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 雨が降る中、勇気を振り絞って奈美夜は真実を彼に打ち明けた。


「私、本当は女の子じゃなく、男の子なんです……!」


「なっ……!?」


 突然のその言葉に持っていた傘を地面に落として呆然と立ち尽くした。


「じょ、冗談だろ……? だって君は見た目はどうみても女の子じゃないか? さては、俺のことを驚かせようとしているな?」


「ッ……聖様。ごめんなさい……本当のことをずっと黙ってて、でも、なかなか言えなくて……でも、ずっと黙ってるのはいけないと思って……」


「俺のことずっと騙してたのか? 俺はてっきり君が女の子だと思っていた。何故ずっと騙してた? 俺のこと騙して楽しかったか?」


「ちっ、違う……! 私は聖様を騙すつもりは……!」


 瞳を涙で濡らし、奈美夜は今にも泣きそうな声で彼に手を差しのべた。しかし、彼は差し出された手を叩いて振り払った。


「騙してたなんてあんまりだ! 俺はキミとの結婚まで考えていたんだぞ!? それをこんな冗談……!」


「せっ、聖様……! 私は貴方を――!」


「うるさい、聞きたくない! もう顔も見たくない! 俺の前から消えてくれ!」


「ッ…――!」


 彼の冷たいトゲのある言葉に奈美夜の心は酷く傷ついた。持っていた傘を地面に落とすと、顔をグシャグシャに涙で濡らしながら震えた声で泣いて謝った。


「ごめんなさい……。もう、消えるね。貴方のことを傷つけたのは当然だもの。こんな姿で出逢わなかった方が良かったかもしれないわね。女の子じゃなく、男の子に生まれてきてごめんなさい…――!」


 奈美夜はそう言って、彼の目の前から走り去って行った。冷たい雨が全身を濡らすと聖矢は衝撃的な事実に無言で立ち尽くした。今追いかければ間に合うのに、彼自身が酷く混乱するとそれすら躊躇った。泣きながら走ると、途中で躓いて地面に倒れた。着ている制服を泥だらけにしながら、冷たい雨の中泣きじゃくった。失恋した少女のように一人で泣いていると後ろで名前を呼ばれた。振り向くとそこには傘をさした廿浦がいた。


「――およしなさいと言ったはずです。あんな男に涙を流す必要はありません。自分は幼い頃から貴方に使えていた身です。貴方が女でも男でも構いません。お慕いしております、奈美夜様」


「ッ…――! ひっく、つづうらぁっ!!」


 彼の優しさに触れると奈美夜は泣きながら名前を呼んだ。そして、そのまま抱きついて泣きじゃくった。廿浦は何も言わずに頭を撫でたのだった。


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