幕間
優雅な休日。
テレビから流れるニュースキャスターの声をバックグラウンドミュージックに、総督を名乗る青年はぼんやりと天井を見上げていた。
ベッドに寝転がり、ただ呆然と天井を見上げる。
休日は大体、こうして過ごしていた。
「総督、生きてる?」
ふと女性の顔が視界の中に入った。
土気色をした面持ちに赤い切れ長の瞳が、彼の視界を埋め尽くす。彼女から垂れ下がる金色の長髪が、頬をくすぐった。
彼女の吐く息は、少しアルコールの香りを帯びている。死臭を誤魔化す為に、酒を飲んだのだろう。
「生きてますよ。死んでるとでも?」
「さっきからその格好で動かないから」
「死んでいるのは、貴女の方では?」
「フフッ、そうね」
彼女は悪戯っぽく微笑むと、彼の唇に自らの唇を押し当てる。
束の間の口付け。
ゆっくりと唇を離した彼女は、うっとりとした眼差しをし彼の隣に寝転がった。そして甘えるように彼の腕にしがみつく。
「何か見えるの?」
「色々と。色々と、ね」
彼は彼女の肩を抱きすくめた。
死後硬直したような氷のように冷たい肌は、火照った体に丁度良かった。
「彼がどうしてるのか、とかね」
「あぁ、今は復興都市に居るのよね?」
「えぇ、部下を一人失ったようで。慟哭が伝わってきます」
「それは大変。慰めてあげなきゃ」
女性は彼の頬に手を当て、「良い子良い子」と優しく撫でる。
彼は馬鹿にされているようで、少し表情を堅くした。
「僕はそんなに子供じゃ無いです」
「フフッ、怒ったかしら?」
「怒りません。僕が本当に怒ったら、貴女を無茶苦茶に犯してますよ」
「あら、それは楽しそうなのに、残念」
おどけるような口調とは裏腹に、女性はさも残念そうに溜め息を吐いた。
「それで」
「へ?」
「アレーネは、何処まで生きられるかしら?」
まるで世間話をするように、女性は同僚の生死について問い掛ける。
「僕の忠告を聞いていれば、無事に逃げ仰せたものなのですが」
「無視しちゃったんだ?」
「えぇ、伝書鳩には無駄足を踏ませてしまいましたよ」
彼は肩をすくめる。
申し訳ない、とは思っていない様子だ。
「彼女は死にます。それも犬死にです」
「少し勿体無いわね。あの子、従順に『アンデッド』と『RED SHOT』を生産してくれてたのに。今時、珍しいタイプの『不死人』よ?」
「仕方ありませんよ。何せ、彼の地雷を踏み抜いてしまったのですから。彼女だけでなく、あの施設の『アンデッド』は分け隔てなく掃討されるでしょう」
「けど、一人死んでるから残り四人でどうやって追い詰めるの? ちょっと無理じゃ無いかしら?」
「普通なら、ね。けど、彼は普通じゃ無いから」
女性は彼の言葉に、「あぁ、そうだったわね」と得心したように言った。
「もしかすると、彼女も現れるかも知れません。そうなると、酷いことになりますよ」
彼は懐かしむような笑みを浮かべた。
対照的に、女性はムッと唇を尖らせる。
「また彼女? 昔の女がそんなに良いの?」
「彼女は特別だったから。嫉妬しないで下さい」
「別に嫉妬なんかしてません」
彼は苦笑すると、女性の頭に手のひらを置いた。
「心配しなくても、今は貴女だけですよ」
そんな臭い台詞を吐いていた。
何と無く書いた幕間の物語です。




