No.1 イレギュラー
side朔
神性国家日本。
日本と同位置に存在する裏世界の国のひとつ。
そこに入国できるのは、才能ある人間と政治家だけだ。
才能といっても、演奏家やアスリート、作い家などの才能でなく、オカルティックな、科学じゃ証明できない力の才能の事だ。
そして、神性国家は皆平等等ではなく、ランクの元に平等が決まっている。
S、A、B、C、D、Fと。
この裏日本、皆の目的は、神になること。
現在、三名しかいないS級の者が神見習いとして、仮想世界の神として経験を積んでいる。
そんな国で私は残念ながら“F”だ。
只今、新入国者への説明会を行っている。
本来、この国の花形である“A”ランクの者が行うはずなのに。
“F”ランクは弱者だ。
“C”や“D”が落ちこぼれと呼ばれるのとは違い、“F”ランクは保護対象がいる。“ネクタイ”と“ロイヤル”
住み分けにより、中心部にAから順に地方へと住んでいくのだが、一部のFランクはAと同じ地区に住まうことが義務付けられている。
特別待遇のFランクは、大抵は政治家でその他の少数は希少能力保持者や神性の縁者で力の弱いものや、覚醒前の者だ。
ランク付けは、実力に対してのものなので、希少度が高ければ高いほど実力を発揮できない傾向がある。
目標がたてにくいのだ。ほとんどの能力は四属性の火、水、風、土の基本や派生なのだが、希少能力はその他の訳のわからないものなのだ。
眼下の新国民の皆さま方はいったいどんな能力なのだろうか。
「はじめまして!新国民の皆様。今回は厳選なる審査及び検査により、132名の新国民を向かい入れることができました。
今回、この国を案内させていただきます。赤神朔です。」
マイクを持って皆の前でしゃべるのはとても緊張する。
けれどこれもお仕事なのだ。
“F”の私が、こんなことをしているのは、表面上だけでも、Fでも幸せですよ。とイメージ付けるためだ。
正式に入国していないので、逃げられたくない。
ランク付けが決まり初めて国民と認識される。
入国後は、厳しいランク階層に支配されて生きていかなければならない。
滅多なことがない限り、ランクが変わることがなく付ける仕事も限られていく。
だが、“F”“D”等の低ランクが神になる可能性だってある。
日本は八百万の精神というものがあり、一神教でないのだ。地方の神や、付喪神、道祖神などの跡取り・弟子・子分や、婚約者や養子など、様々な事情を抱え、スカウトしに来る神はたくさんいる。
ようは、実力がないなら気に入られろ。なのだ。
「裏日本つまり、神性国家日本は次世代の神育成国家ならびに神族の住まう神秘の国。表日本たる祖国日本国と同緯経度に存在する選ばれしものの為の国。異世界との隣接点であり仲介所です。この国で、貴方たちは神になるための準備をするのです。」
私はFのなかでも“ロイヤル”で、待遇はAと同じだ。中心部の治安がい居場所で保護されて生きている。
半神半人なのだ。
母の時点で力は祖母の0.0001%しか受け継いでおらず、父が人間なためさらに力が減っている。
私の能力は“ラッキーマネー”と“現”。
“ラッキーマネー”は金銭ごとに関して失敗しないオートスキルで、“現”は夢を本物にしたりできるが、極々小さいものである。
・・
「ぁあああ、疲れた。」
説明を終えて裏に回ると、スタッフがあわただしく動いている。
「さ、朔さん!た、大変です!」
どうかしたのだろうか?もしかして私、失敗したの?
ヤバいヤバいヤバい。
「久しぶりだね。朔ちゃん。」
静かでとても綺麗な男の人の声がする。
私が何度か顔を合わせたことのある神様。
破壊を司る大叔父様。
「ふふふ、あのこの好きな男に似てよかった。」
私はこの人が苦手だ。
いつだって心を見透かしたように私を見つめる。
「お久しぶりです。水地様。」
「あぁ。久しぶりだね。」
この人はいつもニコニコと人間にさえ接する。文武を備え、破壊の力の他に万物を知る力を持っている。
それでいて威張ることなく弱者を上手く導いたりする。
容姿も美しく真っ赤な瞳で万人を魅了するのだ。
それでも、この人の内を私は知ってる。
嫉妬して、妬んで、最も差別的。
振る舞いもどうすれば、いいようにとられるかを知っていて、実行する。
笑顔の裏でこけにし、手の上で転がる者を嘲笑う。
この裏日本の実質的最高権力者。
祖母がここを作り、統治していると言われているが、この人が政治や役職を割り振り、いいように独裁してる。
この国で起こる事件を予測して、あえて起こさせ利益を得る。
そんなことをしてもこの国に蔓延する“毒”が皆の思考を妨げその考えに至らせないようにしている。
「ふふ、そんなに身構えて。今回はちょっとしたお誘いさ。」
柏手をひとつ、水地様は打つ。
結界だ。
逃がさないため入れさせないため。周りの者に話を聞かれないためのものだ。
と、いうことは何かたくらみがあるのだろう。
「ふふ、君は我々の上位個体だ。でも上位権限も絶対服従を受けない唯一の血縁個体。」
「そうですね。大叔父様。」
私がそう返せば、ニタリと水地様は笑う。
竜使は絶対的な身分を生まれながら決めて生きる。
最上位、上位、中位、下位、最下位。
いつの間にか決まっていた身分で、それを絶対とし種族として運営している。
普通、彼のことを“最上位”と呼ぶのだが、私は少し違う。
私は、イレギュラー。
「だからこそ、頼みたいことがある。」
「……なんですか?」
この男の事だ。こちらに利益なんて何もないものを、お互いに利益ある話のように話すのだろう。
「世界を一つ、管理してみないか?」
………………は?
この人は、今何て言った?
世界を管理?
「なにを、なにをいってるんですか貴方は?!」