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第31話 愛は止まらない

 和尚がジョディ先生と結ばれてから2週間が経った。


 その間に和尚とジョディ先生は春陽の部屋で、激しい愛を育んでいく。


 その声の大きさと、アパート全体の揺れに激怒した絵理沙が、引っ越していった。


 そして空き部屋となった絵理沙の部屋は今はジョディ先生名義の部屋となっている。


 ジョディ先生は和尚のご両親の了解を得て、和尚が高校を卒業したと同時に入籍することとなった。


 その後に、和尚はジョディ先生のご両親に会いに行くため、アメリカ、ニューヨークへ行くこととなっている。


 この2週間ほど苦悩していた和尚も、「これも運命、輪廻の内」と悟りを開き、落ち着きを取り戻した。


 ジョディ先生が和尚に朝からステーキを食べさせることもあり、和尚は元のぽっちゃり体型になってきている。


 和尚のご両親の必死の説得と、日本人としての女性の在り方を、ジョディ先生に教えたおかげで、ジョディ先生は、今は大人しい先生に変わりつつある。



「オオ―! 大和撫子! ビューティフル!」



 和尚の家では、和尚の母親の着物を譲ってもらい、着物で生活しているという。


 ジョディ先生は誰が見ても美女だ。西洋の美しさと凛々しさと愛らしさを持っている。


 そのジョディ先生が和服を着た色気は半端ではない妖艶さを醸し出す。


 和尚は一発でノックアウト状態になり、今ではジョディ先生にメロメロ状態である。


 最近、和尚は日の出と共に起き、お堂内で、お経を読み上げる毎日を送っているが、その後ろにはジョディ先生も付き添っているという。


 しかし、ジョディ先生の家に1週間に1度から2度はジョディ先生は戻ってくる。


 もちろん目的は和尚との密会だ。


 その度にアパートは揺れ、朝まで激しい声が聞こえてくる。近所迷惑も甚だしい。





◆◆◆





 今は英語の授業、ジョディ先生の金髪のカールした長髪に、白のワンピース姿がとても似合っている。


 教室に入ってくる日差しを浴びて金髪がキラキラと輝き、窓から入ってくる風がしなやかに金髪を揺らす。


 しかし、授業を受けている生徒の視線は冷たく、特に男子生徒は殺気を含んだ視線を和尚に向けている。


 ジョディ先生の授業は教壇ではしない。いつも生徒の間を歩きながら、生徒達に笑顔を振りまいて授業をする。


 そのせいで男子生徒達から圧倒的な支持を受けている。


 そのジョディ先生が1人の男子の隣に立つと、いつも立ち止まったまま動かなくなるのだ。


 そして教科書を持っている左手とは別に、右手で男子の剃っている頭を愛おしそうに撫で、ウットリと男子生徒を見つめている。


 その姿が他の男子生徒の嫉妬心を煽っていることをジョディ先生自身は自覚していない。



「ジョディ先生、拙僧に構わず、他の生徒達も見て回ってくだされ。拙僧の頭を撫でるのも止めてくだされ」


「ノー! 浩平の頭、ベリーキュート! 私、ツルツル大好きね! マイダーリン♡」



 和尚のことをジョディ先生は学校の中でも平気でマイダーリン♡と言う。


 その言葉を聞く度に、男子生徒達は唇を噛み千切り、唇から血を流して、体を震わせている。


 和尚もそのことに気づいている。だから何とかジョディ先生が他の生徒達に関心を向けようとするのだが、ジョディ先生のマイペースには敵わない。


 ジョディ先生は教科書と一緒に常に持ち歩いている、和尚専用タオルで、汗を噴き出させている和尚の頭を丁寧に拭いていく。


 その美しく自愛に満ちた眼差しは、和尚を見てウットリしていて、とても艶やかで美しい。


 白いワンピースを着ていることもあって、ビーナス像をイメージさせる。


 やれやれと思いながら春陽がジョディ先生に声をかける。



「ジョディ先生、和尚が困っているじゃないか。イチャイチャしたかったら和尚に迷惑をかけるのは禁止」


「春陽のイジワルー!」


「生徒と先生は学校ではイチャイチャしてはいけないの。恋愛も禁止。綾香先生と京香先生に怒ってもらうよ」


「綾香なんてコワクありませーん!京香はコワーイ!京香にだけは言わないでくださーい!」


「それじゃあ、真面目に先生する。授業を進める」


