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Outlaw Gunners ーハーレム小隊の憂鬱な日々ー  作者: 梨乃 二朱
第三章:『新撰組』の捜査
26/63

前置き

 何処かの戦場。

 左腕の義手が正常に動作することを確認した的場薫は、『Outlaw M1894』レバーアクションライフルの上部へ取り付けたACOGスコープを覗き見て、テラスに陣取る敵『不死人(アンデッド)化』兵士を照準器に納める。

 距離百メートル弱。

 月の無い夜間、風速零メートル。

 ナイトビジョンを使用。

 外す要素は零に等しい。


「こちらアストレイ、作戦を開始する」


 刹那、撃発。

 『.45対不死人弾』が乾いた銃声と共に撃ち放たれ、照準器に納めていた敵兵を狙撃した。同時に三つの銃声が轟き、敵兵を順次撃破する。


 敵兵を殲滅した事を確認した薫は、伏せていた茂みから飛び出し屋敷へと駆け寄る。他の三人も同じく屋敷へ取り付いた。

 言うまでもなく、“『新撰組』の三人娘”である。


「手筈通り二手に分かれるぞ。僕とライトニングはキッチンから侵入する」


「了解、私とインパルスは正面玄関だ」


 天真時雨と一ノ瀬優はテラスを迂回し玄関へ回る。

 薫は『適性銃器』を背中へ回し、ショルダーホルスターから一挺の自動拳銃を取り出した。

 『Re.C96』、通称『Re.Mau(リマウ)』自動拳銃。天真時雨が開発した『マウザーC96』のリファイン拳銃だ。


 薫は屋内戦での優位性を考慮して、バレルの長いシングルアクションライフルよりも、取り回しが良く速射が可能な『Re.Mau』を選択した。

 その間にクララがキッチンへの入り口である扉にテープ型の爆薬を設置する。


「爆薬設置。ーーーー爆破する」


 二人が安全な場所へ退避した事を確認したクララは、慣れた手付きで爆薬の起爆スイッチを操作した。

 瞬間、凄まじい爆音と共に扉が吹き飛んだ。

 少し遅れて玄関の方でも爆発音が聞こえた。時雨達も突入を開始したようだ。

 それも念頭に置きつつ薫はグレネードポーチからコンカッショングレネードを取り出し、屋内へ投げ入れる。グレネードは床に転がるや、即座に爆発して衝撃波をキッチン中に迸らせた。


「突入!」


 合図と共にクララが先ず突入し、薫が後に続く。

 コンカッショングレネードのお陰で、外の様子を見に出てきていた敵兵はほとんど死亡していたか負傷しており、制圧には数発の銃弾で事足りた。


「キッチン、クリア!」


「リビング、敵影無し。クリア」


 薫が報告している間に、クララはリビングを警戒してくれていた。

 程無くして「玄関、クリア」と報告が上がってきた。


「よし、そのままパニックルームまで進め。そこで合流だ」


「了解」


「アイサー!」


 二人の声を聞きつつ、クララに目配せをする。彼女は小さく頷くと、リビングと隣の部屋を繋ぐ扉に爆薬を設置した。

 パニックルームまでには大した驚異は無かった。リビングから寝室を抜け廊下に出ると、その最奥が目的の部屋である。そこまでに多少の敵兵と交戦はあったが、ほとんどは玄関から突入した時雨らが片付けてしまっていた。


 パニックルームの扉は鋼鉄で出来ており、並の爆薬ではびくともしないと判断出来た。更にキーロックはデジタル式の網膜スキャナーで、簡単に解錠出来るような代物では無かった。

