生中結婚
分娩室にタキシードと花束……少しミスマッチか?
いや。プロポーズするんだから正装でなくては。
「結婚して下さい」
「ぅぅうおねがいじやーーす!」
「おおっ!」
今まさに『半分この世に産まれてきた』赤ん坊の代わりに母親が返事をしてくれた。
私はカズナリ。89才。余命一ヶ月を宣告されたジジィだ。
出産中のこの女は綺羅羅。
私に多額の借金のあるゴミ女だ。
きららは借金をチャラにする代わりにと自分の子供を売った。
それがこの子……梅子。
自分の嫁の名前をつけられるなんて最高だ。
産まれる前からこんなジジィの嫁になる事が決まっているなんて可哀想に……
「ふぅぅん!遺産もくれるんでずよねぇ!」
「うるさいなぁ!そうだよ!」
「あじゃじゃまぁーす!」
汚い声で囀るな。感動が薄れる。
おお梅子。この子は生後1年以内に未亡人になるのが決まっている。
すまないなぁ!遺産は好きに使え!好きなだけオムツもミルクも買え!
梅子。お前の戸籍を汚してしまうのが苦しい。
「それにしても立派なお◯ん◯んだ」
梅子は逆子だった。