ワタクシは戦竜である
調子に乗って『ワガハイは竜である』の『ワタクシ』側も書いてしまいましたヽ(=´▽`=)ノ
ワタクシは戦竜である。
名前は色々あるのだが……
ワタクシが産まれたのは古代アラリスーリ帝国の竜繁殖研究所であった。
卵の向こうには規則的な機械音が聞こえるのみで親の呼びかけなきワタクシは生まれてよいか戸惑いながらも勢い良く殻を破った。
外は眩しくて目を細めるとなにか気配がして声が聞こえる。
……が生まれた。
体調に問題はないか?
白い大きな何かがワタクシを透明のもの越しに見ている。
透明なものが開けられてなにかツルツルグニョグニョした透明なものに包まれた生暖かいものにつかまれまぶしい光にすかされた。
あとにわかったことだが白いものは研究者とかいう人間で白衣を来て感染予防のマスクと使い捨て手袋をしてたらしい。
身体を拭かれて重さを測られたり体長を測られたりした後にワタクシはさっきと違う場所のゲージに入れられ水と茶色の小さなツブツブを与えられた。
キューと声がして辺りをみるとワタクシと同じような、でも青や黄色や茶色などの生き物……後に竜とわかるのだが……がこちらを見ていた。
大丈夫だよ、お食べ
さっきと違う白いの生き物……飼育係の研究員が優しくワタクシにツブツブを手に取り口元に近づけた。
ワタクシは匂いを嗅いだ後に食べ始めた。
なるほど、とりあえず食べ物のようだ。
こうしてワタクシの長い竜生が始まったのである。
ワタクシの最初の名前は記号と番号であった。
覚えているが名乗りたくないのは当然であろう。
キューキュー
(それまずいよね)
キューキューキュー
(竜果草よこしやがれってんだ、食ったことないけどよ)
他のゲージに入れられてたのはここで繁殖された以外に野生の竜からさらわれてきた卵から生まれてきた雛竜もいた。
生涯の悪友や親友たちとの出会いである。
ワタクシが雛竜から子竜になる頃、古代アラリスーリ帝国の帝都とやらは徐々に荒れはじめて来ていると聞こえてきた。
戦闘訓練に明け暮れる戦竜候補のワタクシたちには関係ない話だ。
そこでブレスだ!
小うるさい人間の教官の指示した、天鉱合金の壁にブレスをはくと壁が微妙に歪んだ。
さすが最強炎の……と見ていた帝都からきたという髭面の男が感心したように髭をしごいた。
この個体は炎を吐くのに特化しておりまして……かの……
髭面男の隣で揉み手せんばかりの研究所長が話しているのを片目に定位置に伏せしてあくびをして上を見上げた。
そこには脱走防止の天鉱合金と強化シールドが張ってあり空があまり見えない。
赤い鱗が美しいな、皇女殿下の護衛にピッタリかもしれん。
お目が高い、我が研究所最強種でございまして……
髭面男と研究所長が話してる声が遠くで聞こえる。
こんなちっちゃい竜をあんなところになんて……
飼育係がワタクシの頭をなでながらつぶやいた。
古代アラリスーリ帝国にアキュア聖都市より最後通告が届く頃ワタクシは帝都に送られ皇女殿下の護衛竜となった。
ヒデルキサム大陸の北にあるファーダリア王国も腐りきり、古代アラリスーリ帝国の腐敗も激しく、世界の聖なる心を自認する都市国家アキュアに難民が流れ込んで行ったことによる最後通告であったという。
ファーダリア王国を倒す救国の英雄が現れるにはまだ少し時間が必要であった。
もう少しお上品に食べられませんの?
キュ?
キュでなくてはなせるでしょう?
キューキュー
ワタクシでしょ? ワタクシ
皇后陛下のお産みになった皇女殿下はただ一人で常に側室の手のものに生命や貞操を狙われていた。
信頼していたはずの侍女は毒を盛り、乳母はナイフを振りかざし、異父兄弟は笑顔で階段を突き落とす。
そんな環境でも美しい皇女殿下はワタクシに愛称をつけてくれたのであるが……それは二人だけの秘密である。
そんな中でも城下町にお忍びで一緒に出かけたり、変装して厨房でつまみ食いしたりして、例の髭面の頭の毛を絶滅させてやったのは楽しい思い出である。
ちなみに髭面は皇后陛下の実家の父親で皇女殿下の祖父である。
お前が来てから楽しいわ。
キュー、ソウナノ?
