二日目、これからの日課
「どうだったよ?初日は。」
シアは晩御飯の焼いた鶏肉の料理を頬張りながら尋ねた。
「大変すぎた。何で初日から中級の魔物と戦わなくちゃいけないんだ。ああいうのはアルカンさんの仕事じゃないのかよ。」
「ははは、まぁ良かったよ。一言目が人間関係の事じゃなくてさ。俺の話聞いて不安がってたろ?」
「少なくともそれより重大な問題ができただけだ。気に食わないやつはどうしたっている。」
私も料理を口に運ぶ。
「というか、シアの話を聞いてないな。どうだったんだ?」
「それがよ!聞いてくれよ超ラッキーだぜ!師匠が俺の身体見て褒めてくれたんだよ!」
「それは良かったな。でも、魔道具技師って肉体より魔力操作の方が大事だろ。」
「こまけぇことはいいんだよ!ほら、チャチャッと食って明日に備えようぜ!」
竜車が研究所に到着する。
「ウィルフ君!昨日は魔物の乱入で大変だったけど、今日からは本格的に訓練に入るかからね!」
出迎えてくれたのは、アルカンさんだった。
二人で別棟まで歩く。
「おーいネビロ!ウィルフ君着いたよ!」
「おー!ウィルフ!こっちこっち!」
昨日私が自己紹介して、ロザリオファングと戦った大広間に着いた。
私以外の生徒は、八割以上が既に到着、または集合していたようで、2日目なのだからもう少し早く来れば良かったと思った。
「ウィルフ、俺の隣来て。」
「ネビロ、昨日はありがとう。スキル知らなかったけど、『植物使役』だったんだね。」
「はっはっは、そうそう。礼を言いたいのこっちの方さ。『植物使役』と言っても基本的には魔物用じゃないんだ。力不足で迷惑をかけた。しかしウィルフ、君は魔法が得意なんだね」
「そんなことは無い。ただ出力が高いだけだ。精密な威力の調整は出来ない。」
「へぇー。まぁ俺たちはラッキーだったってことか。」
残りの生徒達が集まってくる。
カツカツ……という足音と共に、ドストフが壇上に現れた。
「諸君おはよう!いい朝だ!今日も自分の訓練に従事したまえ!では訓練室へ戻れ!」
「ウィルフ、訓練室に行こっか。」
そう言って私とネビロは昨日の訓練室に行こうとする。
すると、アルカンさんから声がかかる。
「ウィルフ君!昨日言い忘れたけど!魔法の訓練については同じチームのアガリアに聞いて!」
「分かりました。」
そう返事をする。
訓練室のドアノブに手をかけた時、背中をバン!と叩かれる。
「ウィルフ君!アンタ凄いじゃん!あの魔物ワンパンするなんてさ!」
声の主はアガリアだった。
「ちょっとアガリア、ウィルフびっくりするじゃん。」
「いいでしょ〜、褒めてんだからさぁ!」
「あ、ありがとうございます……」
「陰気だなぁ〜!これから手とり足とり教えてあげるんだからさ!気楽にいこう?」
「わ、分かりましたッ!」
キィ……と訓練室のドアが開く。
「ウィルフ君、こっち。」
アガリアに促され、謎の植木鉢がたくさん並んでいる場所に座る。
「これはなんですか?」
「ほら、これからやる訓練は「植物を成長させる魔法」、一般的には「成長魔法」と呼ばれる魔法の訓練でしょ?だから、この植木鉢の中にある植物の種に向かって魔法をかけて練習するの。とりあえず1回やってみてよ。」
そう言われ、私は植木鉢に手をかざす。
「えっと……魔法の名前は?」
「〈植華成〉よ、やってみて。」
「分かりました」
腹の底から、手先にエネルギーを送るような意識で、魔法を発動させる。
〈植華成〉!!
ぴょこ、と草が芽を出す。
直後、にょきにょきとその芽が大きくなっていく。
最終的に、その芽は大きな花を開花させた。
「ええっ!すっご!本当に初めてだよね?!」
私は随分なお世辞だな、と思った。
何故なら、普段魔法を使ったあとに感じる疲労感をまったく感じなかったから、出力もそれ程出ていないと思ったからだ。
「ちょっとネビロ!来て!」
「どうかした?」
「ウィルフ君すごいわ!」
ネビロが駆け寄ってくる。
私は、お世辞を言うのは別に良いが、他の訓練してるメンバーを巻き込むなよと思った。
「ちょ、ちょ、もっかいやって!」
やり方はわかった。
せっかくやるならさっきとは違い次は意識的に出力を上げてみる事にする。
〈植華成〉!
さっきより早い速度で花が成長する。
すると、ピシッと植木鉢にヒビが入り、そこからにょろにょろと根っこがはみだしてくる。
「うわっ、まじか、これアガリアより速いんじゃない?」
そう言われたアガリアは怪訝そうな顔をした。
「失礼だな!ウチはもっと成長しづらいので訓練してるからそう見えるだけ!」
「まぁ僕初めてなんで……比べるのが失礼ですよ。」
「いや、でもこの速度、ウチならここまで達するのに丸1年はかかったかも。」
そ、そこまで言われると、なんだか調子づいてきた気がする。
お世辞、そうこれはお世辞、そう頭では考えていても嬉しいものは嬉しくなってしまう。
「才能の塊じゃん!最高!ほら、アンタも先輩にこんなに褒めさせたんだから!頑張ってもらうよ!」
「はっ!はいっ!」
-6時間後-
1度の負荷は小さくとも、6時間も打ちっぱなしだと、さすがにヘトヘトになる。
「ウィルフ君、調子どう?訓練上手くいってる?」
不意にアガリアが声をかけてきた。
「……アガリアさん、前から思ってたんですが、君付けなのに咄嗟に呼ぶ時アンタなの引っかかるんで呼び捨てでいいですよ。」
「ああそう?わかった。ウィルフ、あと1時間だけど魔力持ちそう?」
「多分大丈夫そうです。」
「……アンタホントに才能あるんだね、ウチ初日は2時間でギブだったよ?」
アガリアは少し恨めしそうに言った。
今日は褒められてばかりな気がする。
「まぁ、魔法使いの持久力不足は永遠の課題ですから。」
「……ナチュラルに自分だけは例外にしてる所がまたねぇ」
「お疲れ様でしたぁー……」
「おおーウィルフ、実質初日おつかれさん。」
そう言うネビロも、かなり疲れた様子だった。
「ねぇ、ネビロ、ウィルフさぁ、もう実用できるよね?」
「実用?」
私は少し引っかかった。
「言い方悪いよ……まぁでも、できるだろうね。」
「よし決まり!ウィルフ!明後日の休日空いてる?」
「えっ、えぇー、空いてますけど……」
「じゃあ10時にここから最寄りの竜車停来て!絶対!」
「えぇ〜……」
疑問は解消されないまま、私は帰宅した。




