暗躍
――――シオンが王位してから三年後。
神聖メリア教国の王都アエデースにある、とある料亭の個室で三人の男女が話をしていた。
「あんさん、また勝手に動きたんやね?」
「いやあ、確かに動いたが、あれは俺なりの優しさだぜ?あの少年は力を求めてた。だから、俺は力を貸した。ただそれだけのことだよ。そんなに大きく取り上げる必要もねえーよ。今回の件はよ」
紫色の髪を後ろで三つ編みにしており、和服にブーツという変わった服装の美しい女性が、ピエロの仮面をつけた黒色の羽毛のコートを着て、黒髪の短髪のどこか軽薄そうでもあり、怪しそうな雰囲気を醸し出している男性を咎めるように言う。
だが、黒髪の男性はまるで気にしてないかのように返す。
「あんさんへーつもそうどすなぁ。ちびっとはわてがどしたことを自覚おくれやす」
「おいおい。それじゃあ、俺がまるで普段から余計なことしかやってないみたいだろうが。しかも、俺が接触したのは王族の人間だぜ?」
「ちゃうのどすか?それに、かな少年が王族なんは知っています。うちが言うとるんは、わいらになんん相談もなく勝手に王族に接触どしたことどす」
「ああ、違うね。俺は俺なりに考えて行動してんだよ。もうガキじゃねえーんだからさ、そうグチグチと言うなよ。それは、お前の悪い癖だぞ?」
黒髪の男性は紫髪の女性に真剣な声で言う。だが紫髪の女性はどこか黒髪の男性を馬鹿にするような声音だ。
「とりあえず、あんさんん処遇は『処分or現状維持』かん二択どすけど、今から多数決で決めたいと思うて」
「ハハハ、笑ってられる状況じゃあねーな。この状況・・・」
「それやけ、あんさんん犯どした罪は重たいちゅうことどす」
「・・・なあ、俺だって見境なしに接触してるって訳じゃねえんだかさ。今回の事は不問にしてくんねえか?」
黒髪の男性は紫髪の女性に顔の前で手を合わせ言う。そんな黒髪の男性に紫髪の女性が何かを言おうとした時、今まで黙っていた長い黒髪をそのまま垂らしている黒のゴシックドレスを着た無表情の美しい女性が言葉を発した事により、紫髪の女性と黒髪の男性は黒髪の女性の方を見る。
「・・・・【騎士の死影】の三ヶ条・・・・。
『誰にも正体をばれてはならない』
『任務はけっして失敗してはならない』
『主人を裏切ってはならない』
これを破ったものは例え【法の番犬】であっても例外なく死をもって償うべし。ただし―――」
「ただし、『誰にも正体をばれてはならない』については王族は除外される。何故なら我々は王族のために生き王族のために死する者達だから。だろ?それがどうかしたのか?つーかさ、俺の処遇はどうなるんだよ?」
黒髪の男性は黒髪の女性の言葉に被せるように言う。
台詞をとられた黒髪の女性は少し不機嫌にも見えた。
「・・・・私は貴方が接触したのが王族だったから、見逃してもいい。と思う。でも、次同じことをやったら・・・・容赦なく殺す」
「・・・・・分かってるよ。こんなこと二度としねえーよ。死にたくないんでな」
黒髪の男性は黒髪の女性の殺気まじりの脅迫にヒビリながら言う。
「つうかさ、よく覚えてるな。そんな掟」
「・・・・一般教養。だから、忘れるはずがない」
「いや!?そんなわけねーだろ!?お前はそんなことを一般的に教えられてきたのかよ!?」
「・・・・ええ」
黒髪の男性の叫びに黒髪の女性は「何言ってんのこいつ?」みたいな顔をして黒髪の男性を見る。その表情に黒髪の男性はため息をつきながら言う。
「・・・・はぁー。まあ、いいか。この話を続けても俺とお前じゃ平行線をいきそうだからな。・・・・そろそろ俺達を呼んだ本当の理由を話せよ」
その言葉を境に黒髪の男性の纏う空気がオチャラケタものから真剣なものに変わる。
黒髪の男性の纏う空気が変わると黒髪と紫髪の女性二人も真剣な雰囲気を醸し出した。
