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第9話 勇気を持って

先日、偉大なアスリートが引退記者会見をされました。

作者(私)1番に大好きな選手でした。心に残りました。今でも大ファンです。

この作品ではフィクションのキャラとして登場していただいております。

フィクションですのでご理解のほどよろしくお願いいたします。


尚、最後まで読んでいただくと、全く違う内容に変化いたしますので、

最後までご一読いただきますよう、お願いいたします。                  潮ノ海月

 日焼けした褐色の肌。


 真冬でもシャツ1枚で歩く強者。


 常にシャツを肩までめくり、自分の腕の筋肉を盛り上げて喜んでいる筋肉フェチ。


 太い眉に、キラキラと光る瞳。少し太い鼻が印象的。


 週に1度ホワイトニングをしている歯は、輝くほど白い。 


 熱血を語らせれば桜ヶ丘高校で1番熱い男。


 白沢圭吾シラサワケイゴ29歳、独身が教壇の上に立っている。


 日光が窓から差し込み、褐色の肌と白い歯を輝かせる。



「今日は大事なことを学生諸君に伝える。そのため今日の社会の授業は取りやめとする!」



 教壇を両手で掴み、体を少し前のめりにさせて、圭吾先生が語り始めた。


 生徒全員が圭吾先生の威圧感に圧倒され、教室内は静かに次の言葉を待っている。



「先生が尊敬する堤トチロー選手が現役生活28年の現役生活と別れを告げ、引退されることになった!」



 堤トチロー選手の引退はニュースでも流れていたので春陽も知っている。


 春陽も好きな選手だっただけに印象に深い。



「日本を出て、海外に渡り、通算10年200本安打という大成績を打ち立てた、尊敬できるアスリートだった!」



 確かにすごい記録だと思う。10年の積み重ねは誰もがマネできるものではない。大偉業だ。



「先生は引退試合、試合後の引退インタビューを家で録画して、朝まで何度も見て、朝まで泣いた。次の日、ショックで学校を休んだ!」



 先生がトチロー選手の引退がショックで学校を休んだのはいいが、生徒に言ってはダメだろう。



「トチロー選手は記者会見の時、日々の努力に比べると記録など小さく見えるという言葉を述べられている!」



 その引退記者会見ならテレビで春陽も見たが、話している内容まではよく覚えていない。


 トチロー選手クラスになると物事も達観的に色々な視点から見えるようになるんだな。


 すごい勉強になる。



「自分に誇れることは?と聞かれた時、トチロー選手は、怪我で野球ができなかった時の自分の頑張り、耐えた精神力が、今は自分の誇れる部分だと言っていた!」



 野球ができない怪我をしている間も筋トレ、メンタル調整、気力の維持をするのは、凄く難しいことだろう。




バン!




