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Outlaw Gunners ーハーレム小隊の憂鬱な日々ー  作者: 梨乃 二朱
第一章:『新撰組』の任務
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第二話

 臆病な受任。

 咲浪学園長はタブレットのディスプレイに人差し指を滑らせて、次の資料を表示する。

 警察の証拠品リストと、前の作戦で使われた『RED SHOT+』の数が表されていた。

 明らかに数が合わない。


「それで、だ。盗難にあった『RED SHOT+』は三つらしいんだけど、回収した『RED SHOT』の中に『+』は一つも無く、奴等も一つしか使用していない。この意味、分かるかな?」


「まだ二つが行方不明って事ですか?」


「その通りだ。これは由々しき事態だよ」


 重大な話をしているのに、学園長の口調は軽かった。


「で、この行方不明の二つを『新撰組』諸君に確保して欲しいんだ」


 薫は学園長の言葉に驚いた。


「『RED SHOT+』の調査を、我々がですか?」


「いやいや、調査の必要は無いよ。もう何処にあるか、警察機関が把握している」


「では、ハッキングですか?」


 不意に口を開いた時雨は、とんでもない事を口にした。

 警察機関が掴んでいるという情報を掴んでいるのだから、わざわざハッキングする必要は無いと思うのだが。


「その必要も無い。奪還は我々に任せると言ってきている」


「それは残念です」


 何が残念なのか。

 問い質さない方が良いのだろう。

 薫は時雨を無視して「何故、我々が?」と学園長に問う。


「それこそ軍の特殊部隊が請け負うような案件なのでは?」


「大人の事情だよ、的場くん」


「事を公にしたく無い警察機関は、情報を無闇に拡散したく無い。そこで既に事件に片足を突っ込んでいる諸君らに、白羽の矢が立ったということだ。何せ、警察内部でも盗難は秘匿されているからな」