ええ、もっと一緒に遊びましょう。
宮殿の中庭にある大きな木の幹に腰掛けてオロオロしながら騒いでる職員たちを見ながら、あの中の何人が本当にワタクシを心配してるのかしら。と皇女殿下は歪んだ笑みを浮かべた。
ダイジョウブ、ワタクシがついてる
この頃やっと竜人姿になれる様になってきたワタクシは皇女殿下の膝に手を置いた。
竜人姿にならないとワタクシはそろそろ質量が宮殿の部屋に収まりきらないサイズになってきて、遠い戦場に送られそうになりあわてて覚えたのである。
お前は良い子ね。
皇女殿下がワタクシの首の下をなでて微笑んだ。
ワタクシが少女竜になった頃、アキュア聖都市国家と古代アラリスーリ帝国との交渉が決裂した。
そしてワタクシが青年竜になった頃古代アラリスーリ帝国は世界を相手取って戦争をはじめ、ワタクシは皇女殿下から引き離され戦場に送られた。
その頃のことは話したくない。
報われぬ日々と家畜扱いに嫌気がさしたワタクシと竜仲間と有志たちは反乱軍と呼ばれていた聖都軍と結託し帝国は敗北した。
この頃、敵方から畏怖名がつくのだが黒歴史なので言いたくない。
そして敗北した古代アラリスーリ帝国は衰退し滅んだ。
皇女殿下の行方は知らぬ、知らぬが帝国の皇族の多くは行方しれずだ。
ワタクシはそのまま竜仲間や同士たちと行動し、キシギディル大陸の端っこの土地にいた野生の竜や竜人の集落を気に入ったリ〜ダ〜……つまり土着竜のお嬢さんに惚れた、未来のギアムシュ竜連邦初代代表が居着いてしまった。
ねぇ~綺麗な鱗だね。
なんでワタクシって言うの?
キューキューキュー
ピスピス
うるさい土着の子竜や子竜人が木の上で遠くを眺めるワタクシの近くに集まってきた。
ワタクシが気になるのはただ一人かつての主人の皇女殿下である。
ちなみにこの時も土着竜、土着竜人たちにあだ名をつけられるのだが言いたくない。
アキュア聖都市国家がアキュア聖王国を名乗りだした頃、ワタクシは悪友の竜人の雄と一緒に古代アラリスーリ帝国の残党を偵察してくると、世界に飛び出した。
リ〜ダ〜とその嫁のいちゃこらがひどすぎたので逃げ出したわけではだんじてない。
かつての古代アラリスーリ帝国の首都に行くとそこは見る影もなく崩れていた。
壮大な宮廷は大穴が空き飾りは剥ぎ取られかつて皇女殿下と暮らしていた後宮は……ビミョーに人がいる気配があった。
生活臭に首を傾げながら歩いていくとかつて登った木のある中庭に変な像がいくつも立っていた。
よく見ると落書きも壁にしてある。
そして不思議な香りが奥からただよっている。
どういうことだ? 謎の宗教集団でも居るのか?
カンカンカンカンとどこかで金属音がしたので隠れると独創的な格好をした人間や岩小人や風読みの民などがゾロゾロとどこからか湧いて出た。
おい、なんの集団だよ、と悪友がつぶやいた。
ねぇ~鱗ちょうだーい
いいですよ。
この竜のぬいぐるみどうかな?
まる過ぎに見えるでやんす
小さな長い黒髪の美少女とみまごうばかりの緑の瞳の美少年がドワーフや獣人と話しながらワタクシの隠れる崩れかけた柱の前を通った時何故か動悸がした。
いつでも健康健啖家のワタクシに一体何が? 病気なのかと胸を抑えると悪友がヒューっと口笛を吹いた。
あの妖しい人族綺麗だなぁ
悪友の言葉に視線を移すと赤いメタリックのローブに紫のラメ入りショールをかぶった……
皇女殿下……なんで……
美しく成長したワタクシの元主がのんきにフライパンの底をお玉で叩いていた。
ね〜さん、今日も匂いがへんやけど
ボクの芸術的な料理に文句つけるなら食べさせないよ
皇女殿下が美しい笑みを浮かべた。
というか口調もかわってるぞ、ワタクシと言っていたのにボクとはいったい……
今度ワガハイが作りましょうか?
君が作ると超薄味だからなぁ。
美少年の提案にね〜さんが腕組みした。
やっぱり動悸息切れが止まらない。
とりあえず、撤退しよう。
……まあ、街も見てみるか。
気配を消して宮廷を出ると案の定古代アラリスーリ帝国の元貴族とやらが何故かナタを片手にウロウロしている。
しかし、なぜナタ何だ?
