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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

闇と黒

作者: 翔棒弾
掲載日:2026/04/28

人種差別とはどういうことなのか、それを思いながら書いてみました

 アメリカの片田舎に二人の兄弟がいた。

 兄の名前はジョージ、弟はマイケル。

 ジョージは生まれつき目が見えず、二つ年下のマイケルがジョージの目の代わりになり、いつも一緒に過ごしていた。

 ジョージは空想が好きで不思議な話を思いついてはマイケルに話して聞かせていた。

 マイケルはジョージの話が好きだった。

 目が見えないジョージにとっての世の中はマイケルとは全く異なる世界のことなのだ。


 そんな中の良い兄弟に大きな不幸が降りかかる。

 両親が馬車の下敷きになり亡くなってしまった。

 買い物に出かけた両親を家で待つ二人に近所のおばさんが知らせに来てくれた。

 二人は近所のおばさんの家族に保護され両親の遺体を迎えることになる。


 遺体を見たマイケルは泣き叫び「お父さんお母さん」と叫び続ける。

 事態を理解できないジョージは両親の遺体のもとに連れていかれ母のほほに触れる。

 それはいつもの柔らかく暖かい母のほほではなかった。

 冷たく硬く自分を全く受け入れてくれないまるで椅子に触っているような母である。

 父の体も同じだ。いつもの頼もしさはなくやはり冷たく硬いだけ。


 ジョージは両親の変わりように悲しみより恐ろしさが沸き上がって声も出せず震えることしかできなかった。

 これは母が読んで聞かせてくれたおとぎ話の悪い魔法使いの仕業のようだ。


 その後二人は近所のおばさんの家で寝ることになる。

 次の日には母方の祖母がやってきて二人を引き取ることになる。

 祖母が両親の葬儀を行い、その後の手続きをする。


 両親を下敷きにした馬車は、道の柔らかい部分を踏んで倒れてしまい、すぐ横にいた両親が巻き込まれてしまったとのことだ。

 馬車の御者に落ち度はなく思い罪に問われることはなかった。

 馬車は保険に入っていたため金銭的補償は十分にされ兄弟が成人するまでの暮らしには不安はなかった、御者と祖母の間以外では。


 御者と祖母には面識はなかったが、御者が黒人であることと祖母が白人至上主義者であったため、祖母の怒りは苛烈を極めた。

 祖母は御者をなじり衆人のまえで何度も悪魔と罵倒した。

 しかもジョージとマイケルに聞かせるかのように御者を攻め立て、さらには黒人全てを悪魔だと断罪し続けた。

 周りの大人や保安官が何度もなだめたがその怒りは収まらなかった。

 マイケルは委縮していたがジョージには祖母の言っている意味が分からなかった。

 祖母に「黒人とは何なの?」と聞くと、祖母はは「肌が黒い人のことだよ」と教えてくれた。

 「黒いとはどうなっているの?」と聞くと祖母がすかさず「肌が黒いってことは悪魔だってことだ、お前たちの母親や父親をこんな風にしたのもこいつら悪魔の仕業だよ」

 祖母にそういわれるとジョージは母や父の硬く冷たくなった体を思い出し怖くなってしまった。


 祖母の怒りはいつまでたっても収まらなかったが、ジョージたちが住んでいる街にいつまでも居るわけにもいかず、祖母と孫二人は祖母の暮らす村への越していくことになる。

 祖母の家は広い庭があり、隣には大きめの川が流れている。

 川幅は広いが水量は多くないため低い水位でゆっくりと流れている川のため、夏には住民が水遊びに興じている。


 ジョージとマイケルは広い庭がお気に入りになり二人で毎日仲良く遊んでいた。

 夏が近づくと祖母は川遊びのために二人に長靴を買ってあげた。

 長靴を履いて遊びたいを言う二人を祖母は今日は遅いから明日にしなさいと寝かしつけた。

 二人はお気に入りになった長靴を抱きしめながらベッドで眠りながら明日を待った。

 ところが、次の日は強い雨が降り外には出られなかった。

 雨は何日も続き二人は家で過ごすしかなかった。

 数日後朝起きると雨はやみ晴天から除く日の光が広い庭にできたいくつもの水たまりを照らしていた。


 マイケルは祖母に長靴で外で遊びたいとせがんだ。

 祖母は「川に近づかなければ構わないよ。」と言って孫二人を家の前の軒下で見守ることにした。

 ジョージとマイケルはさっそく新しい長靴を履き庭に出てきた。

 日の光で汗ばむくらいに暑くなった庭の水たまりで遊ぶ二人。

 マイケルはジョージに気遣いながらも初めての広い庭ではしゃいでいる。

 ジョージは初めて履く長靴と水たまりの感触を楽しみながらマイケルのはしゃいだ声にうれしさを覚えていた。


 マイケルは、ジョージが深くはない水たまりの真ん中で水の感触を楽しんでいるのを見て自分一人で走り回っても大丈夫だろうと思い、今までジョージに付いていてできなかったことをしたくなり、庭中を走り回り転げまわってはしゃいでいた。

 その声を聴いてジョージも一緒に楽しくなってしまった。

 その時、庭の水たまりを転げまわって泥だらけになっているマイケルに向かって祖母は言う

 「マイケルそんなにしてたら肌が真っ黒になっちゃったじゃない」


 その声はジョージにもはっきりと聞こえた。

 ジョージは分かってしまった、マイケルは黒人になったのだ悪魔になったのだあの優しく柔らかく暖かい母を冷たく硬く椅子のように変えてしまった悪魔になったのだ。

 このままでは自分も母や父のようにされてしまう。

 ジョージは逃げ出した、恐怖で震える体を動かしながら必死で逃げる。

 ジョージが走り出した先には増水した川がある。

 それに気が付いたマイケルは叫ぶ「ジョージ兄さんそっちは行っちゃだめだ」

 ジョージの恐怖はさらに大きくなる。気が付かれた、悪魔に気が付かれた。逃げなきゃ。

 ジョージは止まらず川に向かって走り出す。

 慌てたマイケルはジョージを追いかけて後ろから抱き着いた。

 「兄さんそっちはだめだよ」

 ジョージの恐怖心は極限までに達した。つかまってしまった、自分もあの母のようにされる。

 ジョージは悪魔を振り払おうとするが離れない。

 足がぬかるみにはまって転んでしまった。

 転んで手をついたところに大きな石があることに気が付いた。

 ジョージはその石をつかみ悪魔に向かって反撃する。

 額を石でたたかれたマイケルはその痛みでジョージを離してしまう。

 そのすきにジョージは必死で逃げる。逃げる先には水かさが増し急な流れの川がある。

 マイケルは頭の痛みをこらえてジョージを追いまた両手で強くだきしめる。

 悪魔に捕まえられたジョージはまた手に持った石で悪魔を振り払う。

 マイケルはジョージに殴られ血を流しながらも川に向かっていくジョージを抱きしめる。

 何度もジョージに殴り続けられたマイケルは力尽きそうになる。

 庭にもあふれんばかりの濁った水が滝のような勢いで流れる川端にジョージの片足が入ろうとしている。

 マイケルはジョージを引っ張ろうと強く抱きしめるがそのまま二人は一つのかたまりとなり川に沈んでしまった。

 祖母はそれを呆然と見ていることしかできなかった。

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