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Outlaw Gunners ーハーレム小隊の憂鬱な日々ー  作者: 梨乃 二朱
第三章:『新撰組』の捜査
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第三話

 俺達のやり方。

 爆煙の立ち込める路地裏に、折り重なる様に倒れる二人の姿を見付けた。

 見たところ怪我をしてる様子は無く、勿論、死んでもいない。奇跡的に無事そのものだ。


 しかし、一ノ瀬優の表情は浮かなかった。

 何故か。

 それは本人に問い掛けても分からないだろう。ただ言えることは、優の機嫌を損ねている原因は的場薫にある。


 的場薫は、雨竜毬耶の上に倒れていた。

 庇ったのかどうしたのかは知らないが、そういう構図である。

 だが、何故そうなったのか、的場薫の頭部は何故か雨竜女史の、その豊満な胸元に埋もれているのだ。二人はそのままの状態で固まっていた。

 それが気に入らないとは、果たして優は理解したのか。


「何か、ムカつくな…………」


 分けの分からない苛立ちを紛れさせる様に、優は階上の踊り場目掛けて数発撃ち込んだ。

 丁度、様子を見に出てきたチンピラの胸部に穴を穿った。

 それを確認するもそこそこに、二人の元へ歩み寄る。


「いつまでそうしてるんだ? さっさと離れろよ!」


 怒鳴り付けながら的場薫の首根っこを引っ掴み、雨竜女史から引き剥がす。

 ぐでんっと、その身体は力無く揺れる。


「痛ッ……何だったんだ、今のは…………?」


 対照的に雨竜女史は元気そうだった。


「ッ!? 的場、どうした⁉」


「目ェ回してやがる。爆発の衝撃をまともに食らったんだろうな」


 医者では無い優だが、的場薫の容態は分かった。

 本当に爆発の衝撃を食らっていたら即死だったろうが、何か衝撃を和らげる防壁となる要因があったのだろう。が、それでも気絶してしまうほどの衝撃を食らったようだが。

 やはり、雨竜女史を守ろうと自らが盾となったのだろう。


「馬鹿な奴だ」


 呟き、優は的場薫を近くに下ろして壁に凭れ掛けさせた。

 そして天真時雨に通信を開く。

 彼女は現在、避難誘導に当たっている筈だ。


「インパルスよりイージス、聞こえるか? 直ぐ路地裏に来い」


「こちらイージス! この馬鹿め! 現場は大混乱だぞ! そんな暇あるか!」


 誘導に手間取っているのか、怒り心頭の声がインカムから聞こえてきた。背後から悲鳴や怒声が聞こえてくる。

 優は気にせず言葉を続ける。


「隊長が気絶している。診てやってくれ」


「何!? それを先に言え! 直ぐに行く!」


 告げるや、一方的に通信は途切れた。

 「さて」と優は、『適性銃器』のセレクターの位置を確かめながら雨竜女史を横目に見る。


「手伝って貰うぜ、雨竜ちゃん。少なくとも、“俺らの隊長”を怪我させた分は」


「…………ッ、分かっている!」


 指導者としてのプライドを傷つけられたのか、雨竜女史は拳銃を構えながらばつの悪そうな顔をした。

 優は気にせず、階上に続く階段へ足を掛けた。










 ドアを蹴破り、続けざまにフラッシュグレネードを室内に投げ込む。

 グレネードが床に転がった刹那、激しい閃光と騒音が室内を蹂躙する。


「突入!」


 毬耶は声を大にして叫び、率先して飛び込む一ノ瀬優に続いて室内に足を踏み入れた。

 その先は一フロアを余すこと無く利用しただだっ広い事務所であり、簡素なデスクと椅子が整然と置かれている他に、棚や調度品があるだけの質素な部屋だった。

 そこに総勢七人の兵士、というより暴力団組員が点在していた。全員、視覚と聴覚と三半規管を奪われた状態でのたまっている。


 毬耶は『適性銃器』であるスライドが白くグリップが黒い配色の『SIGUMA.45』自動拳銃を両手に構え、敵を捕捉する。

 『SIGUMA.45』は『S&W社』が1994年に発売したポリマーフレーム製の自動拳銃『SIGUMA 40F』を元に造られた『適性銃器』である。

 外見、内部メカニズムがポリマーフレーム製拳銃の先駆である『グロック 17』に酷似している為、『S&W社』は『グロック社』に“デッドコピーである”と告訴され、かなりの高額な和解金を支払う事になった経緯がある。

 いろいろ酷評されるシグマだが、グリップデザインは良く、グリッピングの良さは評判であったという。

 専用弾は『.45対不死人弾』である。


 突入した時点で七人中三人は一ノ瀬優が撃破していた。

 残る三人を手早く片付け、最後の一人であるチャイナドレスを着たロシア系の女を捕縛すべく行動する。と言っても、フラッシュグレネードの影響で朦朧としている女を取り押さえるのに、さほどの苦労は無かった。


