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4 卿

扉を閉めようとしても、また開く。中から出てくる黒いもの。


「いや!開けないで!」


しかし開こうとしているのは、自分の手だ。


「どうしてなの?やめて!お願い!」

「大丈夫ですか?凛先生?」

診察室で目を覚ます。看護師が心配そうに見ている。


「・・平気よ。次、呼んで」


「は・・はい」


入ってきた少年。


「・・・」


「・・・」


お互い無言で見つめ合う。


「どうしたの?」


問いかける凛。


「・・・」


少年は去った。


「・・次の人呼んで?」


「は・・はい」


看護師は、気になりながらも、並んでいる大勢の患者を呼ぶ。

その後は、いつも通り他愛のない。悩みを受けながら、時が経っていく。


「篠原さん、休憩どうぞ」

「はい」


ーーー


「ねえ、どうして、凛先生、ぼーっとしてたんだろ?それに、そのまま帰しちゃったんだろ?」

看護師、篠原夕 と仲間達が、休憩中。


「夕、知らないの?」


「何?」


「この子の事」

スマホで写メを見せる。


「あ、これって、さっきの少年じゃない、駄目でしょう?患者を無断で写真撮っちゃ」


「まあいいじゃん、それより、可愛いいよなあ!この子!夕、変な事しなかったよね?」


「どういう事?」


「超イケメンでしょ!これあたしのもんだから!手出すんじゃないよ!」

スマホの、写メにキスしている。


「ちょっと、何やってるの?やめてよ恥ずかしい」


「へへ、今度夜に誘ってみようかな?」


「変な事考えないで!」


「別にいいじゃん、だって、ほら?」

スマホの画像をスライドさせて、夕に見せる。


「えっ!まさか・・あの子が」


「ね?だから、なにしたって同じことなんだよ!」


「ばかっ!患者のカルテまで勝手に撮って!」

夕は怒って、スマホを取り上げて、画像を消去しようとする。


「なにすんだ!夕!やめろよ!」

争いを見た周りが騒めいている。無理やり画像を消去すると、慌てて悲しげに出て行った。


「ひでー!覚えてろよ!夕!」


(そんな、あんなに若いのにどうして・・)

廊下を速足で歩きながら、夕は涙を拭っていた。

ーーその足で、


蔵戸 卿 19歳 の部屋へ。


個室。特別待遇の、重病人の入院する部屋。お金持ちなのかな?夕は疑問に思いながらも入室する。


「こんにちは?」


ベットの上で、10代後半ほどの少年が、上体を起こして、ゲームをやっている。


「君が、卿君?」


「・・・」


殺風景な部屋。花一つない。夕が入室しても、ゲームに夢中で目すら合わせない。


「丁度よかった、さっきね、お花貰ってきたから、飾ってもいいかな?」


「・・・」


夕は花瓶をゆっくりと置く


「あ、卿君、確かゲームとか今禁止されてなかった?駄目でしょ?」

「・・・」

何の反応もないが、


「ね、身体に悪いでしょ?休まなくちゃ?」

ゲーム画面から目をそらさずに


「・・なんで?」

と卿は初めて口をきく。


「え、だって、当然でしょ?入院してるんだから」

「・・・」


意に介さない様子。


「さあ、もう休んだら?治療すれば、直ぐに、元気になるんだから?」


「ウケる・・」


「えっ?」


「俺が治る?本気で言ってる?」


「あ・・当たり前でしょう、治るよ!」

「・・・」


「とにかく、今回はゲームは許してあげるけど、これからはダメだからね」

「・・・」


そのまま、身の回りの作業をする。


「あ、卿くん、昨日、凛先生に会ったでしょ、美人でしょ?好きになっちゃった?」


「あのさ・・」


「何?お腹空いた?」


「・・あんた、誰?」


「あ、あたし?篠原 夕だよ」


「いや聞いてない。ここには誰も入れない様に言ってた」


「そ・・そうなの?まあ、気にしないで?そうだ、何か作ってあげるね」

料理をし始める夕。


「何か食べたいものとかある?」

「・・・」


「じゃあ、家庭の味フルコース。作ってあげるね!」


無視してゲームを続ける、卿。


「いい部屋だよね、ここ。あたしの寮より綺麗だよ」

夕が突然優しくするこの患者。卿。


脳腫瘍。

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