竜はどこだぁ……って危ないやつだなぁ。
耳のいい悪友が崩れかけ商店街のアーケードの上からつぶやいた。
何故、竜を探している?
しばらく様子を見るか?
ワタクシと悪友は相談して元貴族をしばらく監視することにした。
『竜』を使ってかつてのワタクシたちを作ろうともくろむようであれば徹底的につぶさねばならないと心に決めて。
しばらくして、アラリスーリ帝国の残党どもが街に出てきたこの間の美少年にからんできたのだ。
まて、話を聞いてからだ。
飛び出そうとするワタクシを抑える悪友がわずらわしい。
ワガハイはちっとも高級感あふれる竜武具になんてならないのである〜
駄竜の鱗でも人のつくる武具の数バイ強い、帝国復活のため身を捧げろ〜
竜武具を作ろうとしているみたいだな。
あの可愛いものを害そうというのか。
ワタクシは拳を握った。
ジリジリとナタを片手に迫りくる元帝国貴族。
謎の宗教集団? はオロオロするだけで全然役に立ちそうにない。
塀際までせまられギラつくナタに目をつぶった美少年にもうワタクシは黙ってられずアーケードの屋根の上から飛び降り元貴族に回し蹴りをした。
ぐおーとうめいて元貴族は向こう側の壁に激突して意識を失った。
ばか、目立ちやがってとつぶやく悪友の声が聞こえた。
大丈夫か?
振り向くと花のように美しい顔の涙をたたえた緑の瞳と視線があった。
ありがとうございます。
可愛らしい声と笑顔に思考が停止する。
ああ、なんて可愛いんだ、このものこそワタクシの……
美少年がおびえたように後ずさりがれきに足を取られた。
ワタクシは思わず片腕で抱きとめあまりの軽さに息を呑んだ。
なんて華奢で軽いんだ。
いっそこのまま……
ワタクシが怪しい思考にとらわせそうになったとき。
いい加減もどってこい〜
悪友の呼び声と地面に降りた音が聞こえた。
ワタクシは舌打ちして美少年の首にキスを落として元貴族を踏みしだいて崩れかけた壁を飛び越えた。
変態行為をしやがってと悪友が悪態をついた。
フンッと鼻を鳴らして横を向いた。
変態行為で悪かったな。
古代アラリスーリ帝国に滅亡され収入源を失ったカータシキ魔法塔国が次の依頼国を物色している頃。
ワタクシは何故か古代アラリスーリ帝国の元貴族のせいでで共闘したラーシャ族の傭兵男に俺の背中を任せられるはお前だけだ、抱き上げさせてくれとせまられて蹴り倒して悪友に頭を抱えられた。
お前は俺の生命だ。
傭兵男のちかづいてきた顔にバシッと裏拳を入れた。
赤い瞳に魅入られた哀れな俺に愛の雫を与えてくれ。
肩を抱くふらちな手はねじり上げた。
愛している、俺にはお前しかいない。
耳元でささやく色気垂れ流しの傭兵男にエルボーをくらわせながら思い出すのはあの麗しき竜の少年だった。
ワタクシは一体どうしたら良いのか……
おい、いい加減にかわいそうだから真剣に対応してやれよ。
傭兵男に邪険にされ律儀に半径三メートルは離れ、ファーダリア王国とアキュア聖王国の間に広がる荒野の丘の上から悪友はつっこみをいれた。
ファーダリア王国が反乱軍に攻められて滅亡している頃、ワタクシは傭兵男を叩き飛ばして求婚をウヤムヤに多分した、たぶん。
後日、例の傭兵男がラーシャ族の次代長というかグーレラーシャ傭兵国とやらの初代王太子とやらだったのをきいてあの国は大丈夫なのかと密かに思ったものである。
ちなみにこの傭兵男、かってに愛しいなんたらと妖しい呼び方をしていたが思い出すと寒気がするので語るつもりはない。
ヌツオヨ大陸の山間部でレンジャー集団だったファデルーダ護衛団がファデルーダ護衛国になった頃。
ワタクシはヌツオヨ大陸に同じく新たに起こったオーヨ神聖王国の地に悪友とやってきた。
造りかけの神殿のモチーフはかつて古代アラリスーリ王国が使っていた超超超極小機械の回路や使用記号が信仰されていた神々のレリーフにまぎれて描かれている。
オーヨ神聖王国に古代アラリスーリ帝国の元皇子殿下がいると言う噂は本当なのかもしれない。
古代アラリスーリ帝国、皇室の血筋の証の皇女殿下も持つオレンジ色の瞳をした男だと聞いたが……もう一つの方の神殿が騒がしいな、行ってみるか。
いつも通り物陰から様子をうかがうと元古代アラリスーリ帝国の首都でたむろしてた皇女殿下がひきいる、謎の宗教集団のようだった。
皇女殿下は来てないようだ。
われらの崇め奉る御方はこうではないだよ〜やんなるよね。
緑色のぴったりした服を着たピンク系のつんつん頭の男がコテを片付けながらぼやいた。
異教徒どもに我らの神が再現できるわけないだのいわれてもねぇ。
高すぎるまけろってなんだよ。
一緒に来ているらしいやはり奇抜な格好の連中が口々にぼやきながら道具をしまっていくのを流しながら自然にかのものをさがしてしまった。
居た。その姿を再び見た時、動悸がした。
先にお見積りとってデザインと一緒に見せたんですけどね。
小柄な黒髪の美少年が紙をまとめながら憂い顔でため息をついた。
ああ、なんでワタクシは……やはりこのものこそ……
声をかけようか悩んでいると作りかけの建物の中からオレンジ色の瞳の男が白いひらひらした格好であらわれた。
あの顔は……皇女殿下の異母弟……の誰かに似てる。
帰るのか?