そして、呼びだした黒髪の女性に話かける。
「そうどすなぁ。そら、うちも聞きたかった事どす」
「・・・・分かった。簡潔に話すと王がこの国に戻った。二人ならこれだけでも分かるはず・・・」
「・・・・なるほどな。そう言うことか」
「ほして、いつ会いにいかはったんどすか?」
黒髪の男性と紫髪の女性は黒髪の女性の言葉で全て理解したのか、何も疑問に思わなかった。
「・・・・今日、これから」
「毎度あんさんは急どすなぁ」
「確かにな。まあ、でも早いに越したことはねえーよ」
そう言い黒髪の男性は立ち上がり部屋を出ていこうと戸に手をかけてから黒髪の女性と紫髪の女性の方を振り返る。
「・・・・そういや、王族は三人はいたよな?全員で一人ずつに会いにいくのか?」
「・・・・違う。私たちはちょうど三人いる」
「成る程な。それで、誰が誰に会いにいく?」
「・・・・これで決める」
黒髪の女性はそう言いどこから取り出したのか三本の棒を片方の端を握って隠しているものを二人に差し出す。
「くじで決めるちゅうわけやか?」
「・・・・ええ。じゃあ、引いて。私は余り物でいいから」
紫髪の女性が最初に引き、次に黒髪の男性がくじを引く。そして、残ったものを黒髪の女性が見る。
「・・・・1か。あなた達は?」
「うちは3どす。トコで、こんくじでなんを決めるちゅうわけやか?」
「俺は2だぜ。ってか、この数字はなんだよ?」
「・・・・その数字は誰に会いに行くかを決めるためのもの。2はパトリス様、3はニアベル様。そして、1がセイス様。相手の顔は分かってる?」
「ああ、当たり前だろ。じゃあな」
「ええ、分かるけん。では」
紫髪の女性と黒髪の男性はそう言い残すといつのまにか消えていた。
「・・・・私も、行こう」
黒髪の女性もいつのまにか姿を消す。まるで、もとからそこにはいなかったかのように静かに三人共が消えた――――。
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黒髪の女性、紫髪の女性、黒髪の男性の三人は王族の三人に同じ時に別々に会っていた。
†††執務室†††
「・・・・やっと終わりましたか・・・・」
シオンは王位してからほとんどの時間をこの執務室で過ごしていた。そして、今日もシオンは政務に励んでいた。
今日の政務を全て終わらせ、息を吐きながら深く椅子に腰かける。
――――ふぅ・・・意外に疲れますね。政務は・・・。
「・・・・念のために聞く。貴方がセイス様?それとも別人?」
――――ッ!?・・・私がここまで接近されるまで気づかないなんて・・・。一体何者でしょうか・・・。
シオンは突然の声に内心では驚愕していたが表情には全く出さず、声のした方を向く。
すると、そこには長い黒髪をそのまま垂らしている黒のゴシックドレスを着た無表情の美しい女性が立っていた。
――――・・・綺麗な人ですね・・・。
シオンが黒髪の女性に見惚れていると黒髪の女性が話始める。
「・・・・私の名前はセミラミス・スゥ・カルトゥーレです。以後、お見知りおきを」
「貴女は何者ですか?」
「・・・・私はセミラミス・スゥ・カルトゥーレです」
「いえ、名前はもう分かりました。私は貴女が何者かを聞いているのです」
セミラミスは不思議そうな表情をする。そして、何か分かったのか手をポンッ!と叩く。
「私は【騎士の死影】の【法の番人】が一人。そして、【騎士の死影】は王家に代々仕え、裏の仕事をこなし裏から王家をサポートしてきた『暗殺組織』です」
シオンはセミラミスの『暗殺組織』と言う言葉を聞き、残念そうな表情を浮かべてから、仕方ないか。っと納得するような声音で返した。
「・・・この国にもそう言う組織が存在するんですね」
「・・・・どんな国でも必ず闇は存在する。この国も例外じゃない」
