第四話
突撃、『新撰組』!
爆発と共に倉庫のシャッターが崩壊し、大きな穴が空いた。
その穴から、一ノ瀬優が突入する。
「あれ?」
ふと時雨は、ブリーチングチャージを設置した事を一ノ瀬優が報告しなかった事に気が付いた。これは小隊長である的場薫の胃に、深刻なダメージを与える事になっただろう。
けど、後の祭りだ。
今はこの任務を成功させる為、尽力するのみ。
時雨は自身の『適性銃器』である『Buddy-89』突撃銃を備え穴に飛び込んだ。
「『新撰組』だ! 大人しくしろ!」
時雨は声を大にして叫ぶ。
名乗りを上げる時の気分は、まるで幕末京都の“池田屋”に飛び込む『新撰組』隊士だ。
既に内部は銃弾飛び交う戦場と化している。
当然、倉庫内の人間は大人しくなどしない。
大人しくしたところで、『不死人化』した時点で生き残れないと悟っているからだ。後、凶悪な戦闘狂が暴れまわっているからでもある。
時雨はバリケードになりそうな障害物を探し出し、そこへ飛び込むとセレクターを三発バーストに設定する。
「この政府の犬共が!」
暴力団組員の一人が、拳銃をこちらへ向けて発砲してくる。
焦る事は無い。
バリケードが銃弾を防いでくれるので、時雨はその縁から銃口を覗かせ銃撃するだけだ。
『Buddy-89』突撃銃。
豊和工業が製造した『89式5.56mm小銃』をベースに造り上げられた『適性銃器』である。黒いフレームに固定式ストック、本来備えられていたバイポットはオミットし、代わりに専用の銃剣を装着した事で、元“自衛隊”の装備とは思えない攻撃的な見た目となった。専用弾は『89式実包』を改造した『5.56mm対不死人弾』である。
時雨は光学アイアンサイトの光点を敵の頭部に合わせ、発砲する。
『5.56mm対不死人弾』が撃ち放たれ、暴力団組員の額に風穴を空けた。組員は脳奬を撒き散らすと、崩れ落ちるように倒れ死体となった。
奥の方では一ノ瀬優が、アクロバットな動きで敵を牽制している。
注意を逸らしてくれているのだ。
時雨は慎重に狙いを定め、銃撃していく。
的場薫は裏口から逃げようとする御一行と、鉢合わせしていた。
「連邦政府軍だ! 全員、武器を捨てろ!」
そう警告したところで、聴く筈が無いのは分かっていた。
宣告するや否や、薫は真横に飛び同時に敵の頭上へ成形爆弾を投げる。リモコン式爆弾は、薫がスイッチを押すと共に爆発。周辺に居た敵兵は、燐等の鉄粉により超高温に加熱した焼夷弾をくらう事となった。
燃焼爆弾は、悲鳴や涙までも炎により燃やしてしまう。
“Dust to dust”
塵は塵へ。
死体を焼却して何が悪い、と薫は内心で悪態を吐く。
「火葬だ、この野郎!」
物陰に隠れ燃焼を防いだ薫は、声を大にして叫んだ。
それは頭の痛みを誤魔化す為でもあった。
刹那、全身に悪寒が走る。
何事かと周囲を見渡す内に、倉庫の天井付近で破壊音が響いた。
クララ・クラーク・クランは、のんびりとしていた。
クララは今、目的の倉庫が見えるコンテナの上で腹這いになって、ドローンが映し出す監視映像を眺めている。“クローキングデバイス”、通称“クローク”という透明化システムにより、クララはカメレオンのように完全にコンテナの色と同化しているので、滅多な事ではバレやしない。
圧倒的に有利な展開だ。
敵の錬度は相当に低く、一ノ瀬優の攪乱にまんまと引っ掛かっている。その間に、時雨がバリケードから狙撃を行い殲滅するという、まるで教科書通りの展開に嘆息すら漏れる。
「狙撃、要らないかな」
裏口は裏口で、的場薫が派手にやっている。
本人はまともなつもりでいるだろうが、『新撰組』の中で一番に大胆なのは彼である。名誉の為に誰も口にしないが。
そんな彼だからこそ、クララも一ノ瀬優も時雨も纏められるのだ。
「…………ん?」
ふと、銃撃戦のど真ん中で不振な動きをする『不死人』が居ることに気付いた。
「こちらライトニング。イージス、十一時方向の男に注意。妙な動きをしている」
急いで通信網を開いたが、少し遅かったようだ。
『不死人』はスーツの内ポケットの中からピストル状の注射器を取り出し、それを自分の足に撃ち込んだ。
瞬間、男の皮膚が漆黒に染まり、背中には悪魔のような翼が生えた。
顔は目も鼻も潰れ、代わりに口が縦に割れ額にまで広がる。
おぞましい化物。
あれこそ『不死人』の第二形態。所謂“変異種”である。
変異種は咆哮を上げるように縦に割れた口を広げると、一気に跳躍した。
同時に倉庫の天井が一部崩れ、ドローンのカメラに映っていた変異種が飛び出して来て肉眼で確認出来るようになった。
変異種は、その悪魔のような翼を羽ばたかせ、夜空を舞っていた。
逃げるでも襲うでも無く、まるで空を飛ぶことが楽しいとでも言わんばかりに、同じ場所をクルクルと飛び回っている。
クララは『適性銃器』である狙撃ライフルのテレスコピックスコープを覗く。
大きく息を吸い、止める。
スコープの十字レティクルに化物が重なる瞬間を狙い、トリガーを弾く。
鈍い銃声と僅かな反動が腕と肩を通して全身に響く。
放たれた『7.62mm 対不死人弾』は、一直線に、けれども僅かな弧を描きながら、化物の頭部を撃ち貫いた。
近未来的な戦闘模様を描きたかったのですが、まぁこれはこれで良いですよね?
取り敢えず、女の子が強い的な印象を与えれれば、万事OKです。




