未来へ。
「こっから帰るしかねーか・・・遠回りだな」
彼はさっきの工事中の看板に悪態を尽きながらも横道にはいる。
横道と言っても彼が勝手に呼んでいるだけで正確には建物と建物の間、路地裏を現在通っている。
彼が言うように遠回りと言うのはこの横道を通ると家に帰るルートがいつものルートより長くなってしまうのだ。
「おっとっと〜と」
狭い道であるがゆえに時々彼の基準服やバックなどがガリっと壁に当たる音がする。
それと足元にはゴミが落ちていたりしているらしく少年はそれをよける為に壁などに当たってしまう。
「帰ったら拭かないとな〜」
少年はそういいため息をつきながら歩いて行く。
「やっとここ迄来た・・・」
軽く怠くなった身体を引きずりながら横道の外に出る。
怠くなった理由は他でもない。労働だ。
あんなわけの分からん文を勉強しろなんて出来るか?いや、無理だね。
「ったく・・・何だよ酒買ってこいって・・・それでも教師かってぇの」
マジで先生が酒買ってこいって言うのはいつもの事なんだけどね。
悪態をつきながらも歩いて行く。
そして一軒の家の前に着いた。その標識には『如月』と表記されている。
自分はその家のポストを漁る。・・・・いや自分の家ですからね?
「ん〜特には入ってねーな」
少年はポストを漁る手を止め家の玄関の方に歩いて行く。
少年は引き戸に手を掛けガチャっと金属音を立てた扉を開け
「只今帰りました〜!」
と大声で叫ぶ。
「あれ?居ないのかな」
少年は反応がない事に少し疑問に思ったらしいが直ぐ様家の中にはいる。
玄関には靴がなかった為少年は「あぁ」と納得の声を上げる。
「確か今日は出かけるとかなんとか言っていたような?」
・・・納得したのかしていないのか。そこは少年にしか解らない。
「早く着替えよ〜っと」
少年は靴を綺麗にピシッと並べ、玄関の直ぐ目の前にある階段に上がる。
一段一段階段を踏みしめ登って行く。
しかし彼は後数段というところで足を止めた。
「兄貴も居ないのか?」
いつもなら家でゴロゴロと漫画を読んで居るはずの兄が今日は見当たらなかった。
兄の部屋は階段の直ぐ目の前でいつもドアが全開で空いているから少年は兄が居る事を認識ができた。
しかし今日はいつも全開のはずのドアが空いて居ないでしまって居る。
なので少年は足を止めたのだ。
「ん〜やっぱり居ないか」
階段を数段上がり兄の部屋のドアを開け中を見てみるがやはり居る気配が無いので少年は扉を閉めた。
兄も居ない事に少し疑問に思った少年だったが直ぐに兄の部屋の隣の自分の部屋の扉に手をかける。
「ふぅっと」
少年は直ぐにドアを開けて直ぐの机の足元にバックをドサッと置いた。
一息居れずに直ぐに制服を机の上にあるロフトベッドのヘリに掛ける。
そのままの勢いで白いTシャツと黒い長ズボンを着る。
「やはり居ないか」
少年は直ぐに下に降りて台所やリビングなどを探して声を上げる。
「やっぱり今日はみんなを居ない日?」
と少年は腕を組み首を横に傾ける。
「寝るか」
すぐに探す事を諦め自分の部屋に戻り、部屋のドアを閉めた。
ロフトベッドのハシゴの前で大きく深呼吸をしてからハシゴを登る。
そしてもう敷いてあった布団に入る。そしてすぐさま眠気が襲って来た。
ピッ・・ピッ
そんな機械の音で意識が覚醒する。
「・・・・・・」
目覚まし時計でも鳴っているのだろうか?
それを確かめる為に目を開く。しかし目の前には違った景色が広がる。
目を開くとそこは真っ白い天井が見えた。
(白い天井?)
まだあまり覚醒しきっていない意識をフル稼働させ考える。
しかしそれでも解らなかった為周りに目を向ける。
天井と同じ白一色の壁と床。左に目を向けると自分の腕から伸びる点滴の管があった。それと病院においてありそうな機械から音がなっていた。さっきの音はこれだったらしい。それにこれまた真っ白なベッドに横たわっている。・・・・・・え?
「病院?」
完璧に覚醒しきった意識で考える。
(自分が病院?何故だ?自分は確か・・・)
考える為に身体を起こし腕を組む。
「分からん」
しかし結論が出ない。
「まぁしかし寝れるんだし?」
と考えを放棄して立てていた上半身を寝かせ、目を閉じる。
これが夢である事を信じて。