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Outlaw Gunners ーハーレム小隊の憂鬱な日々ー  作者: 梨乃 二朱
第一章:『新撰組』の任務
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第一話

 土下座こそ正義。

 的場薫は憂鬱な気分だった。

 憂鬱でない日など無いに等しいが、今日は特に憂鬱だった。

 何故なら、学年主任ではなく学園長に直々に呼び出しを食らったからだ。言うなれば、校長室に呼び出されるのと同義である。


 しかも、薫だけでは無い。

 通達してきた学年主任、雨竜毬耶は、天真時雨も連れてくるように言い付けてきたのだ。

 十中八九、先日のハッキングの件であろう。


「それで、クララ専用のバトルライフルを造っていてだな。『適性銃器』のマガジンと共通化して、二十発マガジンを使えば弾数の少なさもカバー出来る筈なのだが」


 時雨は呼び出しを食らっているというのに、楽しげに開発中の武器について語っている。

 とても無邪気な表情をしているが、その実は天才的な発明を成し遂げようとしているのだ。ライフルの弾倉でバトルライフルを造ろうという発想より、ライフルの『適性銃器』をバトルライフルに対応させようという発想が、かなり特異である。


「それはあれかな? 僕に造ってくれたリボルバーの応用みたいな?」


「そうそう、それを弾丸じゃなくてマガジンにした感じだ。理論上は難しく無いんだ。けど、開発費と素材が特殊でな」


 時雨は既に、薫の『適性銃器』に対応した回転式拳銃を造り上げていた。

 『対不死人弾』を撃ち出すには、通常の金属より堅牢でありながらも軽い特殊錬金の素材が必要だ。それはとても高価で、薫が造って貰った回転式拳銃でも、原価の倍以上の値段となった。


「まぁ、費用の心配はしなくて良いよ。僕が何とか工面するから」


「あ、それなら大丈夫だ。ちょっと小細工したら、ポンって出てきたから」


 その小細工の内容を、隊長としては把握しておかなくてはならないのだろうが、怖くて薫には出来なかった。

 これ以上のトラブル要素は体が許容しない。

 主に胃の耐久力は限界に近かった。


 そうこうしている内に、学園長室に辿り着いた。辿り着いてしまった。

 薫は無邪気な時雨を連れたって、地獄の門のように重厚で恐ろしい学園長室のドアをノックするのだった。


 そして誓う。

 取り敢えず時雨だけは見逃して貰えるよう、速効で土下座をしよう、と。










「入りたまえ」


「失礼します」


「やぁ、よく来たね!」


 重厚な扉を開けた先には、白髪のやせ形な美青年、咲浪霧也が親しげに片手を上げて待っていた。

 彼は今、応接用スペースのソファに座っている。対面には雨竜毬耶が居り、テーブルの上にはタブレット型ディスプレイやら紙媒体の資料やらが広がっていた。


「まぁ、立ち話も何だから、こっち来て座りなさい」


「はい、では失礼しまして…………」


 薫は言われた通り学園長の傍らまで近寄ると、その場に正座して座った。

 土下座をする準備である。


「そんな畏まらなくても、ソファで良いよ」


 学園長に突っ込まれた。

 結局、薫を真ん中に、左手に雨竜女史、右手に時雨という形で座る事となった。

 何故、薫を真ん中にしたのかは、その場の流れだろう。学園長と真っ向から対面する形になるので、緊張して仕方がない。

 というより、雨竜女史が向こう側へ行けば良いと思うのだが、やはり立場とかあるのだろう。


「先ずは先日の件はよくやってくれた。警察も大満足の出来映えだったそうだよ」


「あ、ありがとうございます…………」


 薫は思わぬお褒めの言葉に、完全に恐縮して頭を下げた。隣で時雨も頭を下げる。


「ハッキングの件も水に流すそうだよ。良かったね」


「重ね重ね、ありがとうございます」


 薫は更に深く頭を下げた。

 時雨を横目で見ると、彼女はキョトンとしていた。自分の事を言われていると、分かっていてこの反応なのだろうな。


「では、本題に入ろうか。これを見て欲しい」


 ここからが本題らしい。

 薫はホッと胸を撫で下ろした。本当にハッキングの件は、お咎め無しのようだ。


 学園長はタブレット型端末を操作すると、一つの資料を取り出した。

 赤色透明の液体が入った注射器、お馴染みの『RED SHOT』だ。ただ薫の記憶と違うのは、『RED SHOT』の隣に『+』と書かれている点である。


「『RED SHOT+』と呼ばれているものだが、心当たりはあるかい?」


「いいえ、全く。時雨は?」


「警察から盗まれた奴ですね? 『アンデッド』を強制的に変異させる新薬」


「へ?」


 薫は驚愕に固まった。

 おい、今この子、何て言った?

 物凄く重要な情報を、あろうことか隊長に隠していたというのか?

 という事は、あの時、変異種が現れたのは偶然では無く?


 様々な疑問が薫の頭蓋内で反芻する。


「はっはっはっ! やっぱり的場くんは知らなかったか!」


 学園長は弾けるように笑い出した。

 笑い事では無いのだが。

 慌てて雨竜女史を見ると、彼女も信じられないという面持ちをしていた。


 警察から盗まれた『RED SHOT』の改良品。

 成る程、だから前回の任務は完全破壊を望んだのか。警察で盗難があった、などという不祥事を隠す為に。


「何でそんな重要な情報を、僕に黙ってたの?」


 取り敢えず、事を荒立てないように、穏便な声色で問い掛ける。

 すると時雨は、あっけからんととんでもない事を口にした。


「言ったら任務が通らないと思ったからな」


「そりゃそうだよ! 危ないし」


「そうなると、『+』が反政府組織に渡ってたかも知れないだろ? あの段階で、警察は動こうとしてなかったしな」


 こう言われてはぐうの音も出ない。

 確かに時雨が隠し立てしなければ、薫は任務を認めなかったし、雨竜女史だって認めることは無かっただろう。いや、それ以前に警察から横槍が入ったかも知れない。

 どの道、任務が危うくなっていた事だろう。


「せめて僕には言っておいて欲しかった…………」


 けれども、そう言う事情があるなら、責任を全て被る必要など無かった。

 薫とて堅物では無いのだ。

 必要なら、ルールも破る。


「まあまあ、天真くんは的場くんに迷惑を掛けたく無かったんだよね?」


「え?」


「もし警察から苦情が来た場合の、切り札にしようとしてたんだよね?」


 学園長の言葉に、時雨は少し照れた風に顔を逸らした。

 今更、そんな気遣いは不要であるというのに。これまで散々、迷惑掛けられたのだから。


 けど、そんな無駄な気遣いでも嬉しい。

 この子はやっぱり、我が『新撰組』内の常識人である。


「まぁ、今回は警察機関の落ち度さ。だから天真くんを責めないであげてくれ」


「はぁ、分かりました」


 学園長に言われずとも、許すつもりであった。

 終わった事であるし、彼女なりに考えての事だと分かったからだ。


「ポイントは引いておく」


「はい、分かりました…………」


 ただ薫は許そうと、雨竜女史は許さないらしかった。

 社会は厳しいと教えてくれる、雨竜女史なのだった。


 これでまた、胃が痛む事になるだろう。

 薫は溜め息を吐きそうになったが、必死に我慢したのだった。

 的場薫くんの名前は、私の好きなアニメから名字と名前と別々に拝借し融合させました。

 二人とも名ガンナーなんですよ。

 性格は全く違いますが。

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