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植物マイスターが怪物と呼ばれるに至るまで  作者: 一味唐辛子
第一章 15歳の少年ウィルフリード
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ネビロチームでの初日

「最初の1年間は家から通って、その後寮に入りたいんですけど、大丈夫ですかね?」

私は研究所の所長、ドストフにそう尋ねた。

「なるほどね、OKそれでいこう。」

ドストフはそう言って渡した書類に判子を押した。

「じゃあ今日のウィルフ君は……」

騎士のアルカンはドストフに尋ねる。

「うん!今日から他メンバーと一緒に訓練に参加してもらおう。着いてきたまえ、今日から君の先輩となる子達を紹介しようではないか。」

ドストフは私とアルカンを引き連れ、別棟へと移動する。


「諸君!紹介しよう今日から諸君の後輩となる男を連れてきた!ウィルフリード君だ!ちゃんと挨拶を済ませるんだぞ。」

そこには20人余りの私と同い年ほどの少年少女がいた。

「ウィルフリードだって?」

「なんだお前知ってんのか?」

私の名前を聞いた一部の生徒達がざわつく。

「騒ぐな!ウィルフリード君、自己紹介を頼めるかね?」

「はい。初めまして、僕はウィルフリードと言います。15歳

趣味は楽器、スキルは植物マイスターです。」

自分なりに、角が立たないよう自己紹介をした。

目立たず、かといって無能だとも思われないようにしたつもりだが、問題はそれ以外にあった。

「お前〈呪われた孤児院〉のウィルフリードだろ」

……まさか

あの時代のことを知っているやつがいるとは思わなかった。

「まさかお前がこんな風にのうのうと生きてるとはなぁ。アイツに殺された奴らが浮かばれねぇぜ。」

「ラーム、なんだそれは?」

「知らねぇのかいドストフさん?コイツの孤児院じゃ……」

「辞めてくれ」

口を衝いで出た言葉は、その一言だった。

「頼むから、辞めてくれ。」

「……むむ、ウィルフリード君がそう言っている。辞めてあげなさいラーム。」

「いいえ辞めませんドストフさん。殺人鬼の子供に配慮する必要性を感じませんから。」

「なんだと?」

「違う誤解だ!」

「なぁーにぃ?後輩の癖に俺が間違ってるって?生意気なもんだなぁおい?」

ラームは明らかに喧嘩腰だ、ここで相手に乗っかって戦うのは得策じゃない。

だが、私にも尊厳がある。

「……舐めてんなよ、先輩だからってちゃんと事実を確認もしてねぇ事をベラベラ喋ってると……」


「双方静まれ!!」


その言葉に、ふと我に返る。

「アルカンさん……」

「俺には君たちの監督責任がある。初日に揉め事とは芳しくないなウィルフ君。」

「すみません……少しカッとなってしまいました。」

「ラーム、君からも謝りなさい。喧嘩を売ったのは君だ。」

「けぇ〜っ……さっせんしたぁ〜」

「チッ、ウィルフリード君言ったろ?馬鹿は雇いたくないと。まぁ卒業までに更生すればよし。諸君、仲良くするように。」

そう言ってドストフは帰っていった。

「ほら、みんな自分の訓練を始めて!ウィルフ君はそうだな、ネビロ!君のチームに入れてあげて。」

「俺のっすか?わっかりました。」

体格のいい黒髪の優男がこっちに寄ってくる。

「ウィルフ君、だよね?今日からよろしく。俺ネビロってんだ。君の1年先輩になるかな。」

物腰柔らかにそう話しかけてきた。

「よろしくお願いしますネビロさん。さっきアルカンさんがチームって言ってましたけど、他にもメンバーが?」

当たり障りのない返しをする。

「あぁ、女子が2人。緊張しなくていいよ。それに、敬語も使わなくて大丈夫。」

「お心遣い感謝します。でも、流石に初対面では……」

「んー……まぁそれもそっか。さあさあ着いたよ。ここの部屋だ。」

キィ……とドアが開く。

中はかなり広く、置いてある道具から、ここで訓練をするのだと察せた。

「あれ、ネビロ、新人ウチらのチームで預んの?」

「君ら帰るの早過ぎない?ほらアガリアとレティも自己紹介して。」

「はいほーい。ウチはアガリア。17歳でここはもう3年目に入ったかな。スキルは『植物魔法使い』。ここでは植物を育てる魔法を訓練してる。さっきはラームがアホな事して悪かったね。よろしく。」