「つまり、歯には歯を、目には目を、国の闇には国の闇を、と言うことですか」
「・・・・はい」
シオンは暫く黙りこんでしまったが、思い出したかのようにセミラミスに問いかける。
「今更なんですが、貴女の名前の『スゥ』と言うのは『十二竜の竜将』の『影蝕竜:スゥ』と同じですね。貴女は『十二人の龍騎将』なのですか?」
「・・・・はい。私は『十二人の龍騎将』です。それが何か?」
セミラミスは 無表情のまま可愛らしく首をかしげて言う。
「いえなに、『十二人の龍騎将』がまさかこんな身近に居るとは思わなかったので驚いただけです。気にしないでください」
「・・・・分かった。気にしない」
その後、シオンはセミラミスに『騎士の死影』の説明を受けていた。
シオンがセミラミスと出会っていた頃フランとアリスもとある出会いを果たしていた。
†††城下町のとある病院†††
シオンが政務に励んでいるその頃、アリスはアスレースに治癒魔法を教えてもらい、帰るところだった。
「アスレースさん、私はそろそろ帰りますね」
アリスはアスレースにいつもの様に帰ることを告げて出ていこうとしたが、いつもの様にアスレースから返事がなく、不信に思ったアリスは立ち止まりアスレースの方を向く。
すると、アスレースは椅子から立ち上がろうとしている体勢のまま、固まったかのように動かなくなっていた。――――――いや、正確には立ち上がろうとしている体勢のまま時間が止まっているみたいに動かなかった。の方が正しいかもしれない。
「アスレースさん?大丈夫ですか!?しっかりしてください!?」
アリスはアスレースに慌てて駆け寄り肩を軽く叩く。だが、アスレースの体は石みたいに堅かった。
――――・・・なにがおきてるの?誰の仕業?
「心配しなくてもよろしおす。そちらさんは生きています」
「ッ!?」
アリスは突然の声にビックリして慌てて振り返る。すると、そこには紫色の髪を後ろで三つ編みにしており、和服にブーツという変わった服装の美しい女性が立っていた。
「・・・貴女は誰ですか?アスレースさんに何をしたんですか?」
アリスは警戒しながらも紫髪の女性に問いかける。
「うちは【騎士の死影】ん【法の番人】ん一人。サラ・ハウリーと言います。【騎士の死影】とは王家に代々仕え、裏ん仕事をこなし裏から王家をサポートしいやきた『暗殺組織』どす。今日はニアベル様に話んあり、こうしいやニアベル様ん前に馳せ参じたんや」
「暗殺組織の人が私に何の話があるの?」
「はい。先ず、『騎士の死影』は三人んリーダーがいて、そん三人んリーダーが束ねる七人ん部下で構成されています。因みに、うちは三人んリーダーん一人どす」
「それを私に話してどうするの?」
「王族にわいらんような闇も、こん国におますちゅうことを知ってもらおいやしたいのどす。どすけど、わいら『騎士の死影』ん事を王族以外に話どしたら・・・ニアベル様、あんさんを暗殺させてもらいます」
サラはアリスに殺気を込めた声で言う。アリスは額に汗を掻きながら、息を飲み込み言う。
「・・・貴女達『騎士の死影』の目的はなに?」
「わいらん目的は唯一つ。そらこん国とクロムウェル家ん安寧どす」
アリスの質問にサラは即答した。アリスはサラが即答したことに少しばかり驚いていた。
「・・・そう。・・・・・・もう一つ聞くけど、ところで、どうして、アスレースさんは動かないの?」
「彼は動かいないさかいはなく、動けるさんには体が創られてへんやけどす」
「どう言うこと?」
「そらうちん魔法やので・・・。さすがに王族やてこれやけは教えられまへん」
アリスは、流石に魔法の能力は教えてくれないか。と思い、「そうなんだ」とだけ言い、近くの椅子に座る。
アリスは椅子に座るとサラの方を向き、話しかける。
