結局犬も食わない話。
「だからってどうしてここに逃げてくるかな~」
「……………ごめん」
私の逃げた場所は──────。
2ヶ月くらい前に起こった事件を一緒に解決し、酒呑み友達になったセリアの護衛団長のところだった。
軽く事情を話すと、彼は椅子を勧めてきた。
「まったく…今日非番で良かった。 感謝しろよ、俺の運の良さに」
「ごめん………」
しょんぼりと俯いていると、宥める様に目の前のくたびれたおっさん団長は私の頭を撫でてきた。
「まぁ…ミアは可愛い妹分だしな。 お兄ちゃんがなんとかしてやるしかないだろ?」
「セディ…ありがと」
「まず、捜索隊とか出ると不味いから、リーチェ様に交信して無事なことだけ言っとけ。 場所は言わなくていい。 そんで────少し寝ろ。 顔色が悪すぎる」
「うん……ありがと…」
セディが替えてくれたシーツの上、私は横になると瞼を閉じてリーチェに交信し、スッと眠りに就いた。
「ミアすまなかったっ!!」
──────な ん だ こ れ…
寝起きで最初に見たのは──────床の上で土下座をしているアレクの姿だった。
いったい何がどうしてこうなったのか…。
「あの…」
「ミア、違うんだ! 子供のことは嬉しいんだ! でも子供が出来たらミアとっ…その……愛し合うのが少なくなるだろっ…だからっ…ただでさえ一緒に居ることが少ないのにっ…まだ俺はミアと二人で居たかったんだっ!!」
「あ~、うん……とりあえず、顔上げて……?」
「ミアっ! 俺はミアを愛してるんだっ…だから頼むから俺を捨てないでくれっ!!」
悲壮感たっぷりなアレクの叫びの意味に、一瞬周りに居た人間がドン引きしたのは言うまでも無い。
「……産んでも、良いの?」
「産んでくれっ! ミアと俺の大切な子供だ! ────ミアと愛し合うのは…産まれるまで我慢するっ」
────────そんな死にそうな顔色で言われても…。
ふと…アレクが自分と身体を繋げるまで童貞だったのを思い出し────。
私は彼が浮気しない人だったと苦笑した。
────────まぁ…アレクの欲求不満は私がなんとかすれば良いことか…
「…うん。 私も────アレクと一緒に我慢するから…ヨロシクオネガイシマス」
──────────結局バカップルの痴話喧嘩話。
【完】




