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月が見た夢物語

 昔々あるところに、月の神様に愛された一人の娘がいました。神の愛娘と呼ばれた彼女の祈りは、他の誰よりも月の神様に届き、その国に奇跡と繁栄をもたらしました。


 それを喜んだ国王は、自身と同格の地位となる『月巫女(つきみこ)』の称号を彼女に与え、それはそれは大切にしたそうな。


 云百年、云千年の時の中で輪廻転生を繰り返し、その度、彼女は月巫女として国を支える役割を担っていました。


 そんな彼女に、いつの頃からか、ある一つの変化が訪れました。それは、生まれ変わる度、ある一人の男性を愛するようになったこと。


 その男は、あるときはしがない神官。あるときは商人。またあるときは、農民として生を受けました。


 そんな彼と、どこかで必ず出会い、惹かれ合うようになったのです。そして、その身分差と彼女の立場の関係上、二人は結ばれることなく、繰り返し引き裂かれました。


 時に男は神に背く者として国外へ追放され、時に反逆者として捕えられ処刑されることも決して珍しくはありませんでした。何度巡り会っても、想いを通わせても、引き裂かれる運命に、月巫女の涙が枯れることはありませんでした。


 それを憂いた月の神様は、二人が幸せになれるようにと、自身の魂を分けた子を人の世に送り出しました。


 そんな中、男が今度生まれ変わったのは貴族。今までで一番身分差は少なかったものの、運命の悪戯か、彼の両親は幼い男の前で殺され、命を落としました。そうして幼くして両親を亡くした男は、仇を討つため貴族の身分など諸々を放棄して、騎士になることを選びました。


 一方、月巫女はただの医者の娘として生まれたものの、その力を利用しようとした人間の手によって母を失い、父と引き離され、世俗から隔離され育てられました。そうした中で、彼女はただただ無機質で、祈りを捧げるだけの人形のようになりました。


 そうして月日は流れ、月巫女と彼の現状を憂いた騎士たちの采配により、二人は再び巡り会いました。出逢いをきっかけに、互いに欠けていた感情を補い、傷を癒やした二人は、いつしか惹かれ合うように……。


 そんな二人には、傍でずっと見守っていた友がいました。


 一人は、金色の髪を持った月神の魂を分け与えられた月の子。もう一人は、太陽の神様に愛された綺麗な黒髪を持つ娘。


 二人は彼らと共に、様々な困難と運命に抗いました。そうして千年以上、幾度となく繰り返し引き裂かれ続けてきた二人は、ようやく結ばれ幸せになりましたとさ。めでたしめでたし。


 これはそんな二人のハッピーエンドからずっと後の話。身分の格差がほとんどなくなった現代へ輪廻転生した彼らが再び巡り逢い、新たな関係と絆、想いを紡ぐ物語です。

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