「連邦政府軍だ! カーチャ・ザレコフだな⁉」


 毬耶は女の腕を捻り上げ、デスクに上体を押し付ける。


「クソッ! 誰だテメェら!」


「連邦政府軍だと言っている! 大人しくしろ!」


「政府の犬が! 私に触れるな!」


 カーチャ・ザレコフは取り押さえられているというのに、なかなか抵抗を止めなかった。

 その内、焦れた一ノ瀬優が歩み寄って来た。


「『RED SHOT』を何処で手に入れた? 大人しくしろ吐いた方が身のためだぜ?」


「誰が言うか! このクソ女!」


「人の上に立つ人間とは思えない粗暴さだな」


 それは毬耶も同感だ、と頷いている内に、一ノ瀬優は驚くべき行動に出た。

 徐にライフルを持ち上げた彼女は、銃床の底をデスクの上に乗っていたカーチャ・ザレコフの手を目掛けて振り下ろした。


「ギ、ァァァァーーーー! アァァァァーーーー!」


 銃床の一撃にカーチャ・ザレコフの指は砕かれ、断末魔のような悲鳴が上がった。


「一ノ瀬! 貴様、何をしている!?」


「何って、容疑者が危険な行動を取ったから抵抗しただけだぜ?」


「こんな、そんな理屈が通るか!」


「ハイハイ、ちょっと黙ってろよ雨竜ちゃん。これが俺達のやり方だ」


 そう言うと一ノ瀬優はもう一度銃床を叩き付け、今度は手の甲を砕いた。

 また痛々しい悲鳴が事務所に木霊する。


「さっさと答えろ。『RED SHOT』を何処で手に入れている? お前が造っているとは思えないんだよ。答えないというなら、次はーーーー」


 喋りながらライフルを持ち上げる一ノ瀬優。

 今度は銃床では無く、反対側の銃口をカーチャ・ザレコフに向ける。これに恐怖した彼女は、「総督だ!」と声を張り上げた。


「総督だと?」


「そうだ! 総督って奴から送られてくるんだ! 私はそれを捌いているだけだ!」


 “総督”。

 その名前は、天真時雨が作成した報告書にもあった。『フリークス』の親玉のような存在かも知れない。


「総督ってのは何者だ! 何処に居る⁉」


「し、知るかそんなこと! 毎月決まった場所に物が運ばれてくる! 私はそれを受け取るだけだ! ーーーーお前ら、こんなことをしてただで済むと思ってるのか⁉」


「ハンッ、知ったこたぁ無ェ! テメェこそ嘘吐いてりゃあ、どうなるか分かってんだろうな?」


 そう告げる一ノ瀬優の瞳に、狂気の色が過ったのを毬耶は見逃さなかった。

 同時にライフルの銃口をカーチャ・ザレコフの頭に押し付けた事で、予感は確信に変わった。


 一ノ瀬優は、この女を殺すつもりでいる。

 理由や目的は不明にせよ、彼女は殺人という行動に一抹の躊躇も無い。


 危険だ、と判断するのに時間は掛からなかった。

 愚行を止めるべく口を開き掛けたその時ーーーー


 ビチャッ


 まるで、ケチャップでもぶちまけたかのように、デスクの上が赤く染まった。

 気付けばあれほど抵抗していたカーチャ・ザレコフの身体は、糸の切れた操り人形の如く動かなくなっていた。その頭部には、コイン程の穴が穿たれていた。


「一ノ瀬、貴様、何て事を…………!」


 あまりの事態に怒鳴り声を上げる毬耶。

 しかし、銃弾を放ったであろうライフルの主の一ノ瀬優は、まるで信じられないという様に唖然としていた。


「お、俺じゃ無い…………」


「何ーーーー!?」


「銃声、しなかっただろう? 俺は撃っちゃいない」


 確かに彼女の言うとおり、この至近距離であるにも関わらず、銃声どころかライフルの駆動音すら聞こえなかった。

 それに銃創も、ライフル弾が貫通したにしては小さい。


 カーチャ・ザレコフを殺したのは一ノ瀬優では無い。

 ならば、一体誰が殺したのか。


「狙撃したのか…………?」


 その可能性が一番高い。

 しかし、狙撃ポイントに有効な場所は、クララ・クラーク・クランが押さえている筈だ。その彼女から何の連絡も無いというのは、どういう事か。


 毬耶はデスクに突っ伏す形で死に絶えた女を見下ろす。

 方法は分からないが、動機は明白だ。


「口封じだな…………」


 そう、カーチャ・ザレコフは何か重要な事案を知り得ていて、それが漏れることを恐れた何者かが口封じの為に射殺した。

 それだけは明快に理解出来た。

 一ノ瀬優という名前は、ただ単に登場人物に“イチ”と呼ばせたかった為に一ノ瀬という名字になりました。

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