チートすぎるけど、何か?
「ありがとうございました。 魔女様のおかげで我々は助かりました」
丁寧に頭を下げてきた金髪の男を見つめ、私はついでにと差し出されたクッキーのようなお菓子を食べながら同じように会釈した。
こっちは大丈夫。 毒など入ってなかった。
「いいえぇ〜。 なんなら犯人も探し出しますかね?」
「「「出来るのですか?!」」」
驚く3人を見上げ、私は静かに頷いた。
『我の前に姿を表せ』
淡々と呟き、念じる。
それだけで、何故か体の中で魔力が蠢き流れてゆくのが解る。
使い方なんて知らない筈の自分が、何故か出来るのはどうしてか…
まぁ考えたところでこの力が無くなる訳ではないのだし。
私にはこれから、それが当たり前のことになるのだから────。
瞬きをするくらいの速さで、部屋の中に瞬間移動して来たのは、十代後半くらいの年若い女性だった。
びくびく、おどおど、キョロキョロと忙しない。
「あなたが犯人か……あぁ……《アンディオール伯爵》のところの侍女だってさ」
「「「アンディオール?!」」」
ぎょっとしたように驚き、青褪める彼女を見つめる3人に頷き。
「衛兵をここに。 ────伯爵とやらを召還しますので、良いですかね?」
「ありがとうございます。助かります!」
頭を下げ金髪の彼が慌てて部屋から出て行ったのを見送って、私は右手で床に向けて円を描く。
『我の前に今すぐ来い。 アンディオール伯爵』
──────あ、目を閉じたほうが良いって言うの忘れてた
眩い光の中、一瞬で現れたハゲデブ親父。
あんまりにも想像通りの悪者っぽい男の姿に、私は思わずクッと咽を鳴らしてしまった。
「なっ、なんだ?!」
「ないわぁ~…『拘束』」
イメージ通りに自害しないように口を開け固まる親父を一瞥して、私はふぅっと一息吐いた。
「失礼します。 ランス、アンディオール伯爵とそこの女を」
「はいっ!」
慌しく動く金髪達を横目に、視界に入ってきた椅子に座った。
残ったのは、最初の男性3人。
「魔女様、前皇帝と現皇帝を助けて頂き本当にありがとうございます」
深々と頭を下げた金髪に、私の口から出たのは深い溜息だった。
──────詠唱とかしなくても出来るなんて…
いきなりレベルマックスな自分の能力に苦笑してしまう。
──────表情は変わらないけれど。
──────チートすぎるけど、何か?