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第四話

 目覚めた先の地獄。

 凄まじい爆発音と共に、的場薫は意識を取り戻した。

 気付けば薫は横転した装甲車の後部座席に放り込まれており、体の左半身を強くぶつけたのか酷く痛んでいた。


「おい、しっかりしろ!」


 不意に声を掛けられて振り向くと、全壊したフロントガラスから精悍な青年がこちらへ呼び掛けていた。

 青年は連邦政府海兵隊のアサルトスーツに身を包んでおり、薫と同じ紅い瞳をした日本人であった。


「脱出するんだ! 急げ!」


 薫は青年の声に朦朧としていた意識を完全に取り戻し、慌てるようにドアを抉じ開けた。

 ドアを開けると曇天の空と林立するビル群が見えた。同時に、ビルの間を縫うように天空を駆ける異形の巨鳥が何匹も目に入ってきた。


「『アンデッド』…………?」


 黒い皮膚に全身を走る赤い筋が入り、顔が人間染みた巨大な怪鳥は、記録映像で見た『不死人』の『変異種』、“ガルダ”で間違い無かった。

 薫は装甲車から這い出て、地面へと降り立つ。


 そこはまるで戦場だった。

 倒壊した建物。

 抉れたコンクリート。

 破壊された車両。

 道々で殺され血を流した人々。

 そして町中を闊歩する『不死人(アンデッド)』の軍隊。

 記録映像でのみ知る戦争の様相に酷似したその場所に、薫はどうしようもない恐怖を覚えた。


「ぼさっとするな! 銃を取れ、二等兵!」


 ぼんやり辺りを見渡していた薫に、先程の青年が駆け寄って来た。

 薫は怒声に驚きつつも、足元に転がっていた『FF M8A2』自動小銃を取り上げた。コッキングレバーを引き初弾が装填されている事を確認すると、弾倉が一杯であることを確かめる。

 気付けば薫の服装は連邦政府軍の制式なアサルトスーツに変わっていた。


「各ビルの屋上に設置された対空兵器を無力化しなければ航空支援は得られない! 急ぐぞ、続け!」


「は、はい!」


 青年は早口に説明すると、『M8A3』自動小銃を構えて駆け出した。

 薫は分けも分からないまま、青年の後に続いた。











 薄暗い部屋の中に、スピーカーから発せられる銃声と轟音が響き渡る。

 モニターには、兵士然とした精悍な面持ちの青年と兵士にはそぐわない優しい面持ちをした青年の姿が映し出されている。

 二人はそれぞれ連邦政府軍制式採用装備を揃え、戦場と化した都市を駆け回っている。


「始まったみたいだね」


 モニターの前に腰掛ける小隊長に、美坂彰は声を掛ける。

 小隊長は画面から目を反らす素振りすら見せず、「あぁ」と短く答えた。


「本当に彼なのかい? 結局、DNA鑑定も当てにならなかったんだろ?」


「俺の勘は九割の確率で奴だと告げている。俺は俺の勘を信じるさ」


「あんたの勘で戦場に放り込まれたあの子に、本当同情するよ」


 彰はモニターには映る優しい面持ちの青年に、同情の眼差しを送る。

 平和な国からいきなり戦場へ放り込まれたのだ。よくもパニックを起こさずに対応出来ている所を見ると、曲がりなりにも『ガンスリンガー』と言ったところか。


「それで、違ったらどうするつもり? ゲームと違って途中退出なんて出来ないよ?」


「違ったとしても、あいつの傍には“的場薫”が居る。死ぬことは無いだろうさ」


「ま、そうだろうけどさ」


 小隊長はモニターを眺めたまま、「心配するな」と告げる。


「奴なら必ず、真実に辿り着く筈だ」


「私やあんたでも辿り着けなかったのに、あんな子供にそんな技量があるってのかい?」


「あぁ、あれが本当に“的場薫”とするならば、きっと」


 それきり小隊長は黙ってしまった。

 彰は仕方無くお気に入りのマグカップを手に取り、コーヒーを注ぎ淹れる。そのままマグカップを片手に適当な椅子に座って、モニターを観覧する。

 戦争映画は好みでは無いのだが。

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