「学校の春陽はコワイでーす!」



 ジョディ先生、あまり余計なことは言わないでくれ。ジョディ先生のアパートの部屋が、春陽の部屋の隣とバレるじゃないか。


 そんな事態になったら春陽まで騒動に巻き込まれる。


 綾香まで被害が及ぶかもしれない。それは何としても防がないといけない。


 ジョディ先生は和尚の頭をタオルで拭くのを止めて、授業を再開した。


 和尚の体から力が抜け、春陽に向かって頭を下げている。


 休憩時間のチャイムが鳴る。ジョディ先生が嬉しそうに和尚に抱き着いてくる。


 優紀と信二が飽きれ顔で2人を見ている。



「和尚のどこにそんな魅力があるんだ? アメリカ人から見ると和尚はイケメンなのか?」



 優紀はどこか自信を失っているようだ。



「なんで和尚ばっかり良い目を見るんだよ。俺なんて誰も女子が寄ってこないって言うのに腹立つな!」



 信二は椅子に座って、机に肘をつけて、ふてくされている。


 優紀は不思議そうに2人を見る。



「どこで、こんなに親密になったんだ?」


「拙僧の家にジョディ先生が修行に来られて、それから懐かれ申した。拙僧の部屋も見られ申した」



 優紀と信二が驚きの顔になる。



「あのエロだらけの部屋をジョディ先生は見たのか?」


「DVD1000枚だぞ! 隠しようねーぞ」


「ジョディ先生は楽しそうに鑑賞されておった」



 和尚は俯いて小さな声で呟く。



「日本はスゴーイ! アメリカには、あんな激しいDVDは少ないでーす! 日本は大量にありまーす! 日本は開かれた国でーす!」



 ジョディ先生は顔を真っ赤に染めて、DVDの評価を語る。



「ジョディ先生は拙僧の家で修行をしている。DVDはジョディ先生の修行の邪魔になる。そこで信二殿、拙僧のお宝を貰ってくれぬか。友情の証として」


「いいのか?あんなに大事にしていたコレクションだぞ。本当にもらうぞ。本当にいいんだな?」


「拙僧は最早、無用となった。信二殿の譲ることでDVDも喜ぶであろう」



 何を恰好つけたことを言ってるんだ。週に2回はジョディ先生とアパートの部屋で激しく抱き合ってるくせに。


 ジョディ先生がもっとエッチになったら困るから、DVDを見せたくないだけじゃないか。


 上手く信二に押し付けたな。


 優紀が羨ましそうに聞いている。



「和尚、俺も気に入ったのがあれば数枚、貰ってもいいか?数枚でいい。俺も楽しみがほしい」


「なんの楽しみがほしいですって」



 後ろから甲高い声が聞こえる。


 振り返ると香織が優紀のすぐ後ろに立っていた。



「和尚、変なDVDを優紀に渡そうとしないでよ。優紀がエッチになっちゃうじゃない」


「拙僧は信二殿に譲ると言っておる。優紀殿の趣向を拙僧も存じぬ」



 春陽は何も考えずに呟いてしまった。



「そういえば優紀のDVDの趣味って聞いたことないよな」



 信二が追い打ちをかける。



「優紀のDVDの趣向ってどんなの?俺はお姉さんモノが好きだけど?優紀はどんなの?」



 優紀の顔色が段々と青くなる。口だけが動いて「変なこと言うな」と言っている。


 香織は胸の下で腕組をして、優紀を後ろから睨んでいる。



「私も知りたいわ。優紀がいつも、どんなDVDを見てエッチな気分になってるのか、私も知りたい」



 能天気なジョディ先生が口を挟む。



「香織! それは決まっていまーす! 優紀は香織のことを愛していまーす! だから幼馴染モノのDVDに決まっていまーす!」


「キャワッ」



 睨んでいた香織の顔がトローンとなり、頬を真っ赤にして体をモジモジとさせている。



「優紀! 本当?」



 ここで違うと答えたら香織の怒りが爆発する。優紀の答えられることは1つしかない。


 優紀は諦めたように俯いて小さく呟く。



「幼馴染モノが好きです……」


「キャーー♡」



 香織は嬉しそうに頬をピンク色に染めて、クルリと身をひるがえして女子生徒達の集まりに戻っていった。


 優紀はジョディ先生にジト目を送る。



「ジョディ先生! 恨みますよ! あんなこと言ったら香織が本気にするじゃないですか」


「ノー! 優紀が香織を大事にしているのはわかりまーす! 優紀にとって香織は特別! だから大事! 大事に育てているのでーす! 先生にはお見通しでーす!」