オレンジ色の瞳の男がワタクシの美少年のあごに指をかけた。
ワタクシ、今、何を思った?
わ~またー 魔性の竜だからなぁ……
その竜はエセ少年ですよ〜大人なんですーん
謎の宗教集団の連中が騒いでいる。
魔性の竜? エセ少年って……
ワタクシが首を傾げてるとわ~と声がした、みるとオレンジ色男がワタクシの美少年の頬をなめてるのが見えた。
このクズやろうといきり立つワタクシを止める悪友。
その目の前でオレンジ色男がワタクシの美少年を横抱きにしてるのが見えた。
離せ! 離せ!
バカ、素が見えてるぞ! 仲間が助ける!! たぶん!
もともと叩き上げの戦竜のワタクシは興奮すると角だの尻尾だの羽根だのが出てしまうことがある。
今も角が出たようだ。
さあ、めくるめくモフモフ世界へ行こう。
と声が耳をかすめ、視線を移すと可愛いワタクシの美少年をなでながらなにかささやき笑いながらオレンジ色男があるき出した。
いや~と美少年が手をパタパタ振った。
謎の宗教集団は困った顔をした、なぜ、助けに行かない、あほと毒づいた。
オレンジ色男の護衛らしいエセ古代アラリスーリ帝国近衛兵風の格好をした男たちがやりを構えて謎の宗教集団を取り囲んで何故かほのぼのしている。
助けて〜誰か〜
美少年が可憐な叫び声をあげ可愛い手をパタパタ振った。
もう、限界だ!
ワタクシは悪友を振り切って隠れていた作業中の壁を飛び越えそのままオレンジ色男に蹴りを入れた。
これはワタクシのものだ!
美少年をオレンジ色男から助け出し立て抱きにして宣言した。
何故か謎の宗教集団に拍手喝さいされ、エセ兵士たちは、あわててオレンジ色男を抱き起こす奴とワタクシにふるえながら槍を向ける奴がいたので片手を大剣にかけた。
その時、発動ワードが聞こえ超超超極小機械の回路から術を放った電撃が形成される……前に発動主のオレンジ色男を大剣を鞘つけたままふるって叩き飛ばした。
術者を潰すのが超超超極小機械による攻撃回避の基本だから届く位置にいないのが普通なんだが……古代アラリスーリ帝国の滅亡から年月が経ってるから対策も教えられてないんだなぁとヨロヨロと立ち上がるオレンジ色男をみながら妙な感心をした。
ありがとうなのです、ワガハイはもう大丈夫なのです。
愛らしい声がして小さい手がワタクシの胸元をパタパタ叩いた。
おーい良い加減に戻れ〜
悪友の声がしてそちらに意識をむけてるうちに何故かオレンジ色男が青黒い髪の重量系の巫女と抱き合って深く口づけを交わしている。
なんかアホらしくなった。
エセ古代アラリスーリ帝国兵と謎の宗教集団もそう思ったらしく解散の様子を見せている。
ワタクシは腕の中の美少年を離さなければいけない。
あの~離してほしいのですが?
