ボスはやっぱり最強ですね。
マリアとセリアと一緒に談笑してると、ユーグに呼ばれアレクは仕事に行った。
「アレクも無表情だけど顔は良い方だから…ミアと並んでも遜色が無くて良かったわ」
「…ソウデスカ?」
「黒髪で黒い瞳なんて、リーチェ…あ、大魔女のベアトリーチェのことね。 彼女しか見たこと無いから、本当に驚いたわ」
「あぁ…そういやユーグさんに聞いたような…」
「今度リーチェ紹介するわね。 私、彼女とは仲良しなのよ」
「へぇ~…」
楽しそうに頬を緩ませるマリアに頷くと、セリアが横に移動してきた。
「リーチェ様は凄く神秘的な方なの。 私もよく会って頂いてるのだけれど…今は確か北の領地に遊びに行ってる筈よ」
「じゃあ帰ってきたら会えるのかな?」
「ええ! 義姉様とリーチェ様が並んだら…凄く壮観ね!」
喜び楽しそうなセリアに、リーチェ様ってどんな人かと楽しみになった。
夕食時、王様家族と一緒に食べていたら──────彼女は突然現れた。
「よう。 皆共久しいのぉ」
黒髪黒眼の彼女は────真っ黒な肩出しのドレスに身を包み、真っ赤な唇をニィッと持ち上げた。
「リーチェ! 久しぶりね!」
「あぁ…マリアも元気そうじゃなぁ」
駆け寄るマリアを抱きしめて、リーチェは鷹揚に頷いた。
「さて…新しい魔女とやらは……お主かえ?」
「どうも~初めまして…ミアでーす」
──────ごめん、リーチェ様…私は今目の前の肉と戦っているのだ!
けしからんこの肉めっ!
柔らかくて程良い弾力に、思わずにやけてしまう。
相変わらず表情筋は死滅しているので、無表情ですが。
「ほぅ……これはまた綺麗な女子だのぅ…アレクが惚れるだけはあるのぅ」
「ぐっっ?!」
「義姉様ったら…大丈夫?」
クスクスと笑いながらセリアにグラスを渡されて、一気に飲み干す。
「ふふふ…凄い魔力じゃなぁ……良いお子を産みそうじゃ」
「ぅえ? 私ってこっちで子供産めるの?!」
思わず驚いて立ち上がると、リーチェは楽しそうに頷いた。
「魔女とて元は人間だからのぅ…子宮が問題なければ産めるぞぇ」
「リーチェ様は我の祖母になるのだしな」
────────マジかよ…
前皇帝の一言に、本気で驚いた。
──────────いったい幾つなんだ、この人…
「女子に年は訊いてはならぬよ、ミア」
にっこりと笑ったリーチェ…
名乗った覚えの無い名前を言われ…
顔の表情筋がピクリと動いた気がした。
────────ボスはやっぱり最強ですね。