帝王切開 次女と三女の場合 壱
さて二回目のお産です。
娘が三人いると言うと三回の出産経験があると思われがちですが、私の場合二回の出産で三人産まれてきました。めんどくさがりの私らしいですね。
最初のお産で長女が産まれてから一年経たないある日、二度目の妊娠が発覚しました。
その頃旦那様は仕事以外にも消防団や青年団で忙しく、土・日や夜にも度々家を空けていました。私の方は新嫁としての慣れない生活、初めての子育てでストレスが溜まりまくっていました。
そうなると言い合いや喧嘩も起こります。
うちの旦那様はキツイ物言いはしないのですが、一見優しそうに見えて自分の考えを最後の所では曲げない頑固なところがあるのです。
私は短気で喧嘩腰だったため、暖簾に腕押しをしてるような気分でした。
そんな時の妊娠。
家族経営の有限会社のため、自分たちで自由になるお金は十万円ほどでした。これでは子どもの服を買ったり生活必需品の購入でいっぱいいっぱいで、ストレス解消などに使うお金はありません。
その頃の妊婦検診には一回5000円かかったので、妊娠初期の危ない時期を過ぎると検診へ行くのも倹約したくなったのです。
一度、妊婦検診を飛ばして次に病院へ行った妊娠七か月の時のことです。
お医者さんがお腹に聴診器をあてながら、首をひねり始めました。そしてお腹を触って、ますます首をひねるのです。
「Aさん、エコー検査の用意をして。」
と、側にいた看護士さんに言った時には身が縮まる思いをしました。エコー検査は当時一般的ではなく、問題のある人だけが受けていました。
もしかして、急に赤ちゃんが大きくなったと思われたのかしら?と思ったので「あの~、すみませんっ! 先月の検診に来ませんでしたっ。」と慌てて謝ったのです。
けれどお医者さんは口を濁してごにょごにょ言うだけです。
これは赤ちゃんがとんでもない状態になっているのではないかとビビリました。
お腹にデロデロと冷たいゼリーを塗りたくられて、お医者さんが機械を動かすのを不安な思いで眺めます。
そこでお医者さんが言ったのは・・・。
「秋野さん、これはふたっつおる。」
・・・いったいどういう意味でしょう。
「えっ?」
「双子じゃな。それも二人とも逆子じゃ。」
そう言われた途端に頭の中が真っ白になりました。
帰りの迎えを頼むために家に電話をかけて、旦那様に双子や逆子の話をした途端にぽろぽろと涙が出てきました。
これは喧嘩ばかりしていた私たち夫婦への、神様の罰のように思えたのです。
私の精神状態が不安定だと見て取った旦那様は、帰りに寄り道をして病院の近くのお仲人さんの家に連れて行ってくれました。
「心臓はしっかり動いてたんでしょ。」
「心配しなくても大丈夫。逆子体操をしたら正常位になるよ。」
お仲人さんの家では一緒に住んでいるおじいさんやおばあさんも一緒になって、泣いている私を慰めてくれました。
そこでやっと落ち着くことが出来たのです。
落ち着いたところで心配になったのは、カーディガンのことです。
お姉ちゃんが生まれた時にも毛糸でカーディガンを編んでやったので、二人目の子にも少し前に編み上げたばかりでした。
二人目・・・一人じゃないじゃん。二人目と三人目だったよー。
毛糸を買ってきてもう一枚編まなくちゃ。生まれるまでに編めるかしら。
しかしカーディガンだけではありません。お姉ちゃんのお下がりで賄うつもりだったベビー用品がもう一揃い必要なことに気が付きました。(;´Д`)
ここからお金の問題に頭を悩ませる日々が始まります。
この問題は、双子が大学を卒業する22歳の時まで続きました。(笑)
ちなみに、つわりの時に食べたかったのはハンバーガーでした。今のようにハンバーガー店の数がありませんし、夜中に食べたいと言い出して旦那様に怒られたことがあります。