プロローグ 『俺がこの手を離したら』
大犬太一です、よろしくお願いします。
連載小説を初めて投稿させていただきます。
タイトルにもある『デメリット』に至るまでは十話ほどかかります。
「――離れないで!」
男なら誰もが一度は言われてみたいセリフ。そんなセリフが、薄暗い洞窟一帯に響き渡る。
「離れたら……死ぬから!」
この状況がうまく飲み込めない。しかし、頭は至って冷静だ。
ここは冷静に目を閉じて、こうなった原因を振り返ろう。
俺の名前は成瀬 有。
家が金持ちだったり、父親が死神だったり、探偵をしていて薬で小さくなったり、じっちゃんが名探偵で孫の自分も名探偵だったりなんてことはない。いたって普通の高校生だ。最近は学校には行っていないけど。
さっきまで家でゲームをしていたはずなんだけど、その後がどうしても思い出せない。
再び目を開いて自分の手の先を見る。視界に映る情報と手の平から伝わってくる熱で、自分は手を繋いでいるのだと理解した。
繋いだ手の先には触れるだけで折れてしまいそうな華奢な腕。しかし、その腕からはどこか艶めいた雰囲気を放たれている。
今まで経験した事の無いような柔らかな感触を肌に感じ、心臓はドクン、ドクン、と張り裂けんばかりに鼓動する。
その手から繋がる先を辿り見ると、碧眼で透き通るような白い肌の少女が視界に入る。身長百五十センチほどの小柄な少女は、腰まで伸ばしたピンク色の髪で、ボロボロになった服を身に纏っていた。
いや、もはや服と呼んでいいのかはわからない。上半身は首の周りに布があるだけで、胸にある二つの大きな膨らみはほとんど露わになっている。下半身は秘部を守る布が一枚、心もとなく主張をしていた。どの布も彼女の体液にまみれてぐしゃぐしゃだ。
少女の瞳はうっすらと涙を浮かべ、こちらを見ずに瞳をあちこちへ泳がせながら小動物のように体を震わせていた。
まったく、震えたいのは俺の方だ。今までだって女の子と話すことなんてほとんどなかったし、こうして手を繋ぐのだって初めてだ。
なんて事を思いながらも、世間では美少女と呼ばれるであろう女の子に触れている事実に、内心ニヤついていた。
ーー何秒間かの沈黙の後、蚊の鳴くような小さな声がした。
「そんなこと言われても……困ります。助けていただいたことには感謝しますが、ずっとこうしているわけには……」
冷たい風と共に聴こえてきた言葉に頭が冷え、だんだんと俺の記憶が蘇る。
そうだ、たしかあの時……火事で俺は死んで、気がついたらここにいたんだっけ。
そこでテンプレ通りのチートスキルを貰って、これから色んな女の子達と遊んだり、ハーレムライフを満喫しようと計画して……。
考え込んでいるうちに、自分から徐々に離れそうになる左手に気がついて、慌てて俺はまた叫んだ。
「俺から離れないでくれ!」
男なら、誰もが一度は言われてみたいセリフ。俺はそのセリフを繰り返し、チートスキルの代償で得た「女の子と離れたら死ぬ」という誓約を呪った。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
名前:成瀬 有
種族:ヒューマン
能力:???
EXスキル:???
力:?
体力:?
早さ:?
魔力:?
状態異常:女の子と離れたら死ぬ
ここまでお読みいただきありがとうございます。
文章やストーリーで気になる点があれば、教えて貰えたら助かります。
 