美少年がワタクシを見上げた。
そなたはワタクシの比翼の竜、伴侶なのだぞ。
どこかで何かがキレた気がした。
大体戦竜に理性など期待しないでほしい、ましてや運命の伴侶に離してほしいと云われるなど、ワタクシも精進が足りない。
しっかりと邪魔の入らないところで語り合おうではないか。
微笑んで竜の翼を広げ美少年を抱えたまま大空へ飛び立った。
やっちまった〜と頭のを抱える悪友の姿と騒ぐ謎の宗教集団の姿が下に見えた。
えーとその……うわーん助けて〜
美少年が叫んだ。
ギアムシュ竜連邦と呼ばれはじめた土着竜集落に連れ帰ったら雷竜のリ〜ダ〜にカミナリを落とされた、お前を放し飼いにするとやばいからと戦士長をおしつけられた。
自分は嫁とイチャイチャイチャイチャしてたくせに。
謎の宗教集団改めクレシア芸術集団に美少年を連れて婚約の挨拶に行かされたら皇女殿下が超超超極小機械でワタクシをぶっ飛ばした。
さすが皇女殿下
のちにクレシア芸術国の初代女王陛下となる方はだてではない。
何故かごっそり抜け鱗を取られたが……何に使うのだろうか?
キシグ王国がミル=キシグ古王国、メア=キシグ武術国、ドゥラ=キシグ香国の三国に三兄弟仲良くわけ、ついでにモタマチムイ遺跡国になった地域がその妹に押し付けられた頃、色々あったが正式にプロポーズしてワタクシと美少年は結婚した。
その時に美少年で可愛い伴侶に名前をつけてもらったのだが、もったいないので通称で通している。
魔王島で相変わらず、世界魔王が引きこもりをしている頃。
ワタクシはその島に住む可愛い伴侶の親父様に会いに行って、世界竜な威容より、キラキラクネクネした乙女なところが伴侶と似てると思ったのは内緒である。
ファーダリア王国が救国の英雄によりファモウラ軍国と名乗り始めた頃、最初の子竜が生まれ、その後ワタクシは三竜の親となっていた。
そして幾年の年月が過ぎ、子竜が巣立ちし伴侶を得て孫ができた。
そして現在。メア=キシグ古王国にデイサービスができる頃、ワタクシは年老いた。
デイの迎え来てるぞ〜
おはようございます。
伴侶とよく似た美少年のひ孫とデイサービスの介護士の声にコタツでうとうとしていたのに気がついた。
長い夢を見ているような竜生……か?
心配になってコタツの中を覗くとワタクシの可愛い伴侶がヌクヌクと丸まっていた。
夢でもないかと思いながらさて行くか、とこたつから可愛い伴侶をつまみだした。
何、ウルウルしてる? デイに行かねば孫嫁が困るであろう。
今日はどんなレクリエーションなのだろうな、ワタクシは風船バレーとか玉入れとかが良いな。
ワガハイは貼り絵とか塗り絵がいい。
そうかとわらって、竜人姿でいつものように可愛い伴侶を抱きかかえたら膝折しそうになった。
くっ、ワタクシも年老いたものだ。
個別機能訓練を頑張らねばと心に誓った。
余談であるがその日のデイでワタクシが頑張って個別機能訓練をしたら担当看護師にボールが割れます〜転びます〜逆立ち歩きだめーと困った顔をされた。
このくらい普通なのだが?
だめですよ無理しちゃと介護士があわててワタクシを支えスリングに可愛い伴侶をいつものように移した。
ワタクシはいつでも可愛い夫を抱き上げたいのだ。
転んだら元も子もないですよ〜。
なだめられながら玄関に歩いていくと柔らかい感触がした。
よく見ると可愛い伴侶がちっちゃい手をだしてワタクシにさわっている、にっこり笑った笑顔に思わず手を握った。
可愛い伴侶がいる限り老いたこの身体……うまくいごけぬ身体でも楽しく生きていける。
そして、いつか一緒に往くのだ。
仲良しさんですねと介護士が笑いながら送迎車の扉を開いたので転ばぬように慎重に乗り、可愛い伴侶を膝の上に抱き上げた。
……さん楽しいねと可愛い伴侶がすりっと身体をよせた。
ああ、そうだな、ワタクシは竜生最後に呼ばれる名前は可愛い伴侶がつけた名前が良いと思いながら小さくなった可愛い伴侶の背をなでた。
ランダーネフ花国で地下遺跡が本格的に調査される今日この頃、ワタクシは可愛い伴侶と仲良く元気に世界のかたすみで平和に暮らしている。
読んでいただきありがとうございますm(_ _)m