エピソード1:転機
私は春から高校生、ピカピカの一年生となる手はずの者である。
中学の時は深夜アニメやライトノベルに感化され、自分の腕には寄生動物が宿っている、右目の力で人を操ることができるなどの世間一般でいう厨二病たるものになってしまったおかげで色んな意味で堕落し顔面偏差値も成績も身長も性格も堕落しきってこれ以上堕ちるものもないと思われた堕落した人生を送っていた私のもとに堕ちてきたのは第一希望の高校の合格通知であった。
中学生からみた高校生は未知の領域である。
ある程度の社会的自由を与えられる堕落した私には眩しすぎるほどのユートピア(高校)は、もう1度人生の指標を立て直し今までの狂気とエゴに満ち溢れた生活を矯正出来るたった一つの手立てに思われた。
今度こそ私に厨二病から脱却して見せることの出来る機会がやってきたのだ。紳士だ、紳士になれるのだ。
私は狭い自室で、公園でキャーキャー奇声をあげる小学生のごとく、あるいは動物霊に取り憑かれたかのように乱舞した挙句、幻覚が見えるようになってシャドーボクシングをし母親にはまた能力に目覚めたのねと割と厨二病に理解のある優しい言葉を投げかけてもらいさらに元気になったので中学最期の思い出でも作ろうと躍起になって放たれた矢のごとく家を飛び出した。
まず最初に向かったのは田中君の家であった。
田中君は私の厨二病仲間である。彼の能力は指をひとたびパチンと鳴らすとそれはそれは強力な大獄炎を発生させることが出来ることであると彼が言っていた。
彼は校庭の真ん中で指を鳴らして見せたことがある。
ぱちん。
指先にはトンボが止まった。夏らしい光景だった。