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第一話

 アバンチュール。

 雨竜毬耶は、暇を持て余していた。

 謹慎処分を食らって数日。自宅から出る事もなく、特に代わり映えのしない日常を送っていた。勿論、体が鈍らないよう、筋肉トレーニングは続けている。

 やることの無い毬耶は、天井近くに備えた鉄棒に足でぶら下がりながら、腹筋を鍛えていた。


 別に謹慎処分に文句は無かった。

 むしろこの程度で済んだことに、驚きすら覚えていた。正直、事と次第によっては懲戒処分すら覚悟の上だったので、拍子抜けと言えば拍子抜けであった。『新撰組』の子達に対しては、何も罰則が無かった事も喜ばしい。

 咲浪学園長が色々と配慮してくれたお陰であろう。


 それでも学園で学年主任として働いていた慌ただしさが一気に無くなると、暇を持て余してしまうものだ。

 朝からずっと筋トレばかりしているが、良い歳の女が休日に何もすることが無いとは嘆かわしい限りである。謹慎なので休日とは違うのだが、趣味の一つも無い事が哀しいのであった。


 それにしても、とふと考える。

 的場薫を含めて『新撰組』の隊員が全員無事に帰還できて良かった。一ノ瀬優が戦死したという情報も、結局は的場薫が間違えただけであったようだし、天真時雨も後遺症は残ったが生きている。

 何より、的場薫が無事でいてくれて心底安心した。


 さて、そろそろ腹筋にも飽きてきた頃、不意にインターホンのベルが鳴った。

 毬耶は鉄棒から降りるとドアモニターへと面倒くさそうに足を運ぶ。

 自慢では無いが、毬耶の家に訪ねてくるような人物は一人しか居ない。その人物が訪ねてくる可能性は非常に低い為、訪問者と言えば怪しい業者か宗教法人だけである。

 応対も面倒なので居留守でも使おうかとモニターを覗いた毬耶は、ドアに備えられていた監視カメラに映し出された人物に思わず「えっ?」と声を上げて驚いた。

 毬耶は一も二も無くドアへと走ると、施錠を外してドアを開いた。そしてドアの前に立っていた人物を確認するのも束の間、相手の胸ぐらを掴み部屋の中へと引き摺り込んだ。

 再び施錠すると、部屋に引き摺り込んだ人物の唇に自らの唇を重ねた。


「んむ!?」


 そのまま舌を押し入れて、口内を蹂躙するように舐め回す。

 水の跳ねるような音と、毬耶の喘ぎ声が玄関に木霊する。


「ちょ……雨竜……先せ…………」


 毬耶は辛抱堪らず、相手の服を剥ぎ取るように脱がせ始めた。

 その段階になって、相手は不味いと思ったのか、無理矢理に体を引き離した。


「先生! ちょっと落ち着いて!」


「何だ? あ、汗臭かったか?」


「いえ、そうでは無くて…………」


 的場薫は口元を拭いながら、「今日はそういうつもりで来たんでは無いんです」と言った。











「『生徒会チーム』に勧誘された? お前がか?」


 的場薫は湯船に浸かりながら、三科凛子生徒会長と話した内容を語った。

 雨竜毬耶は全身を泡まみれにしながら、薫が話す言葉に耳を傾けている。彼女の健康的かつ妖艶な肢体が泡に濡れている様は、淫らで思わず見とれてしまう。

 そんな薫の視線など意に介す様子もなく、毬耶はシャンプーを手に取ると頭に垂らし髪を洗い始めた。


「あの生徒会長は何だかお前の事をお気に召している様だな。ずっと前から。ーーーーそれで、お前はどうする気だ?」


「それは、分かりません。正直、迷ってます」


 本心を告げると、毬耶は「ほう」と言って視線だけこちらへ向ける。


「お前なら、あの三人娘を放って置けないと言って一蹴すると思ったが?」


「けど、僕が指揮官を勤めていたら、彼女達を傷付ける事になると思ったら…………」


「三科に言われた事を気にしてるんだな?」


「僕が未熟なせいで、皆が傷付きました。先生だって、謹慎処分を下されるはめになって…………」


「私の事は気にするな。元より何等かの処分は覚悟の上だったからな。この程度で済んで良かったものだ」


 そこで毬耶はシャワーを手に取り、髪から体から付いた泡を流し始めた。

 その様子があまりに淫らで艶かしく、興奮が込み上げてきた。


 今更だが、何故、薫が湯船に浸かってドギマギしているのか。

 毬耶は汗を流したいと言い出したので、薫は上がってくるまで待つと言った。しかし、毬耶は一緒に入ろうと頑なに誘って来たのだ。


「折角、久し振りに二人きりになれたんだ。片時も離れたくない」


「いえ、でも、僕は…………」


「それにお前から、別の女の臭いがする」


 そう言って生気の無い眼をする毬耶に何とも言えない恐怖心を抱いた薫は、あれよあれよと言う間に全身を隈無く洗われ湯船に放り込まれる事となったのだ。

 普段は厳格でクールな毬耶だが、こと恋愛に於ては情熱的だ。少し行き過ぎる部分もあるのだが、普段、全く恋人らしい事が出来ないのだから仕方がない。


 さて、泡を流し終えた毬耶は、薫と対面するように湯船に入って来た。

 二人分の体が湯船に入った事で、お湯が溢れて流れ出た。

 膝を抱えて狭いバスタブに入っている薫に対して、自ずと毬耶は足を広げる形で入る事となる。毬耶のあられもない姿が、理性とは反して薫の眼に焼き付けられていく。そして狭いバスタブに二人も入ると、自ずと体が接触して彼女の筋肉質ながら柔らかい感触が肌に伝わる。


「それで、何で私にそんな話しをするんだ? 頼ってくれるのは嬉しいが、これはお前が決めなければならない事だろう?」


 ドギマギする薫を他所に、毬耶は話しを続ける。

 薫は努めて冷静を装い答える。


「さっきも言いましたけど、自分でどうしたいのか分からないんです。皆を傷付けない為に『生徒会チーム』に編入し、自分を鍛え直すのは大変魅力的なのですけど、やっぱり彼女達を裏切るような真似はしたくありませんし。けど、僕が居なくなれば、彼女達は新しい部隊に配置変えしてもらえるし…………」


 もしかすると、その方が彼女達の為になるのかも知れない。

 すると毬耶は朗らかに笑み、「何だ、そんな事か」と言った。


「それはお前がどうすればベストなのかで迷っているだけで、どうしたいのかでは無いんじゃないか? お前らしいと言えばお前らしいがな」


「え?」


「もう一度考えてみるんだ。小難しい損得なんて無視して、お前がどうしたいのか。お前が本当にやりたい事は何なのか」


 確かに毬耶の言うとおり、薫は周りの為になる選択肢を模索していただけで、自分がどうしたいのか考えていなかった。

 もし、許されるなら、我が儘を通してみるとするならばーーーー


「答えは直ぐに出る筈だ。自分に正直になれ、薫」


 言いながら毬耶は顔を近付けて来て、薫の唇にキスをした。

 たまにこういうシーンを無性に書きたくなるのです。

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