エピソード4:佐藤君のこと
インターホンを押す。
彼はすぐに出てきた。
彼は私を見ると鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をし奇声をあげた。
とうとう私すらこの男を意思疎通をすることは叶わなくなったらしい。
私は手を挙げじゃあなと別れを告げると彼はウホッ!とよくわからない返事をした。
さようなら佐藤君。
私が帰路につこうとすると佐藤君が後ろから再び呼びかけてきた。
今度はかろうじて日本語だった。
さっきは何の真似をしていたんだと問い詰めると彼は自分の能力を使ったといった。
彼の目には私がゴリラかホモに見えたのだろうか。
だとしたら彼の眼球は南米の川のようにそれはそれは濁っていることであろう。
ついでに根性も。
あと脳みそも。
足の爪の汚れも。
ちょっと前のwindowsのアップデート頻度並に情報を付け足した私はあくまで紳士ぶりお邪魔しますと一声かけると彼の部屋へずかずか入った。
さっさと終わらせて帰りたかっただけである。
彼の部屋には空のヤクルトのボトルが大量にあった。これでガンダムを作って世界を変えると大手を広げて言っている。作りかけのものがあったがどうせツッコミどころ満載の物でしかないだろう。
と思っていたが現物を見てビックリ。
その完成度には脱帽であった。
こんなバカにも道はあるのだ。
そう思うと私の頬にきらめく液体が流れた。
これはきっと冷や汗だ。
だってガンダムの横に置いてある立て看板的なものに「機動戦士ガソダム」と書かれているのだから。
このガッカリ感を説明しようにも出来ない私は適当にこれからの自らの厨二病街道をどう進むかを口うるさく指導し彼の家を後にした。
私の去り際に彼が遺した言葉はスズメの涙ァ!であった。
私は無視して帰路についた。
彼が最後の最後にモテ度が、と言ったことを私は一生忘れない。