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神様の御子  作者: 珠州 那緒
12/20

猛獣使いになった気分。















──────────それは一瞬の出来事だった。



「きゃああああああああああああああっ!」



ベルアと一緒に書庫に向かっている途中…




背中が物凄く熱くなった。



「ミア様っ! ミア様ぁぁぁっ!! 誰かっ! 早く医療師をっ────!」



斬りつけられたのだ────と気づいた時には、背中側の細胞が一瞬で蠢き出し傷すらも残らずに治ってしまった。



「この野郎っ────! 『拘束 浮け』っ」

「────っ?!」



私の血で染まった剣を持った犯人の身体を、人差し指で空に浮かせ意識して微笑んだ。



「『落ちろ 浮け 落ちろ 浮け』」



空中で上下に浮いたり床ぎりぎりに落としたりしていると、ベルアが呼んだのであろう警備兵と医療師がやってきた。



「『拘束 凍れ』」



一瞬で氷漬けにされた犯人を見つめ、息を呑む警備兵に医療師。

ベルアはこちらに寄ってきて、私の背中を見つめた。



「ミア様っ! 大丈夫ですかっ?!」

「ったく……最近平和だったから忘れてた…アレクに《ヴァルト伯爵》の刺客だって言って来てくれる?」

「はいっ!」

「警備兵はコレをアレクの執務室に運んで。 医療師は…すまないが、血液を増幅させる薬をくれ」

「はい…お身体の方は大丈夫でしょうか…?」

「あぁ…もう傷は治っている。 それ、氷漬けだが…冷たくはないし筈だし、浮遊を付けてるから重くない筈だ。 よろしくな」

「はっ!」



慌てた様に走り出したベルアを一瞥して、私はのんびりと指示を出す。

運び始めた警備兵を横目に、私は医療師の方へ歩み寄った。



「大丈夫ですか?」

「あぁ…さすがに避けられなかった…湯浴みをして着替えてから行くとアレクに言っておいてくれ」



医療師に背中を見せると、彼は小さく頷き小瓶を渡してきた。

近くに居た別の侍女にそう告げると、私はメンドクサイ…と呟きながら、私室へ向かった。






「すまん、待たせたな」

「ミアっ!! 大丈夫かっ?!」

「あぁ…」



アレクが心配していると解っていたので、あえて背中が開いたドレスを身に纏い、私は彼の前に立った。



「良かった…」

「すまないな…油断してしまった…」

「ミアが無事で良かった…」

「ふふふ…」



アレクに抱き寄せられて、私はゆったりと身を任せる。



「魔女で良かった…でなければ助からないほど深かったからな…」

「ミアっ…」

「だが…血が流れ過ぎた…座りたい…」

「あぁっ…」



アレクに引き寄せられて、彼の足の上に横抱きにされる。

皆が見ている前で何をする! と怒鳴りたかったが、アレクの青白い顔を見てしまい…やめた。



「大丈夫だ…心配かけてごめん…」

「ミアっ……命が縮まった…」

「アレク……そろそろ話を始めようか」

「っ…あ、あぁ…」



私がキスをして黙らせると、アレクは真っ赤になりながらも無表情に頷いた。












──────────猛獣使いになった気分。

















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