はい、善処します」


 戸惑いと緊張感から精一杯の返事だった。ヴァルファ訓練生は拳で俺の肩を軽く叩いて、魔導機の稼動に備えて機体から距離を取った。


 俺とヴァルファ訓練生の短いやり取り、その間ゼクスさんは座席に置いてあった飛行帽を被って顎紐を止めて保護メガネを装着し、最後に座席のベルトで身体を固定していた。


「今回は戦闘は無しで高みの見物だ。アルはただ座って復習と反復、魔導機の空中機動がどんなものかを感じればいい。計器類のチェックや周りの状況確認は俺の方でもやる」


 ゼクスさんの言葉を聞きながら、俺も訓練用にと用意していた自分の飛行帽を被って顎紐を止めて保護メガネを着用する。そして、座席のベルトで身体を固定した。


 この世界ではまだフルフェイスのヘルメットは存在しない。一応、高高度で活動できるように魔導具で作られた酸素ボンベは備わっていて、座席の横に吊るされている。


 ゼクスさんは主操縦席乗り込んで準備を整えてから、軽く機体状況と計器類の確認を簡易ながら行っていた。本番は離陸前の魔導機関に火を入れた時だ。


 魔導機は思ったより簡単に押せるようで、整備員数人掛りの手押しで格納庫内を後部甲板に据え付けられた射出機に接続する昇降機まで移動させていた。


「アル訓練生っ、頑張れよ!」

「本当に大丈夫か? 俺が代わってやろうか!」

「初陣で吐いたりすんじゃねーぞ!!」

「ゼクス教導官の足を引っ張っるなよ!」


 ヴァルファ訓練生の声を皮切りに、アンバコート候補生や他の訓練生も機体の側までやって来て声援なのか囃し立てているのか声を掛けてくる。


 アヴィ教導官はそんな訓練生たちを苦笑いしながらその姿を見ていた。


「アル、お前も気合入れるためになんか言い返してやれっ!」


 操縦席に座っていたゼクスさんが訓練生たちの激励にこたえろと発破を掛けてきた。

 ……応えてやれって、咄嗟にどんな言葉を返せばいいかなんて思いつかないんだけど。


 丁度、そのタイミングで魔導機が昇降機に据え付けられた軌道部分に固定されて甲板に向けて登り始めていた。その瞬間、前世の記憶から天啓がくだった。


 訓練生たちや教導官たちの方を向いて、飛行帽のツバの部分に指先を添えて敬礼をする。そして、そのまま前方に振り下ろした。アニメや映画で出撃前にやっていた敬礼だ。


 一度やってみたかった。内心でそんな達成感を味わっていたら、格納庫内に訓練生たちの歓声が上がり遠巻きに見ていた整備員からは指笛や口笛が鳴らされた。


「あー、その敬礼カッコいいな!」

「そこだけ見たら熟練の操縦士みたいだぞ!!」

「今度俺も真似させてもらう!!」

「頑張れよーっ!!」

「ヒュー!! ヒューッ!!」


 昇降機が甲板装甲層を通過した辺りで彼らの囃し立てた声が聞こえなくなった。


「アル、今回はお前の初陣だ。行ってくるぞ、とか任せておけ、なんて気合の入った言葉を期待したんだが、まぁいい。飛んでる最中は座学の復習しながら計器や操作盤に集中していろ。余裕があったら周囲の状況を見ててもいいが、身体に不調を覚えたり少しでも異変を感じたらすぐに知らせるんだ、いいな」

「了解しました」


 ゼクスさんの言葉に短く返事をすると、昇降機の上昇が停まった。甲板整備員に因って魔導機関が始動する。それに伴い機体は力強い唸り声を上げた。折り畳まれていた主翼がゆっくりと広がっていく。


 魔導機関の始動と同時に目の前にある操作盤の計測器類の針が正常な稼動状態を示していた。言われた通り復習を兼ねて声を出しながら計器類をチェックしていく。


 そうしていると股の間に有る操縦桿が前後左右に揺れた。横を見ると広げられて固定された翼のフラップが上下に動いていた。ゼクスさんが改めて各種運行前点検を行っているようだ。


 魔導機が載っている昇降機の軌道部分は射出機の軌道に接続されるようになっていて、それが徐々に傾き始めている。これで魔導機はいつでも艦外へ吐き出される状態になった。勢いよく撃ち出すのではなく落とされると言ってもいい。


 魔導機に操縦席全体を覆う風防は無い。前世にあった複葉機みたいな風防が前面に据え付けられているだけだ。風防の覆っていない上を見ると、群青色の空が広がっていて遙か中天には黄色に近い白色をした太陽が存在していた。


 そして、鮮やかな群青色を汚すような大量に咲いた弾幕の黒い花が目に入った。


「ちぃぃ、母艦の奴等露天駐機してたのかよ、もう飛び立ってやがる」


 遙か上空に向けていた視線を落としてみれば、後方に陣取っていた母艦アメリアから魔導機が順次飛び立ち始めていた。


 ひと通りの運行前点検を終えたゼクスさんが外に向かって手で合図をする。射出機の横にいた係員が固定具を外すレバーの操作を始めた。


「アル、射出機から飛ぶ際はケツが浮いて身体に急激な浮遊感がある。操縦席の側面にある出っ張りに足を引っ掛けて踏ん張れ、腹に力を入れろ!」


 後部座席から離陸時のアドバイスの言葉が飛んでくる。


赤雷せきらい出撃る!!」


 続いてゼクスさんの愛機の名前と共に出撃の言葉が発せられたのを合図に係員が固定具のレバーを引いた。

我が妄想でした。

読んで頂き有り難うございます。

更新は不定期でマイペースです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