「貴女が所属してる『騎士の死影』についてもっと詳しく教えてくれるかしら?」
「はい」
†††城のとある廊下†††
シオンが政務に励んでいた頃、フランはグラドス元帥との稽古を終えて城下町に遊びに行こうとして門に向かって歩いていたとき、突然の後ろから声に足を止め、振り向く。
「よお。久しぶりだな」
フランは声の主を見る。そして、声をかけてきた人の顔を見るなり、無視して普通に歩きだした。
「おいおい!なに普通に無視してんだよ!?」
黒髪の短髪に黒の羽毛コートを着たピエロの仮面をつけた男性――――アイン・シークは、無視して普通に歩いて行っているフランの肩に手をおき呼び止める。
「・・・なんだ、テメェかよォ。相変わらず怪しい野郎だなァ。グラドスに突き出してやろうかァ?」
「ハハハ、それだけはマジで勘弁だわ・・・・・」
「アァ?グラドスと何かあったのかァ?」
「いや、何もねーよ・・・」
そう言った、アインの表情は思い出したくない思い出を無理矢理掘り起こされた見たいに陰っていた。そのマジな反応と表情を見てフランは「絶対に何かあったなァ」っと確信を得ることが出来た。
フランがそんな事を考えていると、アインが話題を変えようと話しかけてきた。
「つーかさ、お前も相変わすだな。成長したのは図体だけか?」
「・・・試してみるかァ?」
フランはそう言うと、殺気をアインにぶつける。
――――なんつー、気迫だよ。数年でここまで成長したのか?スゲーな・・・。
「どうしたァ?やらねェのかァ?・・・つまんねェ奴だなァ」
フランはかまえもとらずに、闘志も感じないアインにやる気を失くしたようにまた歩き出す。
「なあ、俺の話を聞いてかないか?」
「アァ?イヤだねェ。テメェの話なんざ何の役にもたたねェような話だろうがァ」
「でも、神龍王シュトラールの情報は確かだったろ?それに俺のおかげでシュトラールの場所が分かったんだぜ?それでも役にもたたないと断じるのか?俺はそれでもかまわねーけどさ。だって、後悔すんのはいつも話を聞かなかった奴等なんだからよ。これだけ言っても・・・・」
「アァ、うぜェなァ!話を聞きゃあいいんだろォ!聞いてやるから黙れよォ!」
フランは不思議と頭に直接響いてくる声に振り向き、叫ぶ。そんなフランをアインはおかしそうに笑って見ていた。
「・・・テメェ。舐めてんのかァ?」
「いやー、悪い悪い」
アインは笑いながらフランに謝る。フランはそんなアインにボディーブローを決める。すると、アインは笑っていた為に息が一瞬できなくなり、その場で膝立ちになり、悶えていた。
「・・・話ってなんだァ?」
「・・・・おいおい。殴っておいてそれか?」
「早く話せよォ。もう一発殴るぞォ」
「・・・分かったよ。先ずは自己紹介からかな・・・。俺は【騎士の死影】の【法の番人】が一人。アイン・シークだ。【騎士の死影】ってのは王家に代々仕え、裏の仕事をこなし裏から王家をサポートしてきた『暗殺組織』だ。よろしくな」
「そんな組織があったんだなァ。つうかよォ、お前『暗殺組織』の人間だったなんだなァ。そうは見えねェがなァ。どっちかと言うと『詐欺師』か『怪しい情報屋』って言われた方がしっくりとくるなァ」
「あー、俺もそう思うぜ。それに俺は暗殺を専門にはしてねーんだよ」
「??どう言うことだ?」
「つまりだな、【騎士の死影】はリーダー―――つまり【法の番犬】は『セミラミス・スゥ・カルトゥーレ』『サラ・ハウリー』『 ^アイン・シーク』の三人いるだよ。名前から分かると思うがな。それで、俺達【法の番犬】はそれぞれ専門にやってることが違うんだよ」
アインはふぅーっと一息つきまた話始める。フランは黙って「早く終わらねェかなァ」と思いながら、アインの言葉を聞いていた。
アインはフランの考えなど露知らず、話続ける。