 教壇をいきなり大きな手で叩く。


 生徒全員が圭吾先生の突飛な行動に驚く。



「トチロー選手は日々の努力の積み重ねが、今の自分を支えていると言っている。日々の努力、それこそが重要なんだ!」



 大人はすぐに努力というが、簡単に努力が継続できるなら、とっくに努力してるっつーの。


 その努力を成し遂げたトチロー選手は偉大で恰好いい。尊敬に値する。



「これからの子供達にメッセージをと言われた時、トチロー選手は照れて、悩んだ末に言った言葉が素晴らしい。皆も学んでほしい!」



 何と言っていたか、全く覚えていない。優紀も首を傾げている。


 圭吾先生のただの熱血なら聞きたくないが、トチロー選手の言葉なら聞いてみたい。



「努力は難しい。好きなモノでなければ、継続する努力は難しい。まずは好きなモノを早く見つけることだという。好きなモノだから努力もできると仰った!」



 香織の顔が引きつっている。クラスの女子全員が俯いている。


 女子は熱血が苦手だもんな。



「好きなモノであれば、高い壁にぶつかっても、簡単には止めない。好きだから諦めない。そうして壁を乗り越えて進んでいけば、それが後悔の無い人生に繋がると仰った!」



 信二が目をキラキラさせて、圭吾先生を見つめ始めた。



「先生は皆に後悔の無い人生を送ってもらいたい!  まずは好きなモノに熱中しろ! そうすれば高い壁も乗り越えられる! 先生の言葉がわかるな!」



 信二がいきなり立ち上がる。



「圭吾先生、俺のハートにジンジンと伝わってきたぜ! 俺も好きなことに熱中する。夢中に一筋になる!」



 信二、お前は生粋のお尻フェチだろう。お尻に熱血してどうするんだ。


 圭吾先生は教壇から降りて、信二の元へ向かい、信二と固い握手を交わしている。


 信二の目に少し涙が溜まっている。



「俺もトチロー選手の記者会見を見た。今、俺も目覚めたぜ。俺も好きなことに熱中するぜ」



 優紀が爽やかに席から立ち上がった。


 優紀、お前は生粋の脚フェチだよな。熱中する向きが違うと思う。香織に怒られるぞ。


 圭吾先生は優紀の元へ向かい、優紀の頭をゴシゴシと撫でる。



「拙僧もトチロー選手のことは尊敬する偉人の1人。トチロー選手の言葉に仏の道を見る」



 和尚の大きな体が立ち上がる。クリクリした漆黒の瞳がキラリと輝いている。


 圭吾先生は和尚の元へ行き、和尚の肩を抱いた。


 圭吾先生は知らないだろうが、和尚は生粋の胸フェチで、DVD1000本を部屋に持っている強者。


 これ以上、胸フェチ愛が高まったらどうなるか。


 圭吾先生がクルリと体の向きを変え、春陽と目が合う。


 ヤダ! 熱血に染まりたくない!



「職員室で綾香先生が春陽が最近、顔を見せないと言っていた。くよくよと悩むこともある。そんな時は熱中できるものに集中するんだ! 後悔しないように熱中しろ!」



 春陽が熱中できること、それは年上フェチしかない。


 それも今は綾香先生を一途に想うこと。それが春陽の本心だ。


 やはり綾香先生のことが好きだ。


 これからも先生に夢中でいたい。


 綾香先生を悲しませたくない。


 あの天女のような微笑み、満開の花が咲いたような笑みを見たい。


 春陽の心の中でパキーンとガラスが割れたような音がしたような気がした。


 綾香先生に直接会いに行く勇気は、まだ春陽にはない。


 放課後に京香先生が春陽を呼んでくれている。


 京香先生は大人な女性だ。綾香先生のことを相談してみよう。


 春陽の心の中に少しだけ勇気が湧いた。



「圭吾先生! ありがとうございます! 少し気分が楽になりました!」



 圭吾先生は春陽に近寄り、両手を体に回してギュッとハグされる。


 汗臭い! 体臭臭い! 酒臭い! ギャーー!



「俺は今、猛烈に熱血しているーー!」



 耳元で叫ぶのは止めてーー!


