白いアスター
白いアスター
嗚呼、君は…死んでしまったのか…。
君と一緒に行った…アスターの花畑。
『私、この花が好きだよ』
『…なんで?』
『ふふっ、教えなーい♪』
『えっ?ち、ちょっと!』
君があの時言った〝教えない〟は、〝知られたくない〟だったんだ。
余命三ヶ月と言われた君は、それを僕に伝えず、いつも通りに過ごしていた。
君は、自分が死んでしまう事を知られたくなくて、知られてしまったら、関係が壊れてしまうかもしれないと思って。
だから、隠していた。
ははっ、僕、そんなに頼りなさげかな?
でも、君は遺して逝ってくれた。
白いアスターの花と、一通の手紙を。
ごめんね、総ちゃん。
私、逝くね。
ホントは、伝えたかったの。
関係が崩れてしまっても、伝えたかったの。
総ちゃんと行った、最後のデート。
アスターの花畑。
あの時に伝えようと思ってた。
だけど、やっぱり伝えられなかった。
ごめんね。
ありがとう、総ちゃん。
私に幸せをくれて。
私の大切なヒト、この白いアスターの花を見て、たまには私を思い出してね。
嗚呼、なんて綺麗なんだろう。
君が残したこの花も、思い出も、何もかも。綺麗だ。
追憶の花。
それは、白いアスター。
僕、決めたよ。
今日は、花屋で花を買って帰る。
これから毎日、僕の部屋には白いアスターを飾ろう。
毎日毎日、忘れずに、大切に、君の思い出も、一緒に。
そして、見るたびに思い出そう、君の笑顔を、泣き顔を、困った顔を、照れている顔を。
嗚呼、なんて綺麗な…
fin