教導部隊・二
さて、俺はゼクスさんのコネでなんとか教導部隊に配属された。と言っても、まだ下っ端の見習いみたいなものだ。
そんな俺は現在戦艦オンワードの格納庫内で、ゼクスさんの空いた時間を貰って複座型魔導機の副操縦席前面に設置されている魔導機の操作盤を使いながら訓練をしていた。
ゼクスさんが教導しているヴァルファ訓練生の好意で、いつも彼が訓練で座っている操縦席に乗せて貰えることになったのだ。
そもそも俺は、兵学校の飛行科を出てから魔導機の実働飛行時間がゼロの為、ゼクスさんの空いた時間を貰って往路と<竜の墓標>遺跡に接続された駐屯地で指導してくれた。
そういえば、一度だけ駐屯地で兵学校の同期とばったり会ってそのまま晩飯食ったっけ。
それ以外の時間はゼクスさんから出された課題と座学、自主訓練をしていただけに、実際に魔導機の操縦席に座れるとなると、緊張感よりも興奮の方が先立ってしまう。
先ほど哨戒任務から帰投して整備待機中になったアンバコート訓練生を相手に格納庫の壁際で情報交換を交わしているヴァルファ訓練生に感謝しかない。
折角の機会なので、操作盤に集中する。機体に装着された高度や速度などの計測器類と操作用の魔法陣が映し出されている。ただし、実際の操作に影響がない仮起動の状態だ。
ゼクスさんは搭乗用の梯子に足を掛けながら、副操縦席内に腕を入れて盤面上を指差ししながら説明する。
俺はそれを聞きながら魔法陣や計器類をタップしたりフリックしたり忙しなく両手を動かし続ける。
ちょっとした弾みで魔法陣の端に指を滑らせたら回転した。お、結構遊びがあるなこれ。開発者の趣味か? 他の魔法陣も意味も無くついつい弄り回してしまう。
「…………」
横に居るゼクスさんは普段しないような顔をしながら言葉なく俺の操作を見ている。教導官らしくやっちゃいけない操作だったら注意なりの言葉を掛けて欲しいんだけど……。
「……アル、魔導機の操作盤を触ったことがあるのか?」
「今まで学校の座学と模擬訓練だけだったんで今日が初めてです。が、面白いですね、これ」
「……そう、か。いや、なに、手と指の動きが扱いに慣れた熟練っぽく滑らかだったからな」
戦艦の艦載機乗りってのはエリート扱いになるらしく、各地で活躍していた力量ある将来にわたって活躍が期待される若者が対象となって招集されている。
そんな彼等を、熟練の、年齢的にも熟成されている教導官たちがマンツーマンで己の技術や経験を受け継がせるべく指導に当たっているのだが、訓練生各々の力量があるの為か、それ程厳しい訓練にはなっていない。むしろ、身体作りの錬成の方が大変だったりする。
今日も教導官と共に訓練生は各々の魔導機に乗り込んで艦隊から先行して索敵任務に付いていた。
入れ替わりで戻ってきたアヴィ教導官は、交代休憩ついでに格納庫の端で自分の駆る機体の整備状況を確認していた。その傍らで、ヴァルファ訓練生とアンバコート訓練生が心配そうにこちらを眺めている。
そういった面々の中で兵学校飛行科を半ばの成績で出たばかりの若輩な俺は非常に浮いた存在だった。教導部隊というエリートの中に紛れ込んだ俺ははっきり言って異物だ。
教導官であるゼクスさんが居なければ、のん気にしていられる場所じゃないということを。それこそ、ゼクスさんの庇護がなければ直ぐにでも追い出されたのは確実だと思っていた。
実戦経験も豊富な彼らの中にあって、兵学校の飛行科を、それも中くらいの成績で出たばかりの新兵の扱いは目に見えて酷いモノだと、覚悟していた。
教導官や訓練生は各地で実戦を経験している所為か、俺が落ち零れたり下手を打つと将来的にチームを組むかもしれない彼ら自身の生死に関わってくるので、逆に色々と親身になって教えてくれた。
そして、ありがたいことにゼクスさんが最終的にケツ持ちをやってくれるのが大きい。
散々、容姿や体格のことで馬鹿にされた兵学校の経験からそれなりに気を張って覚悟を決めていたけど、肩透かしを食らったみたいだった。
お陰様で今のところ訓練生同士の足の引っ張り合いは無い。むしろ弟分として可愛がってくれている。と、思う。
逆に言えば、俺が彼らの足を引っ張っているのだ。だから、教導官たちの手を煩わせないように、訓練生たちに付いて行けるように頑張らなければいけないと別な意味で重圧を感じている。
「……よし、ひと通り説明してみたが、操作の仕方が大分こなれているな。一旦終了だ」
「はい。操作盤の仮起動を停止させます」
盤面に映し出された小さな魔法陣を指でフリックさせて既定の場所へ移動してタップする。プツン。と、操作盤を停止させる。
「学校の模擬訓練と感覚が違うから大概は初見で操作に力を入れすぎて戸惑ったり手こずったりするんだが、アルは……問題なさそうだな」
ゼクスさんがそう言うのも頷けた。
我が妄想でした。
読んで頂き有り難うございます。
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