 信二が優紀を呆れたように見つめる。



「やっぱり優紀は香織のことは特別だったんだな。これで彼女がいないのは俺と春陽だけか。春陽、俺と仲良くしような」



 春陽の体からイヤな汗が噴き出す。


 綾香のことは信二に絶対に言えない。信二の暴走が怖い。


 ジョディ先生が和尚の膝の上に、いつの間にか座って、和尚の頭を撫でている。



「私は浩平に夢中で―す♡ それは誰も止められませーん♡」


「こら! ジョディ! 職員室に帰って来ないと思ったら、やっぱりここに居たのね! 生徒と先生の恋愛は禁止って言ってるでしょ!」



 教室に入ってきたのは、ツーピースのスーツに白衣を着た京香先生だった。



「ノー! 浩平と離れたくないでーす!」


「うるさい! 次の授業をする準備のために職員室へ戻るのよ! 手間をかけさせないで!」


「ノー! 京香はとてもコワイでーす!」


「怖くさせてるのはジョディでしょ! 場所を考えなさいって、いつも言ってるでしょ!」


「ノー! マイダーリン! ヘルプ・ミー!」



 和尚は必死に目をつむり、全身から汗を噴き出させていた。


 ジョディ先生は京香先生に腕を掴まれ、強引に職員室へ連れて行かれた。


 春陽がそっと和尚に呟く。



「たぶん、近いうちにジョディ先生の行動が、学校でも問題になる。そうすればジョディ先生は職を失なう可能性がある。和尚からもキツク言っておいたほうがいいぞ」


「そうでござるな。ジョディ先生は海外のお人。故に日本の常識がわかっていない。毎日のように教えているのでござるが、止めることができもうさん」


「ジョディ先生が、もし、先生を止めさせられたらどうするんだ?」



 ジョディ先生は教師の給料だけで生活しているはずだ。教師をクビになると色々とマズイだろう。



「その件については拙僧の両親が考えておる。まず拙僧の家でジョディ先生を預かり、一緒に暮らすことになろう」


「でも、和尚の家で、あんな激しい行為をしたら、両親にバレるぞ」


「だから、春陽殿の隣の部屋は借りたままにしておこうと思っておる」



 ちょっと、そこは考えてくれ。春陽は悲鳴をあげそうになる。


 これからも毎週、あの過激な日々が待っているのか。



「俺と綾香にとっても、かなり刺激が強いんだけど……」


「拙僧も最近、自分の体がおかしいと思う。ジョディ先生の裸体を見ると抑えられん。本当にすまぬ」



 確かにジョディ先生は美しいし、きれいだ。それにスタイルも抜群で、煽情的な胸とお尻をしている。


 和尚が気持ちを抑えられない理由もわかってしまう。


 綾香が教室のドアの所から焦った声で和尚に声をかける。



「浩平君、ジョディ先生が大変なの! 職員室で教頭先生と揉めてるの! 浩平君、早く止めに来て!」



 和尚は大柄な体を機敏に動かして、慌てて教室を出る。それと一緒に春陽も教室を出る。


 廊下に出た春陽は綾香に声をかける。



「どうしたんだ? 一体、職員室で何が起こったんだ?」


「教頭先生がジョディ先生が立ってる後ろを通りかかった時に、ジョディ先生にあまり生徒と仲良くしないように注意したの。それにジョディ先生がノーと言って、反論を始めちゃったのよ」



 ジョディ先生は自由に愛を表現する国の出身だ。日本の常識や文化にまだ慣れていない。それに日本の閉鎖的な常識をおかしいと思っている。


 教頭先生とぶつかるのは時間の問題だっただろう。


 春陽達が職員室へ入ると、ジョディ先生が涙を流して先生達に訴えていた。



「なぜ愛している人を愛していると表現してはダメなのですか? 愛に生徒も先生も関係ありませーん! 年齢も国籍も関係ありませーん! 私は1人の人間として浩平を心から愛していまーす! この愛は誰にも止められません! どうして他人が愛を止めようとするのですか? 愛を表現するのに場所を選ぶ必要があるのですか?」



 ジョディ先生の心からの言葉が職員室内にこだまする。


 それを聞いた春陽達は顔色を青ざめる。これは本当にマズイことになっている。


 綾香と和尚が顔を引きつらせている。春陽は内心、大変なことになったと慌てた。

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