 香織が気の毒そうな目で春陽を見ている。


 千春の目がなぜか、キラキラと輝いている。


 信二、優紀、和尚の3人も春陽から顔を反らせている。


 春陽から体を離した圭吾先生が教壇に立って、生徒達を見回す。



「理解してくれる生徒達が現れたことに、俺は感動している。だから、もう何もいうことはない。これからの時間は自習とする。以上」



 圭吾先生は大きく手を振って、白い歯を見せ、にっこりと笑って、教室を去っていった。


 教室内は自習となり、仲の良いグループに分かれて、生徒達は雑談を始めた。


 信二、優紀、和尚の3人も春陽の元へと集まってくる。



「俺、ちょっと教室から出るよ」


「どこへ行くんだよ?」


「俺も一緒に行こうか?」


「お二人共、春陽殿を1人にしてあげなさい。春陽殿も1人になりたい時があるであろう」



 和尚だけが春陽がどこへ行こうとしているか、正確に把握したようだ。


 3人を残して春陽はそっとクラスの生徒達にバレないように教室を抜け出した。


 そして廊下を急ぎ足で歩く。


 目の前に保健室のドアがある。


 無言で保健室のドアを開けると京香先生が机の前に座って、振り返る。


 保健室の部屋に入ってくる春陽を、椅子を回転させて、京香先生が迎え入れる。



「放課後に来ると思っていたんだけど、待ちきれなかったようね。丁度いいわ、椅子に座りなさい」



 何も言わず、無言で春陽は京香先生の向かいの椅子に座る。そして静かに深々と頭を下げた。



「この間、京香先生がお風呂に入っている時、先生の裸を見てしまいました。本当にゴメンなさい」


「ウフフ、それはいいの! 私がワザと春陽君にだけ裸を見せて悪戯しただけだから、私は全く気にしてないわ」


「……」



 京香先生はウィンクしていたから悪戯かなと思っていたけど、大胆過ぎる。


 返答に困る。



「それよりも私に相談したいことがあるんでしょ。素直に話す気になったんだから、話してしまいなさい。内緒にしてあげるから」


「……あの…綾香先生のことです」


「そうね。それしかないわよね。春陽君は綾香のことが大好きなんだから……ウフフ」


「~~~~~!」



 表情を常に無表情にしているのに、なぜ京香先生に知られてるんだ?



「覚えておきなさい。人は表情と言葉だけで話しているんじゃないの。身体全身で心を伝えているの。だから体の動きを観察していればわかるわ」



 ボディーランゲージという訳か。それを観察することが京香先生にはできる。ウカツだった。



「いつから綾香のことが好きなの? 春陽君が年上好きだから綾香を好きになったの?」



 春陽は抵抗するのを諦めた。



「年上好きだけなら、俺は京香先生を好きになっています」


「そうね。綾香と私なら、大抵の男性は私を選ぶわ。でも春陽君は綾香を選んだ?どうして?」


「好きになったのは一瞬でした。綾香先生と出会った瞬間に一目惚れです。今では綾香先生だけに一途です」



 年上なら誰でもいいわけじゃない!



「綾香のどこが好きなの?」


「言葉では全てを言い表せません。全てが大好きです。スタイルも、顔も、声も、仕草も、性格も、心も、全て大好きです。心から愛しいです!」



 全てを京香先生に隠しても無駄と思ったことで、春陽の心の戸が外れた。


 想いの全てが一斉に溢れ出す。


 京香先生は少し頬をピンク色に染めて困った顔をする。



「綾香と知り合って、まだ2カ月も経っていないわよ。そんな短い間で綾香の何を知ってるの?」


「綾香先生のことは、俺はほとんど知りません。何も知りません。でも綾香先生がどんな女性であっても、俺は綾香先生を諦めません!」



 気が付けば春陽は京香先生に必死で訴えていた。



「綾香のことだったら、どんなことでも春陽君は受け入れる気持ちがあるということでいいの?」


「はい、そうです。どんな過去でも、欠点でも受け入れます。大好きです。愛してます」


「先生と生徒の恋愛は禁止なの。春陽君はどうする?」



 この質問がくることはわかっていた。既に春陽は答えを出していた。



「俺が桜ヶ丘高校を辞めます! それで綾香先生と付き合えるなら、何の未練もありません!」


「個人的な意見を言えば、恋愛って自由なものだと思うの。だから立場や環境に縛られるモノではないと私自身は思っているわ」


「……」


「だから個人的には春陽君を応援してあげたい。内緒でね。でも立場上は学校ではちょっとね」



 京香先生が個人的にでも応援してくれるのは嬉しい。学校では京香先生は協力できない立場なのは理解している。



「私は綾香みたいに頑なじゃないわよ。今からでも私に乗り換えない?春陽君って好みなのよね」


「綾香先生でないとダメなんです。綾香先生のことしか見えません」


「私が男性に振られるなんて初めて。これは相当に本気ね。春陽君の気持ちはわかったわ」



 京香先生が美しい脚を組み替えて、甘い息を吐く。



「話は変わるけど、綾香の裸を見て、春陽君はどう思った? 綾香の裸、きれいでしょう」


「……きれいでした。まるで天女様のようでした」


「綾香に会ったらどうするの?」


「綾香先生には素直に裸を見たことを謝りたいです」


「春陽君の本心のことは言うの?」


「言いません。綾香先生を悩ませたくないです。無表情に戻ります。感情は出しません」



 京香先生は少し困った顔をして椅子から立ち上がる。そして保健室のベッドのカーテンを持って、カーテンを開く。


 そこにはベッドの布団を手でギュッと握って、顔を真っ赤に染めている綾香先生の姿があった。

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