赤毛の長髪を靡かせたつり目の女性は、最大限柔らかくしたであろう口調でそう言った。

「あっ、僕と訓練する魔法一緒です。」

「そうね、ここの人達の6割はこの魔法を訓練してるし。なによりアンタ…じゃなくて、ウィルフ君の『植物マイスター』はウチの『植物魔法使い』の上位スキルだしね。」

ほぉー、と思いつつ、私は隅で座っていた、黒髪ショートの陰気そうな女子に目をやった。

「ほらレティ!アンタも自己紹介!」

「はっ、はいっ!わ、私はレティって言います……その……私も15歳で……まだ一年目です……。す、スキルは『植物学者』で……解析の魔法を練習してます……。」

そう言って精一杯笑って見せた。

健気で可愛らしい、そう思う反面、これはコミニュケーション取るのが難しそうだと感じた。

「そうなんだ、よろしくね。」

できるだけ和やかにそう言う。

コンコン、私の言葉から間を置かずドアがノックされた。

「ちょっと入るぞ!!」

随分慌てた様子で入ってきたのは、アルカンさんだった。

「どうかしたんですか?アルカンさん」

「ちょっと俺だけじゃ手に負えない!来てくれ!」


「なんですかあれ!」

そこには、天井からぶら下がった植物系の魔物がいた。

「あれは「ロザリオファング」っていう植物系の中級の魔物だ!今はラームが突っ走って一人で戦ってる!あれだけ下がれと言ったのに!」

「まじか……アガリア!レティを守って!」

「わかった!」

自体は混沌を極めていた。

「あんな魔物、どこから湧いたってんですか?!」

「おそらく、研究所のほうにいた実験用のやつが脱走してきたんだろう!お前のスキルでどうにかならないかネビロ!」

「そんな事言ったって、俺の『植物使役』じゃ中級の魔物はどうにもならないですよ!せめて弱ってさえいれば……」

正直、中級クラスの魔物と鉢合わせるのはデジャブだった

「待ってくださいネビロさん、弱ってさえいればいいんですか?」

「……?何か案があるのか?」

「ウィルフ君、なにか策が?」

「アルカンさん、とりあえずラームさんを下げさせてください。巻き添えくらうかもしれません。」

「お、おお、分かった。ラーム!!下がれ!!」

アルカンは精一杯の声で叫ぶ。

「問題ねぇ!!こいつは俺だけでぶっ殺せる!!」

「あのバカ……さっきから魔法が微塵も効いてないのが見えてないのか?!」

「アルカンさん!無理やりにでも下げさせないと!」

「ああっ!畜生!!」

そう言ってアルカンはロザリオファングの猛攻の中に飛び込んでいった。

「何すんだアルカンさん!!離せっ!!」

「ウィルフ君!!早いところやってくれ!!」

「よし……じゃあ火炎魔法……」

その言葉をネビロが遮る。

「まて火炎魔法だと?ただの火炎魔法じゃ……」

アルカンも反応する。

「そうだウィルフ君!火炎魔法じゃなく、せめて爆破魔法じゃないと、アイツの体力は削れない!」

爆破魔法だと?そんなのまず一般人に使いこなせる魔法じゃない。

「ええ?!あぁ、クソ!爆破魔法か!なんか1個知ってたな……思い出せない!」

「なんだ?〈爆散弾(クラスターボム)〉か?!」

「違う!もっと……なんか細長いの!」

「〈誘爆槍(エクスプロランス)〉か?!」

「違う!なんかキャノン砲みたいなやつ!」

「〈穿爆砲(シャープキャノン)〉か?!」

「それだァァ!!」


「爆破魔法!!」

穿爆砲(シャープキャノン)〉!!


突如として別棟内を鋭い閃光が覆い尽くす。

ボグシャッっと魔物の肉体が弾ける音がする。

「おおっ!」

土煙が少しずつ収まる。

ロザリオファングの身体には大穴が空いていた。

それでも尚、ロザリオファングは蠢いている。

「ロァァァ……!」

ロザリオファングは突如としてネビロ襲いかかった。

バチン!!

「ネビロ!大丈夫か!」

「ええ……大丈夫ではないですけど……もう大丈夫なはずです。」

アルカンが吹っ飛ばされたネビロに駆け寄る。

「大丈夫ですよ……今、「刻印」を付けましたから。」


ロザリオファングの動きがピタリ、と止まる。

「これでもう、俺の支配下です。」

ロザリオファングが寄ってきて、ネビロを抱擁する。

アルカンさんは気の抜けた声で、こう言った。

「はぁ〜、一安心。しっかしウィルフ君、ホントに爆破魔法初めてだったの?ロザリオファングを1発であそこまで削るとは。」

「いや、まじで神経使いましたよ……」

まぁ、主に周囲を巻き添えにしないようにだが。

「ウィルフ君、今回のは全て君のおかげだ……ウィルフって呼んでもいいかな?」

「いいですよ。ネビロさんも改めてよろしくお願いします。」

「はは、ネビロでいいよ。もう戦友だろ?」

「……あっはっは!じゃあお心遣いに甘えて。」

「ありがとうネビロ」



戦友一人獲得。上々の初日だ。

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