 雨竜女史が不機嫌に事情を説明する。

 成る程、確かに大人の事情だ。

 小隊規模で行動を起こすなら、既に情報を得ている薫ら『新撰組』が適任という事なのだろう。


「場所はT国領域の孤島。テロリストの巣窟だね。全員が『不死人化』している可能性が高い。ははっ、既にテロリストの手に渡っていたということさ」


「連邦政府という巨大国家に所属していても、国家間の問題はある。それに事が事だけに出来るだけ隠密に行動して欲しいそうだ。難しい任務になるぞ?」


 学園長と雨竜女史は任務情報を口にする。

 きっと高度な秘密事項なのだろう、と頭の端で考えながら情報を吟味する。


「さて、どうするかね小隊長? この任務を受けるか否か」


 両手の平を上向け、選択肢を表示する学園長。


「断る権利は、無いですよね?」


「そんな事は無い。まぁ、色々と誓約書にサインして貰わないといけないけど」


 それは拒否権が無いという事だ。

 うちの小隊員は、誓約書等にサインするような可愛いげは無い。そんな事をするくらいなら、銃弾の嵐の中に飛び込む事を選ぶだろう。


 第一、この場に時雨が居る時点で、既に断る理由は潰えてしまっているも同然だ。

 見ろ、既に瞳を輝かせて薫を眺めてきている。

 ここで断ったとしても、位置情報を教えてしまっている事から、勝手に乗り込む危険性もある。


 薫に残された道は、一つしか無かった。

 胃が縮こまる感覚に、どんな表情を浮かべていたのか想像もしたく無かった。










 結局、任務を受ける事にした薫は、必要な情報を貰い学園長室を後にした。

 途中、時雨には先に小隊待機室に戻って貰い、他の二人と情報を共有するように命じた。


 時雨と分かれた薫は、休憩室に立ち寄り自販機で炭酸の缶ジュースを購入した。

 何だかぐったり疲れたし、胃が痛いので炭酸飲料が欲しかった。

 個人的にだが、胃痛には炭酸飲料が効くのだ。

 ベンチに腰掛け缶ジュースのプルタブを開けた薫は、今回の任務について考えながら中の飲料水を口にする。


 率直に言って、昨年度に行ったどの任務よりも厳しく危険な任務だ。

 何せ、テロリストの巣窟に単身で乗り込むことになるのだ。

 国内の暴力団やテロ組織を沈静化するのとは、勝手が違う。


 死ぬかも知れない。

 そんな恐怖が、薫の心底で渦巻いていた。


 あの三人娘は、大丈夫だろう。

 学年最強の名は伊達では無い。最悪の場合でも、彼女達だけでも生き残る事は出来るだろう。


 けど、薫は違う。

 薫はただ武器が使えるというだけの、高校生に過ぎない。

 平凡で凡庸で、そして弱い、一個の人間に過ぎないのだ。決して歴戦の勇士などでは無い。


「…………死にたくないなぁ」


 うっかり口をついて出た言葉に驚き、慌てて周囲を見渡す。

 幸いにも、その場には薫以外に誰も居なかった。


「誰だってそうですよ」


 と思ったら、視野の死角から声が聞こえた。

 驚いてその方向へ振り向くと、驚くほどに美しい少女の姿があった。


 人の身でありながら、天女のように美しい少女。

 『咲浪銃器学園』最強の『ガンスリンガー』。

 三科凛子、その人だ。

 道場帰りなのか、竹刀袋を肩に背負っている。


「とんでもない任務を引き受けたそうですね?」


「何故、それを?」


「壁に耳あり障子に目あり。銃声鳴るとこ凛子あり」


 三科生徒会長はそんな事を言いながら、薫の隣に座った。

 最後のは言葉遊びなのだろうが、意味が分からなかった。


「まぁ、学園長から直接聞いたんですけどね」


「何で学園長から?」


「私を誰だと? 生徒会長には、生徒への任務発注に関わる事もあるのですよ」


 成る程、と納得する。

 確かに今回のような重大任務の決定に、生徒会長が関わっていると言われても得心が行く。


「それにしても、一年前もこんな会話をしましたね?」


「え? あ、そう言えば…………」


 一年前。

 『咲浪銃器学園』の高等部に進学して、束の間の訓練期間を終えた頃の事だ。

 まだ実戦が怖くて仕方無かった薫は、今日のように一人で震えていた。

 その時は校舎裏だった。


「あの時も会長が慰めてくれたんですよね」


「あの時は会長じゃありませんでしたけど」


 懐かしくも恥ずかしい思い出だ。

 思えばあの一件を切っ掛けに、三科生徒会長との距離を縮められたように思える。

 それまでは、余程の事がないと近付くことも出来なかった。いつも取り巻きが居たというのもあるが、彼女自身が持つ神性のようなものに気圧されました近付けなかったのだ。彼女の方から近付く事は多かったが。

 目標にしていてこれなのだから、自分のヘタレ具合に嫌気が差す。


 そう言えば、昔から彼女は薫のような小者に何故か目を掛けてくれている。

 ここだけの話、彼女には既に百人近い弟子が居る。天真時雨もその一人だと、ここに入学してから知った。

 それほどに彼女の顔は広いのだ。


「今回はあの時とは状況が違います。下手を打てば、全滅の危険性もあります」


「けど、あの三人なら大丈夫と思ってますね? もし死ぬとしたら自分だ、と」


「その通りです」


 薫は苦笑を浮かべる。

 生徒会長には、全てお見通しのようだ。


「全く、私に一太刀浴びせた剣士が情けないですね。もっと自信を持ちなさい」


「一太刀って……その後、ボコボコにされましたよ…………?」


「それは当たり前です。私の方が強いのですから」


 服の上からも分かる綺麗な乳房をグッと突き上げ、生徒会長は嘯く。

 その様子を横目で眺めながら、缶ジュースに口を付ける。


「まぁ、確かに今までとは毛色の違う任務ですが、私も理事長も貴殿方なら達成出来ると見込んで発注しているのです。自信を持って大丈夫ですよ。それと、貴方は一人ではありません。もし危なくなったら、彼女達が貴方を守ってくれますよ。同様に、貴方も彼女達が危なくなったら必死に守るでしょう?」


「それは、そうですが…………」


「それだけで十分なんですよ。政治的な背景とかそう言う大人の事情は、大人に任せて貴殿方は、ただ生き残ることを最優先にすれば良いんです」


 三科生徒会長は朗らかに語る。

 師が弟子にするそれよりも、母が子を諭すような口調である。


「あ、そうです。もし無事に帰ってこれたら――――」


「――――?」


「取って置きのご褒美をあげますね」


 そう言って微笑む三科生徒会長は、まるで女神のように美しかった。

 時雨のイメージは、ラストサムライという感じにしたかったのですが、何かややこしい感じになってしまいました。

 マッド何とかにならないよう、気を付けましょう。

 因みにスタイルは、三人の中で一番豊満という感じで。

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