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Outlaw Gunners ーハーレム小隊の憂鬱な日々ー  作者: 梨乃 二朱
第四章:一ノ瀬優の暴走
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第八話

 処刑する者。

 雨竜毬耶は眉をひそめた。

 それは毬耶らが、敵勢力を圧し一階ロビーまで侵攻した頃の事だった。

 先程まで強固に反撃していた敵兵が、まるで潮が引くように銃撃を止めて退いていくではないか。


「何だ?」


「私らの実力に恐れを為した、とかじゃ無さそうだな」


 天真時雨も警戒するように一段下がる。


「罠か?」


「もうどっぷりハマってしまってるとか?」


 クララも敵の様子が変わった事に気付いたらしく、こちらと距離を詰め言葉を交わす。

 その内、ロビーから人気が完全に無くなってしまった。


 不気味な静寂が、ロビーを支配した。

 だが、それも束の間の事だった。

 突如、それは現れた。

 何か金属製のモノを引き摺る鈍い音を響かせながら、それはゆっくりと姿を現せる。


「何だアイツは⁉」


 最初に声を上げたのは毬耶だった。

 他の二人は警戒の色を濃くしながら、それをじっと観察している。

 それはロビーと別の病棟を繋ぐ廊下を、ゆっくりと闊歩していた。

 体長二メートルは優に越える大男。

 全身をローブ状の赤黒い皮で覆われ、頭には丸い二つの穴が空けられた三角形の頭巾を被っている。その穴の奥には、赤い双眸が妖しく煌めいていた。

 更にローブの端から覗く巨躯は真っ黒で、赤い筋が脈動するように明滅を繰り返している。

 容貌だけでも十分に恐ろしいが、それよりも恐怖を感じさせるのは、大男が引き摺る巨大な肉切り包丁だった。それだけは他とは違い、銀色の刀身を威圧するように鈍く光らせている。


「変異種だ。デッカイ包丁持ってる」


「差詰め“処刑人(ブッチャー)”と言ったところだな。名前はそれにしよう」


 天真とクララが冷静に斜め上な分析をする。

 毬耶はと言うと、その余りに悪魔的な異形に恐怖を抱き身をすくませていた。


 やがてその大男、天真が名付けるところの処刑人がロビーへ到着する。

 処刑人はゆっくりとロビーを見渡す。

 まるで獲物を探すような、それでいて鈍重な挙動である。

 処刑人の赤い眼差しが、毬耶、天真、クララを見定める。三人はバリケードに身を隠す事無く、ただ呆然と立ち尽くしていた為に処刑人と視線を交える事となった。


 しかし、処刑人は行動を起こそうとしない。襲い掛かるわけでもなく、ただ三人と視線を交えるだけである。

 そして三人を見詰めるだけ見詰めていると、ふと視線を斜め下へ向けた。足下である。


「う……あぁ…………」


 処刑人の足元には、虫の息となった『不死人化』した兵士が転がっていた。

 誰かが撃ち漏らした敵兵であろう。それでも銃創が『コア』へ影響を及ぼし、瀕死の重傷を負わされていて、動くことも出来ず味方にも見捨てられ逃げ遅れたようだ。


 処刑人は、その兵士の頭部へ左手を伸ばす。

 左手は兵士の頭を掴み、意図も容易く持ち上げたのだった。

 何をするのか固唾を呑んで見守っていた毬耶は、次の瞬間、思わず漏れ出ようとした悲鳴を噛み殺す事となった。

 何と処刑人は、虫の息となった兵士の胸元に包丁の切っ先を向け、静かに突き刺したのだった。


「■■■■■ーーーー!」


 兵士の声にならない悲鳴が、毬耶の鼓膜を震わせる。

 処刑人の行為はそれだけに終わらず、包丁を一度引き抜いて、再度また包丁を突き刺した。

 それを何度も、何度も、何度も繰り返し、やがて切り開けられた腹部から内蔵がゴロゴロと床に落ちる。


 残酷なのは、それで兵士は事切れないという事だった。

 瀕死の状態でも兵士は『不死人』だ。

 『コア』を破壊されない限り、どんな重傷を負っても死ぬことは無い。

 『適性銃器』に備えられた銃剣による刺突なら話は別だが、あれは単なる『不死人』の持つ包丁に過ぎない。決して、『不死人』を殺すように造られた特殊錬金素材の刃物とは違う。


「やめ……てくれ…………」


 最後に、処刑人は包丁を胸に深く突き刺し、一息に振り下ろした。

 兵士は体をほぼ真っ二つに切り裂かれ、処刑人の手から離されて床に転がり落ちた。


 ここまでして、処刑人は何も言葉を発する事は無かった。

 ただただ作業をするかのような挙動で、兵士を痛め付けていたのだ。


 兵士はどうなったのか。

 勿論、虫の息のまま生きている。

 何度も言うが、『コア』が破壊されない限り死ぬことは無いのだ。


 いや、敵の心配をしているの場合では無かった。

 処刑人の眼差しが、毬耶らに向いた。

 次の獲物を見付けたと言わんばかりの赤い眼光に、毬耶は身動き一つ取れなかった。

 恐怖に身がすくみ、動けなかったのだ。


「集中射撃!」


 しかし、クララ・クラーク・クランと天真時雨は違った。

 彼女らはあの残虐行為を目の当たりにした後だというのに、何事も無かったかのように銃撃を開始したのだ。

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