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第2話 いつもの朝の保健室

 朝早く、桜ヶ丘高校に着いた春陽は、靴箱の場所で、友達である2人組に待ち伏せされた。


 春日浩平カスガコウヘイ――通称、和尚と窪塚信二クボヅカシンジの2人組である。


 2人は既に腕に擦り傷を作ってニコニコと笑っている。


 春陽はその傷を見て、今日も付き合わされるのかとため息を吐く。


 桜ヶ丘高校にはモデルもビックリなスタイルの持ち主、保険医の坂本京香サカモトキョウカ先生が居られる。


 スタイル以上にその艶やかさ、妖艶さは大人の女性の魅力と雰囲気を十二分に溢れさせている。


 桜ヶ丘高校の男子学生達の憧れの的だ。



「今日もよろしいですかな。春陽殿」


「ああ」



 既に春陽は諦めの境地に入っている。


 身長180cm、体重100kgを超える巨漢の浩平が背中を丸めて春陽の耳元に話しかけてくる。


 家がお寺の住職で、和尚は寺の跡継ぎとして、早朝から修行に励んでいる。


 既に自分のぽっちゃり体型に自覚があり、女性から言い寄られることはないと達観している。


 家に秘匿DVDを1000枚持っている強者。


 達観した物言いと物腰で、一部の男子生徒達から崇拝されている。


 和尚は熱烈な胸フェチだ。


 女性の胸の話をさせれば3時間でも語り続けられるほど、女性の胸をこよなく愛している。


 胸の大きさには拘らず、女性の胸を表情を変えずに、クリクリとした大きな黒い眼で観察している。



「今日も京香先生に会えると思うと楽しみだな!」



 朝から喜びで声を弾ませているのは信二だ。


 いつも大らかで、明るくて楽しい信二だが、女運がない。


 いつも気の良いムードメーカー的なポジになってしまう。


 顔は悪くないのだが、どこか凡人というか、どこにでもある顔と人によく言われている。


 信二はお尻フェチだ。


 逆ハート型のお尻が最高だと本人は熱く語る。


 女性のお尻であれば、どんなお尻でも愛でることができる生粋のお尻フェチだ。



「信二殿、焦るでない。気を落ち着けて、愛でるのがフェチの目よ」


「確かに和尚の言う通りだな。落ち着いて目に焼き付けないと勿体ない」


「これより美の権現様に会いに行くのだから、焦ってはならん」



 今、一番、2人の胸を焦がしているのが保険医の京香先生だ。


 学生達が多く行きかう廊下を春陽達3人は焦らないように歩いていく。


 既に保健室の前には擦り傷を作った男子達が並んでいる。



「次の人、入っていいわよ」



 保健室の中から、少し鼻にかかった甘くて、蕩けそうな声が聞こえる。


 3人で保健室の列に並んで、呼ばれるのを待つ。


 春陽の狙いは2人とは違う。


 春陽は年上フェチである。


 今までは年上の女性であれば、誰でも愛でることができた。


 しかし、今の春陽を虜にしているのは1人の天女様だ。


 それも年上で大人な女性。そして小柄で童顔。


 そして胸がEカップあり、お尻も型の良い逆ハート型。


 朝の早起きが弱い綾香先生は、毎日のように保健室のベッドで少し仮眠を取る。


 綾香先生と京香先生は大学時代からの親友だという。


 だから京香先生のいる保健室へ綾香先生が仮眠をとりにくる。


 京香先生はそんな綾香先生を面白がって、わざとベッドのカーテンを開けて、学生達に綾香先生の寝顔を見せている。


 その可愛い寝顔を見るために春陽は2人に付き合っているというわけだ。



「私は京香先生殿のほうが好みであるが、綾香先生のスタイルもまた良し」


「確かに和尚の言う通りかな。俺も京香先生のほうが断然、憧れるけど、綾香先生の逆ハート型のお尻も見逃せない」


「2人共やめろよ。俺の天女様を厭らしい目で見るな。2人は色気ムンムンの京香先生を見てろ」


「春陽殿は独占欲が強いであるな。少しぐらい見てもよかろう」



 和尚が右手でツルツルに剃った頭を撫で、クリクリした大きな目で春陽を見つめる。


 そんなことを話している間に春陽達が保健室へ入る順番が巡ってくる。



「は~い、次の人~! 入っていいわよ~!」



「「「お邪魔します!」」」



「やって来たわね。いつもの3人組。今日はどこを怪我してきたの?」



「「ここです!」」



 京香先生はいつものように女神の微笑みで迎えてくれる。


 形の良い眉、クッキリ二重まぶた、優しい瞳、長いまつ毛が濡れている。


 きれいな鼻筋、少しポッテリとした唇が濡れ、顎の色気黒子が妖艶さを増している。


 白衣から溢れんばかりの胸、クロスに組まれたストッキングを履いたきれいな美脚。



「いつもの腕ね。消毒液だけでいいわね?」



「「はい!」」



「私に会いたいのはわかったから、毎日、怪我をしてくるのは止めてほしいわ。お仕事増えちゃう~!」



 甘くて甘えたような鼻にかかった声で言われると体中の血液が逆流しそうだ。


 色っぽすぎる。


 ふ~っと色っぽい吐息を漏らして、和尚と信二の腕に消毒液をかけていく。


 そして、早く乾くように、ふ~、ふ~と息を吹き付けてくれるのだ。


 和尚と信二の顔がピンク色に染まり、昇天している。



「春陽君はいつもの通り、綾香を起こしてくれるかな?」



 京香先生が女神の微笑みを春陽に向ける。


 春陽にとって、女神は京香先生のことを指し、天女は綾香先生のことと決まっている。



「はい、わかりました!」



 カーテンが開かれていて、ベッドの布団を被って眠っている綾香先生が見える。


 少し低い鼻。可愛い唇。まぶたを閉じている顔も可愛い。


 少し口から涎が出ているのはご愛敬。


 ベッドの真横まで近づき、綾香先生の寝顔に見惚れる。


 春陽にとって、1日の中で1番に至福の一時だ。


 本当は起こしたくない! もっと見ていたい! あ~可愛い! たまりません!