「【法の番犬】のリーダーは、『セミラミス・スゥ・カルトゥーレ』が『暗殺』を専門にし、『サラ・ハウリー』が『諜略』を専門にしてる。そして、俺こと『アイン・シーク』は『諜報』が専門だ。因みに、俺やサラも『暗殺』は一応できるんだぜ?それにセミラミスやサラだって『諜報』もできるし、俺やセミラミスも『諜略』もできるしな」
「じゃあ、何で三人は専門にしているのが違うんだよォ」
アインはフランをバカにするようにチッチッチと指を振りながら話始めた。
「確かに俺達は専門にしてる事以外もできる。でもな、セミラミスが一番三人っの中で暗殺が上手いし、サラも三人の中で一番諜略が上手かった。かくゆうこの俺も三人の中で一番諜報が上手かった。ただそれだけの話だ」
「・・・話は終わりかァ?終ったなら俺はもう行くぞォ」
「おーい、そんなつれないこと言わずに俺の話につきあえよ」
アインは歩きだしたフランに並んで歩きながら言う。
「・・・まだ、なんかあるのかァ?」
「いいや、正直言うと【騎士の死影】の説明は終ったんだが、久しぶりに会ったんだから積もる話もあるだろ?」
「・・・・そんなもんねェよォ」
フランは心底鬱陶しそうにアインに返事をする。アインはそんなフランの態度に気づいていないかのように尚も話しかけ続ける。
「そうでもないぞ?例えば俺と初めて会ったときから今まで何をしてたとか、どんな人に会ったとかさー、いろいろあんだろ?」
「・・・俺とお前がそんな友達みたいな事を話す仲だとでも思ってんのかァ?」
「あー、違うのか?俺は友達だと思ってたんだが?」
「冗談じゃねェよォ。誰がテメェと友達になるかァ。つうかよォ、俺とお前が仲良くなるような場面なんか無かっただろうがよォ」
フランのその言葉にアインは「お前は何もわかってねーな」と呆れ顔でため息をつきながら言う。フランはとりあえずイラつき、アインの鳩尾を衝動的に打ち抜いていた。
「グゥッ!?」
アインは諸に鳩尾に打撃をくらい、廊下にうずくまり悶えていた。
フランはそんなアインを置いてその場を去っていった。
「ま・・・・待て!?まだ・・・・話は終わって・・・ねーぞ!?」
アインは必死に叫ぶが痛さで上手く声が発声できなかった。
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†††とある部屋†††
「―――以上が部下からの報告です。“ ”様」
「ふん、小僧が調子にのりおって。王の真似事とはな。『リュクシオン』め」
「・・・いかがいたしますか?」
「王の真似事のリュクシオンを始め、王族の偽物リディアとアリス、王族の恥さらしのフラングール。まったくもって、ローラン様の時とは比べ物にならないくらい、この神聖メリア教国は腐りきっておるな」
「では、その王族共に、我らの力を知らしめますか?」
「嗚呼、勿論だ、ミクト。我々の力でこの国の腐りきった王族に知らしめてやろうぞ」
「では、予定を早めますか?」
「いや、いい。準備は完全に整ったときの方が勝つ確率も上がる。それにまだ、人員が不足しているのだろう?」
「はい。当初の目的より二百ほど足りません。ですが、その二百の確保も後、数ヵ月もすれば集まると思います」
「数ヵ月?正しくは分からんのか?」
「はい。レヴィアタンさまと交渉中です。が、交渉が何時終わるのか分かりません。それに交渉が終ったとしても人員をここまで連れて来るのに時間が多少なりともかかります」
「ふむ、そうか。では、ひき続き準備を進めてくれ」
「かしこまりました」
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この時はまだ、リュクシオン達は気づかなかった。
数ヵ月後に起こるであろうリュクシオン達にとって初めての試練を―――――。