 だが、それは通常ならばの話だ。

 通常で無いのが、我等『新撰組』である。


「イージス、開けられるか?」


「ちょっと待て」


 時雨は扉の前に膝を着くと、左腕に備えた端末を操作する。

 十秒後。いつもより長く感じた十秒であったが、軽快な電子音と厳かな稼働音を立てて、パニックルームの扉が開いた。


「私に掛かれば、こんな旧式」


 得意気に唇の端を吊り上げる時雨。

 流石は学年一のハッカー。

 こんな電子ロックを解錠するのは、朝飯前と言ったところか。


 薫はクララに廊下を見張るよう指示を出し、他の三人と共にパニックルームへ突入した。

 中に人影も『不死人』の影も無く、裸電球が灯るだけの薄暗い空間が広がっていた。壁際に棚が並び、真ん中にテーブルが置かれていただけの簡素な部屋だった。


「パッケージ確認。確保する」


 しかし、目的の物はそのテーブルの上に置かれていた。

 ガラス壜の容器に入れられた赤い液体。

 お馴染み『RED SHOT』である。

 薫はバックパックから小型のジェラルミンケースを取り出し、ガラス壜をその中に納める。


「パッケージを確保。撤収するぞ」


 そう告げるや、本部へ回収用のヘリコプターを回すよう要請した。










 行きはよいよい帰りは怖い。

 そんな言葉がこの世には存在する。

 正にその通りで、パッケージを回収しキッチン方向から脱出しようとする『新撰組』を待ち受けていたものは、数倍もの敵兵であった。

 『不死人化』した兵士に戦闘用ドローン。装甲車までもが屋敷の庭に陣取り、『新撰組』を待ち構えていた。

 そいつらはこちらの姿を確認するや否や、何の警告も無しに発砲を開始した。


「身を隠せ!」


 薫は声を張り上げながら、冷蔵庫を倒してその陰に隠れた。

 クララも共に居る。

 他の二人も銃弾をかわしながら、それぞれ身を隠す様子を確認した。


「嗚呼、不味いなこりゃ」


 ライフルやマシンガンからなる集中砲火に、薫らは完全に釘付けとなった。

 大小様々な銃弾が、キッチンを容赦無く破壊していく。


 多勢に無勢。

 四人対複数の敵を相手にするには、相当な錬度が必要だろう。

 だが生憎と、こちらはその錬度は十分にあった。この状況を打開するだけの方法は心得ていた。


「イージス、“EMP”を投げろ! 煩い害虫を落とせ!」


「了解!」


 薫の指示と共に、時雨はグレネードポーチから銀色のメカメカしい見た目をしたグレネードを取り出した。

 それを穴だらけとなったキッチンの壁から放り投げる。

 グレネードは空中高くに爆発すると、コンカッショングレネードとは違う衝撃波を生み出し炸裂した。瞬間、空中を旋回していたドローンが、電池の切れたオモチャのように動作を停止し落下した。


 『EMPグレネード』の効力である。

 “EMP”は“electromagnetic pulse”の略称で、要するに“電磁パルス”の事だ。

 電磁パルスはケーブルやアンテナ類に高エネルギーのサージ電流を発生させ、それらに接続された電子機器に過剰な負荷を掛け、一時的に誤作動を起こさせ使用不能とするものだ。核爆発で発生する電磁パルスと同じである。それを軍事用、個人携行用に転用したもの。

 つまり電磁波によって機械を誤作動させ、停止ないし破壊する兵器だ。

 しかし、個人携行武器として運用する為、どうしても装置が小型化に伴い有効範囲が狭まってしまった。

 『EMPグレネード』では、障害物などが何もない平野に於いても五メートル弱が精々である。

 それでも電子機器が横行する現代、それらを停止させる能力を持つ『EMPグレネード』は欠かせない装備の一つであった。


「害虫を駆除!」


「よし、インパルス! 装甲車に『XM25』をお見舞いしてやれ!」


「アイサー!」


「他の者は制圧射撃!」


 早口に指示を下した薫は、冷蔵庫の陰から『Re.Mau』を構え射撃を行う。

 クララと時雨もそれに倣い、敵兵へ制圧射撃を始めた。

 と、ここで問題が起きた。

 薫の自動拳銃『Re.Mau』が、動作不良を起こしたのだ。具体的には、弾が出なくなった。


「ジャムったか!?」


 慌てて状態を確かめるが、特に弾詰まり等を起こした形跡は無かった。どうやら原因は内部構造のようだが、確認している暇は無い。

 時雨が開発した銃器が動作不良を起こすとは珍しい。

 彼女は何事も完璧を求めるので、当然の事ながら拳銃一つにしても命中率も稼働率にしても百パーセントを要求する。

 きっと精神的に不安定な時に造ったから、何かしら不具合が生まれたのだろう。それを薫が責める資格など無い。


 薫は拳銃をホルスターへ戻すと、背中へ回していた『Outlaw M1894』レバーアクションライフルを手に取り射撃を再開する。

 その間に、一ノ瀬優がライフルのバレル下部に取り付けた『XM25』グレネードランチャーから擲弾を発射。それは庭の中央に陣取る装甲車の機銃へ命中、機関部ごと銃座を爆破した。


「敵陣が崩れた! 一気に押し切るぞ!」


「ヤー」


「了解!」


「アイサー!」


 薫の合図と共に、四人は一気にキッチンからテラスへ飛び出した。

 敵残存兵力は『不死人化』軽歩兵のみ。

 数の差では負けていようと、戦力としてはこちらが上回っている。


 一ノ瀬優と天真時雨が全面に出て敵を翻弄。

 クララ・クラーク・クランが敵を各個に狙撃。

 的場薫が全体を見渡し指揮する形だ。

 理想的であろう。

 その甲斐もあってか、敵兵をものの数分で殲滅してしまった。


「クリア」


「クリア」


「クリア」


 三人娘が順次に声を上げる。


「オールクリアだ。警戒を解かず、このまま戦域より離脱。回収ポイントへ向かうぞ」


 こうして『新撰組』は、特に滞る事無く作戦を完了させたのだった。

 勢いで書いてみたのですが、如何でしたでしょうか?

 そんなわけで新章開幕です。

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