 なるべく綾香先生を驚かせないように小さな声で起こすのがルールとなっている。



「綾香先生、朝ですよ。春陽が起こしにきましたよ。もう時間ですよ」


「ハフッ」


「朝ですよー! HRの時間になりますよー!」


「フニャ~フヘ?」



 猫のように手をグーにして目元をこすり、段々と綾香先生の目が開いてくる。



「今日も俺が起こしにきましたよー!」



 クリクリの大きな瞳をパチパチさせて、春陽の間近に可愛い綾香先生の童顔がある。



「あー! 春陽君だ~! おはようございます~!」


「はい春陽です。起きてください」


「いつも、ありがとうー!」



 綾香先生の天女のような無垢な笑顔が顔一杯に広がる。


 おおー! この笑顔が最高ーー! かわゆいーー!


 春陽は無表情で心の声を漏らすことは絶対にない。


 心の声を漏らしてしまうと、毎朝の起こし係がなくなってしまうから。


 どちらかというと常に澄ました顔で起こしている。


 京香先生が大きくため息をついて綾香先生を見る。



「いつまでも春陽君に甘えてないで、少しは自分で綾香も起きなさい」


「テヘヘ……ついつい毎日になっちゃって・・・・・・へへへ。ごめんね、春陽君」


「どうせ2人と一緒に毎日、保健室へ来るので、ついでです。担任の先生にHRを遅れられると困るから」



 綾香先生にだけは自分の想いを悟らせてはダメだ。


 天女の笑顔を見れなくなる。



「綾香先生、そんなに寝起きが悪いのに、よく学校に遅刻しませんよね」


「毎朝、スマホで京香に起こしてもらってるから……テヘヘ」


「毎朝6時からスマホで起こす私の身にもなってほしいわ!」



 京香先生が頬をプクッと膨らませて、頬をピンク色に染めている。


 なんとも愛らしく、色気のある攻撃だ。


 既に信二と和尚は悩殺されている。


 毎朝、綾香先生と京香先生のやり取りを見たくて、和尚と信二は春陽を連れてくる。



「京香、そんなに怒らないでー。今度、お酒を買ってあげるからー」


「生徒の前で言わないでーー!」


「そっかー! ちょっとマズイかもね。へへへ」



 ベッドから降りて来た綾香先生は薄緑色のニットシャツを着ている。花柄のスカートが愛らしい。


 豊満で形の良い胸がツンと上を向いている。


 すごく似合ってる! 最高です!


 春陽は無表情な顔で、目に焼き付けようと必死だが、綾香先生に悟られないように顔を背ける。


 もっと見ていたいーーー!


 信二と和尚も綾香先生の見事な胸とお尻にくぎ付けだ。


 綾香先生が目をパチパチさせて、春陽の隣から上目遣いで顔を覗かせる。



「私の顔、お化粧が剥げてない? 大丈夫?」


「そんなの男の俺にわかりません。京香先生に聞いてください」



 無茶苦茶、可愛いよ! 化粧なんていらない! 綾香先生から甘い香りがする! 最高!



「そうだよね。春陽君は男の子だもんね。近くで見ると春陽君って女の子みたいな顔で可愛いよ」



 毎日、それを言われるのが嫌で、目の下まで前髪で隠しているのに。


 京香先生が足を組みなおして、綾香先生を見る。


 和尚と信二は素早く京香先生の脚を見つめて、見惚れている。



「いい加減、綾香も職員室へ戻りなさい。春陽君達も用が終わったから、保健室から出てね。まだ怪我で待っている生徒達がいるから」



「「「はーい!」」」



「京香に怒られないうちに職員室へ戻るね。また教室で会おうね。バイバイ」



 綾香先生はフラフラした足取りで保健室を出ていった。


 さすがに職員室までの廊下をエスコートはできない。


 保健室を追い出された春陽達は廊下を歩く。



「やはり良いものを拝謁することができましたな」


「和尚の言う通りだ。毎日、春陽を連れて行って正解だよな」


「俺はそこまで保健室へ行きたいわけじゃないぞ」


「春陽殿、強がりは止めなされ。顔は無表情でも心が喜んでいるのが、この和尚には見えまする」



 信二が春陽の顔を見てニヤニヤと笑う。



「HRになったら、化粧直しをした綾香先生に会えるぞ。春陽も楽しみだろう」


「……」



 何も答えずに、廊下を歩く速度を上げる。



「そんなに急がなくても綾香先生は逃げはせん。春陽殿は表情には出さぬが、行動に出るな」


「うるさい! 早く歩け! HRの時間になるぞ!」


「まったく春陽は正直じゃないよな。もっと和尚みたいに堂々としたらどうだ。俺は和尚を見習っているぞ」



 和尚ほど、悟れるわけないだろう。


 HRのチャイムが鳴った。


 3人で2年1組の教室まで走って、自分のクラスの中へ入り、自分の席に座る。


 暫くすると化粧直しをした綾香先生が満面の笑顔で教室へ入ってきた。


 天女様のHRが始まる。

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