状況を確認するのは当然です。
取り敢えず歓迎されているらしいので、私は差し出されたお酒を呑みながら、金髪緑眼の説明を聞いた。
まず、ここは最初に聞いたオークデュレ帝国の皇帝専用の執務室。
目の前のダンディな黒髪碧眼のおじさんは前皇帝リヒャルト・オークデュレ。
その右横に座っている無表情で一番背の高かった黒髪赤眼の男が、現皇帝アレクシス・オークデュレ。
そして、この笑顔を絶やさない金髪緑眼の彼はユーグ・ベルリオール、宰相。
──────この国は皆イケメンなのかしらん?
だって、この顔面偏差値の高さ……。
先程まで居た日本の男なんて、きっと月とスッポンだ。
──────さて…この場合、私は‘魔女’
「………つうかね、初っ端から毒ありえないっしょ…」
異世界こんにちわして、いきなり大事件。
狙われたのは国を治める前皇帝と現皇帝、そして宰相。
「あああ…やだやだやだ。 使い方習う前から魔術を使えるとか……あぁマジで清水さん天使すぎる…適当だったけどそれなりに設定掴んだし…」
全て清水さんの説明通り。
魔女(主人公)は全能チートの魔力と知識の持ち主で、異世界に飛んだ瞬間から────不老不死となるらしい。
余計なことまで思い出し、ちょっとイラッとしてしまう。
「まったく…呑まなきゃやってらんねぇよなぁ…」
右手を翳しグラスに入ってる水を差し出されたお酒よりも度数の強いお酒に変える。
ついでにピッチャーの中身も。
「あの……魔女様…?」
「んぁ?」
「よろしければ、魔女様のお名前も教えて頂きたいのですが…」
「あぁ……ミアよ」
「ミア様ですね」
にっこりニコニコと微笑みを絶やさない宰相の確認の言葉に頷き、グラスの中身を一気に呑み干す。
「それより、あんたらは水飲んでなかったわけ? …まぁ一口くらいじゃ死なないけどさ」
「はい。 私達もミア様が現れる数分前に来たばかりでしたので…」
「わぁお。 ……運良かったねぇ」
「はい。 ミア様、ミア様は今こちらの世界に飛んできたばかりだと仰ってましたが、こちらでの住まい等はまだ決めてませんよね?」
手を翳し、ピッチャーからグラスにお酒を注ぎ足し、私はゆっくりと瞼を閉じた。
膨大な知識が頭の中をグルグル飛び回る。
普通の人なら頭パーンだ。
だがしかし────私は全能チートすぎて普段と変わらずのんびりだ。
無表情だけど。
「ん~…帰れないのは決定事項だし…まぁ適当になんとかするわ」
「ここに住めば良い。 アレクも異存は無いだろう?」
「……あぁ」
ダンディがそう言うと、黒髪赤眼が小さく頷いた。
──────視線はずっと私から逸らさないまま…
──────この視線の熱さは…まさかと思いたい。
「あのさ……ちょっと聞いても良いかな?」
「なんでしょう?」
「そこの人───────まさかとは思いますけど……独身じゃないですよね?」
「「独身だが?」」
やっぱり──────状況を確認するのは当然です。