紅茶のお嬢様は異世界への移住希望のようです。
紅茶で異世界を渡り歩く。
そんなことを考えたことはあったでしょうか?
世の中には酒場で異世界を渡り歩いている強者がおりますが。
私は“紅茶”で渡り歩けないでしょうか? と思いまして。
各種紅茶を用意して待っているというのに、一向にお迎えが来ません。
これはどういうことでしょうか?
――チリンチリン。
「はい、お呼びでしょうかお嬢様」
「なぜこの部屋には紅茶がいっぱいあるのにお迎えが来ないのでしょう?」
「はっ?」
「紅茶で異世界を征服できる量と思って買い占めましたのに」
「それでこれだけの茶葉を買ったのですか?」
「そうです! これしか世界を救う道はないのですから!」
そうです!
この素晴らしい紅茶の味を楽しんだらきっと争わなくて、優雅に会議もできるというもの!
あ、いけない。
紅茶にはその種類に合ったお菓子もセットでいただくものでしたわ!
「紅茶に合うお菓子も必要ですわね」
「今から焼きますか? スコーンとかならばすぐに――」
「いえ、どうせなら日持ちがして大量に簡単に作れて紅茶に合うものがいいですわね」
「簡単に……ですか?」
「そうです! もしかしたら行った世界では焼けないかもしれない。冷やせないかもしれませんので!」
そうですわ!
この機会に紅茶に合うお菓子を製作するという名目で菓子職人を競わせるコンクールを開きましょう!
優勝者にはお店を出せるように手配と賞金を出しましょう!
これですわ!
「どうせなら、お菓子コンクールを開きましょう! 各界の紳士、淑女をお呼びして大々的にやりましょう! 全国の菓子職人に告知しなさい」
「承知いたしましたお嬢様」
「うふふふ。たのしみですわ!」
紅茶お嬢様はその時代のマリーアントワネットとして有名だった。
彼女とお嬢様が違う点は民衆の商売、特に紅茶業界とお菓子業界に多大なる貢献をした点です。
お嬢様は異世界に転生することを強く望まれていました。
世間一般の注目の目を逃れたいためと理由を言っていますが、本人の知らず知らずのうちに貢献している。それが天才といわれる所以なのかもしれません。
「早く異世界へ行きたいなぁ~」
「お嬢様ならきっと行けますよ」
「私は紅茶とお菓子で異世界を平和にしてみせますわ!」
そんなお嬢様の部屋の一角には秘かに異世界への異空間が開いていたのですが。
大量の紅茶缶に埋もれてしまって本人も使用人も気が付いていなかったのです。
ふふふ。これはボクと君たちだけの秘密だよ。
ほら、またお嬢様が何か始める様だよ。