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Outlaw Gunners ーハーレム小隊の憂鬱な日々ー  作者: 梨乃 二朱
第四章:一ノ瀬優の暴走
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第一話

 少女を追って。

 復興都市と言う名目をしているが、ウォビエラは未だに戦争の痕跡が色濃く残されている。

 倒壊した家屋。

 爆撃により出来たクレーター。

 破壊された主要道路。

 帰る場所を無くした人々。

 戦後三年の月日が経とうと、戦闘により壊されたモノを修復するにはまだまだ時間が足りないようだった。


 治安も悪い。

 毎日のように犯罪が勃発し、それを諌める法執行機関が正常に機能していないと来た。町はさながら無法都市の様相を呈している。故に自らの身は自らで守らなければならない為、住人は拳銃どころかライフルを堂々と備えて歩いている。


 それもゲートと呼ばれる巨大な間仕切りの内側の話だ。

 ゲートの外側は本当の無法地帯。

 ゲートより向こう側は、『反人類統一連邦政府組織フリークス』が未だに支配する地域で、戦後にも関わらず『不死人(アンデッド)』が平気で闊歩している。

 人はその場所を『ダークゾーン』と呼称する。


 どうやら一ノ瀬優は、たった一人で『ダークゾーン』に向かってしまったらしい。

 もう一度言うが、『ダークゾーン』には『不死人』が我が物顔で徘徊している。例え『ガンスリンガー』と言えど、人間の女の子が気楽に歩き回って安全な場所では無い。


 的場薫ら『新撰組』は戦闘準備もそこそこに、一ノ瀬優の後を追うようにウォビエラ基地を出発。軍用ジープで復興都市の整備の行き届いていない道を駆け抜ける。

 一ノ瀬優はバイクで飛び出したようで、間に合うかは一か八かの賭けであった。


 そもそも、何故、一ノ瀬優は単独で基地を飛び出したのか。

 天真時雨の話によると、事は一時間前に遡る。

 二人は前の任務で入手した情報の解析を行っていたそうだ。主に解析は時雨が行っており、一ノ瀬優は暇を持て余した結果、自分の手柄を確認すべく時雨のもとを訪れたらしい。

 お分かりだろうが、情報というのは一ノ瀬優が発見した隠し金庫の中身だ。


 あの金庫の中には、驚きべき物が隠されていた。

 それは多くの子供達の写真と名簿の数々だった。後は暗号化されたノートパソコンが納められており、時雨はそのパソコンの解読を担当していた。

 その解読結果を知るや、一ノ瀬優の様子が可笑しくなったという。


「一体、どういう内容だったんだ?」


 後部座席に納まる薫は、助手席に座る時雨へ問い掛ける。

 運転は雨竜毬耶女史が担当している。

 クララ・クラーク・クランが運転すると言い出した時は、流石に焦った。怪我を理由に何とか雨竜女史へ運転権を譲渡させられたが、もし彼女が運転していれば目的地点に着く前に車酔いで死んでいたかも知れない。

 因みに怪我というのは胸部の打撲なのだが、本人は全く意に介していない。


 それはさておき、研究の内容である。

 一体、一ノ瀬優の様子が可笑しくなる研究内容とは如何なものなのか。


「何の事は無い。戦災孤児を使った人身売買だ」


 淡々とした口調で言いながら、時雨はタブレット型端末を操作し薫に差し出した。

 そこには人身売買内容が事細かに記されていた。


 目を覆いたくなる内容だった。

 戦災孤児、つまり戦争の影響で親を亡くし生活に困窮した子供達を集め、『フリークス』に売り渡すというものだった。『不死人』を造る為の材料として、身寄りの無くした子供達が利用されているのだ。

 他にも売春を強要されたり、臓器売買等にも利用されていると記されていた。


 珍しい話では無い。

 戦後の動乱期には、よくある話だ。

 自分の生まれ落ちた場所が違えば、薫だってこの名簿に名前が記されていたかも知れない。

 そんな僅かな違いしか無いのだ。


 しかし、一ノ瀬優はその些細な差を許せない。

 いつだったか、児童売買の組織を偶然にも発見してしまった時、彼女は自らの危険も省みず敵陣に飛び込んで行った。

 人身売買、主に児童の事となると理性のたがが外れ、暴走する傾向にあるのだ。


 それには彼女の過去に起因するものがあるのだろう。が、それを薫は知らない。

 小隊長と言えど、流石にメンバーの経歴まで調べられるわけではない。所詮は十代の子供に、そんな重要な情報は渡せないのだろう。

 彼女の過去に何があったのか。

 気にはなるが、そんな場合では無い。


「時雨、イチの居場所はモニター出来てるのか?」


「バッチリだ。あいつのパワードスーツの反応から位置は把握できている」


「早くしないと、あいつは敵の拠点に乗り込んでしまうぞ」


 焦燥する雨竜女史。

 しかし、薫を含めた『新撰組』のメンバーはさほど焦ってなどいなかった。

 何故なら、これが初めての事では無かったからだ。


「大丈夫ですよ、雨竜先生。イチはそう簡単に殺られるようなタマじゃありません」


「何?」


 薫はディスプレイに表示される一ノ瀬優の位置情報を、その行動を観察しながら言葉を紡ぐ。


「イチは勉強は苦手としてますけど、馬鹿ではありません。戦馬鹿ではありますけど。まぁ、そう正直に真っ直ぐ突っ込むような真似はしませんし、この前の僕より上手くやるでしょう。彼女は、そういう女の子です」


「何だそれは? まるで前にもあったかのような…………」


 そこで気が付いたのか、雨竜女史はバックミラー越しに薫を見やる。


「まさか、あったのか?」


 この問い掛けには答えず、薫は隣に座るクララへ顔を向ける。


「行けるか、クララ? 傷の具合は?」


「こんなの怪我の内に入らない」


 クララは無表情に答えた。

 彼女は銃弾を腹部に受けている。

 小口径で距離があり、更に防弾ベストを着込んだ状態での被弾であった為に外傷は小さいが、打撲程度の怪我をしている。

 本人が大丈夫というなら大丈夫と信じたいが、万が一の為、あまり前には出さないで置こうと薫は思った。


「よし、『新撰組』諸君! 敵拠点を陥落させるぞ!」


「な、何!?」


「了解!」


「ヤー」


 薫の宣言と共に、四人を乗せたジープはゲートへと辿り着いた。

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