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Outlaw Gunners ーハーレム小隊の憂鬱な日々ー  作者: 梨乃 二朱
第三章:『新撰組』の捜査
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第五話

 現場検証。

 頭痛が酷い。

 これはいつもの頭痛とは違う。

 きっとグレネードの衝撃を真正面から受け止め、物の見事に気絶した事による後遺症だろう。ついでに言うと、全身が鉛のように重たい。しかも痛い。

 まぁ、助かっただけでも儲けものだ。

 そもそも、何故グレネードの爆発を間近で受けて無事だったのか。

 それは天真時雨が造ってくれた義手のお陰である。


 この義手、ただの義手かと思いきや、彼女の趣向を凝らした魔改造が施されていた。

 端的に言うと、エネルギー兵器が実装されている。

 詳しい構造は分からないが、それは薫の声帯認証で思うがままの形に変化するようプログラミングされているそうだ。故に今回は、“バリスティックシールド”の形に展開し、爆発の衝撃を防いだのだ。


「流石は我が隊切っての技術者だけど、人の腕に何てことを…………」


 的場薫はまた違った意味で頭痛を覚えながら、時雨から貰った氷嚢を頭に当てつつ地獄絵図のような現場に足を踏み入れた。銃撃戦の現場は、どこも酷い有り様だ。警察の鑑識は、まだ入ってきていない。


「カーチャ・ザレコフだが、確保に失敗した」


 死体がオフィス一杯に散乱し、壁や床に飛沫血痕をこしらえた現場に入ると、苦い顔をした雨竜女史が申し訳なさそうに口を開いた。

 どうやら薫が気絶している間に、全て事が終わってしまったようだ。五分ほどしか倒れていなかったが、彼女らにはそれだけで十分だったらしい。


「一度は捕らえたが、狙撃された。今、クララが狙撃手を追っている」


「そうですか。それで、こちらの被害は?」


「え? あ、あぁ、被害は無い。お前以外はな」


 「成る程」と頷き、オフィス内を見回す。

 壁際に並べられた書類棚を、一ノ瀬優が物色しているのが見えた。


 任務の正否より、小隊に被害が無かった事の方が重要だ。

 因みにクララが狙撃手を追っていると聞き、時雨を援護に回してある。二人がかりなら、心配する必要は無いだろう。


「口封じ、ですか?」


 薫はデスクに突っ伏す形で亡くなった女性、カーチャ・ザレコフの遺体を観察しながら問い掛ける。

 仕事柄、死体は見慣れている。

 動いているのも動いていないのも、慣れたものだ。


「その可能性が高い。この女は、何か口にしては困ることを知っていたのだろう」


「死ぬ前に、何か言ってましたか?」


「“総督”って奴から『RED SHOT』を仕入れていると言っていた。それ以外は何も。死人に口無し、だ」


 つまりは大した情報を手に入れる隙無く、見す見す被疑者を殺害されてしまったという事か。

 薫は未だに痛む頭で理解し、そっと死体から離れた。慣れていると言えど、いつまでも見ていられるものではない。


「おい、隊長! ちょっとこれ!」


 不意に一ノ瀬優が声を上げた。

 薫と雨竜女史は、弾かれたようにそちらに目をやる。一ノ瀬優が書類棚の中を引っくり返した惨状があった。


「何やってんの?」


「いや、何かさ、ここの壁に違和感あってさ」


 彼女は興奮気味に書類棚の後ろの壁を指差す。


「んで、ここの中身全部出したら、何が出たと思う?」


 唐突のクイズ。

 これは、答えなければならないのだろう。


「『RED SHOT』?」


「『アンデッド』?」


 薫が答えると、雨竜女史も言葉を口にした。

 しかし、どちらも不正解らしく一ノ瀬優は頭を振る。


 そして「見よ!」と一歩横にずれる。

 彼女の体で隠れていて見えなかったが、棚の真ん中にテンキーを備えた小さな扉が埋め込まれていた。彼女はこれを見付けて、童心をくすぐられたようだった。


「隠し金庫か。ーーーーやったね、イチ。よく見付けたね」


「だろ? やっぱ俺って天才?」


 腕を組み尊大に振る舞う一ノ瀬優。

 褒められたのが嬉しかったのだろう。

 天才と何とかは紙一重、と口にしそうになったが、危うく言葉を呑み込んだ。


 それにしても隠し金庫とは、またベタな物が出てきたものだ。

 およそ、『RED SHOT』か何かが保管されているのだろう。あるいは『RED SHOT+』かも知れない。


「開けるにはパスワードが必要だな。天真を呼び戻せばーーーー」


「開いたぞ」


 雨竜女史の声を遮り、一ノ瀬優は難なくパスワードを解いてしまった。

 唖然とする雨竜女史。

 無理もないだろう。

 まさか銃撃魔と揶揄される一ノ瀬優が、電子ロックの解除という頭脳派な行動を取るとは思いはしまい。


「どうやって開けた⁉ 壊したのか!?」


「人聞きの悪い。勘で何とかなるんだよ、こういうのは」


 一ノ瀬優の説明に、雨竜女史は唖然を通り越して頭を抱える。

 技術屋泣かせとはこの事だ。

 実際、一ノ瀬優はパスワード等の暗号解読に特異な才能を持つ。自転車等に付けるチェーンロックの解除も、彼女なら一分も掛からない。

 曰く、勘で何とかなるらしいのだが、恐らくは無意識に手垢やら色褪せやら傷やらを認識して文字を頭の中に浮かべるのだろう。

 自分でも気付かない、優れた観察眼の持ち主なのだ。


 そんな間にも、一ノ瀬優は金庫を開けてしまった。

 罠があるとも知れないのに、よくもまあ簡単に扉を開いたものだ。


「…………何だこれ?」


「どうした?」


 薫は一ノ瀬優の肩越しに扉の中を覗き見た。

 刹那、思わず「あっ」と声を漏らしてしまった。雨竜女史も同じく中を覗き見ると、「これは…………!?」と声を上げた。

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