エピソード2:厨二病仲間、田中君
インターホンを鳴らす。
彼はすぐに出てきた。
我々は共通の合言葉で相手が本当に相手であるかの確認を行ってから自称彼の錬金術研究所である彼の家にお邪魔した。
なぜ合言葉が必要なのかというと我々の厨二病仲間に一糸違わず相手の姿に化けることが出来るという能力を持ったややこしい輩(佐藤君)がいたからである。
我々は佐藤君がスパイ活動をしていると踏み「ジュゲムジュゲムゴコウノスリキレ(省略)」という長ったらしい合言葉を彼が校庭で虚しく指を鳴らした季節と同様、蝉の鳴き声が轟く八月の終わりに作ったのである。
さらには佐藤君のサイバー攻撃に備えて田中君のpcをいじくり訳の分からないシステム言語的なものを書き換えたりもした。
pcはそのまま昇天した。
そもそもなぜ佐藤君が悪人という設定で話が進んでいたのか今となっては真相は闇の中である。
佐藤君は厨二病をこじらせて学校へ来なくなった。
ちなみに私の能力は人から存在を認識されないことである。
クラスではたびたびシカトを決め込まれたり自分の存在を今1度疑ってしまう程度には酷い扱いを受けていたがこれは私だけがもつ個性、言うなれば能力なのではないかという頭にウジ虫が湧いているのかと疑惑の念を向けられるか、或いは人から首を180度かしげられるだろうと容易に推測できる理論にたどり着いた。
今考えると頭にウジ虫でも湧いていたに違いない。
田中君の部屋では今までの中学の思い出話に花を咲かせたわけではなく、今までの厨二病歴史を振り返り今度は何の能力に目覚めようか考えあぐねている最中であった。
彼は炎の錬金術師という設定には飽きたらしい。
勝手なものだ。
某大佐もお怒りであろう。
私は相手の能力をコピーする能力に目覚めてはどうだと提案した。
田中君は大層気に入ったようで佐藤君の能力をコピーしに行こうとした。
その前に練習台として私を使えと私は言った。
田中君は快諾し謎の効果音と共に古臭いロボットのおもちゃのギミックのような不気味な体の震わせ方をし畳に倒れ込んだ。
3秒ほどで起き上がった田中君は体にエネルギーが溢れているなどと到底私の能力をコピーしたとは思えない感想を残した。
私はほくそ笑んだ。
田中君は高校に進むとボッチになるだろうと思いながら。