記憶の彼方 後篇2
記憶の彼方−後編2
こんにちわ、私、リリィです。
って、初めっていうか、前にも紹介したけれど。
一応、言っとく。
占い師で魔術師でもあります。
そんで、催眠療法が得意だったりします。
いきなり、すっごい剣幕の派手なおばさんが来て、
(おばさんって言ったら、殺されそうだけど・・・)
自分の子供の記憶を消してくれって、
言われて、大金置いて子供も置いて、さっさと帰って行った。
何もしなくて、諭吉君がちゃんと立ってくれるくらいの厚さ。
(これでも前金らしい。)
かなり、お金には縁が無い私にとって、
嬉しい話なんだけれど、
子供って、可愛い高校生だったりで、
私的には目の保養となり、文句のつけどころがない、
ウマウマな仕事だったりなのですが。。。
大金の袋を抱えたまま、なんとか笑顔で、
その子と、前向きに話合い。。。なんて
悠長なものではなく、この私に対する
ガードの堅さが、すんごく腹が立ってしまって。
(初対面で、多感な年頃の男の子なら、当然かもね。。。)
わかっちゃいるけれど、なんかムカつく!
でも、小生意気な感じがあって、
そこがまた可愛いんだけど、私の気に障ったというか、
少し苛めてやろうなんて、私の子供っちぃ気持ちが、
かえって、彼を同情し、なんとかしてしまう状況を、
自分で作り出してしまうという、
情けない結果になろうとは、露にも思わず。。。
こういうの墓穴掘るっていうんだよね。
きっと。。。
(ミイラ取りがミイラになったって、
こういう事だよね。。。)
なんて、思いながら、大好物のキセルを一服、
プーッと煙を口から吐いて、輪っか作って、
この後どうするか。。。考えていた。
実際、彼が嫌がるであろうシーンを彼の頭の中から、
自分で覗いたのは事実。
少し、興奮気味というか、感情的な状態だったから、
催眠の状態に落としていくのは、すごく簡単だったけど。
少年と世間では呼ばれる年代の彼が、
あんなすごいHしてたりするのか〜って思うと、
妙に羨ましくもあり、そういう恋愛してたりする彼が少し
妬ましくもありで、全部を視るのを途中で止めてしまった。
(年は取るもんじゃないわね・・・)
彼はまだ眠っている。
スヤスヤ寝てる。
だって、起こしてないから。
てか、起こせなかった。
私の家には地下室がある。
その地下室の彼を一人寝かせたまま、
私は彼と扉を挟んで、外で一服、
少し変わった造りのこの家には、
簡単には行けない、長い長い下る廊下の下に地下室がある。
単に真っ直ぐじゃなくて、カーブもあったりするのですよ。
電気もつけてないから、慣れてるはずの私だって、
一人じゃ怖いくらいの暗さで、ホントに闇で、マジ怖い。
目の前は全くの漆黒の一色で足元なんて見えやしない。
そこをろうそく一本で歩かなきゃいけないこの廊下。
まるでお寺とかにある、地獄めぐりってやつみたいな感じで、
ろうそくつ付けたって、大した光になんてならない。
その先が見えない不安と自分の勘と手探り状態で、
この廊下を歩く心境。
この長い長いくねった廊下が、いつものリリィから、
魔術師リリィと変えていく、私の精神レベルをさらに上げていく
プロセスを辿るのを、具現化したようなこの廊下。
ろうそくもつけずに、実際の私の目には何も見えていないけれど、
心の眼は、この扉向こうの眠り姫が見た夢を、
私の中でリプレイされていて、この真っ暗な空間に投射されて、
私は物思いに耽る。
(私も、案外乙女チックな人間だったんだ。。。
自覚が無かった・・・)
どっかの不良とかやってそうな座り方?膝を抱えてドアにもたれて、
ボーっと膝を抱えて、どこに視線を置くでもなく宙をを眺めていた。
私の口から意味もなく、煙が出てる。
吸ってるか吸ってないんだか?分かんないような状態で、
単にキセルを咥えてるだけって言ってもいい。
とりあえず、煙を口から吐き出して、このどうしようもなくて、
キュンとなってしまった気分を少しでも緩和しようと、
頑張り中だった。
(一回、やつを起こすか・・・)
私は今回は、キセルをちゃんと吸って、ポワっと輪っかを作って、
綺麗に輪っかになって、それがどんどん上に上昇し、
時間とともに、切れ切れに薄く消えてなくなるのを確認したら、
スクッと立ち上がり、重い気持ちと重い扉を一気に開けて、
もう一度彼の傍に座る事にした。
「・・・ぇるかなぁ・・・ぉきて・・・」
パンッ!
両手を彼の頬に充てて、挟み打ちしてやった。
わぁっと、少し慌てた様子で、置き上がった彼。
簡易の長椅子に、真っ白なタオルケットを被せただけで、
ほんと簡単なベッドの様なものの上に、ずっと寝っ転がってた彼。
さすがに、安定は悪いだろうに、
一気に置き上がったモノだから、落ちかけてるところを、
私が手を貸してやって、なんとか落ち転ばずにセーフ。
彼の目の前に回転椅子がある。
そこがずっと彼が寝ている間、彼の頭を覗く為に座っていた椅子。
クルッと椅子の背を彼の方に向けて、ドガっと跨いで座った。
椅子の背中充ての両手をかけ、顎も乗せ、だらけた感じでわざと
そういう風に座った。
彼は上半身を起こして、私の眼を見た。
私も眼を見返す。
変な緊張した空気が流れてた。
彼の頭を覗くのは、止めようと、
私は心の中で、密かに一人で決意した。
彼は私を上から下まで、観察するように見ているみたいだった。
私の今日のお召し物は、ゴスロリ大好き好きな人間だから、
当然、黒まっしぐらで、胸には十字架のネックを何本もかけて、
もちろん、胸の谷間は作。ってます。
ブレスには、ごっついゴシック系のブレスと、
幾つものパワーストーン。一応、仕事上ね。
指に、パワーストーンの指輪とちょっと気味悪い形で、
それどこで売ってんの?みたいなゴツゴツした指輪が
何種もつけてあり、爪は超〜〜ロングでストーンがこれでもか!って
くらいのコテコテ指。
ウエストはゴスロリなら、当然コルセットでウエスト絞って、
スカートも当然超〜〜ミニ。
網目にピンクリボン付き黒のガーターストッキングに、お約束の黒ピンヒール。
髪は、黒の腰までロング&オン・ザ・眉毛で真っ赤な口紅。
長い金のキセルを加えた女を目にしてどうよ、君?
文句ある?って感じで睨み返してやる。
普通に、こんな井出達の女は見たことね!〜って顔で、
ドン引きすんのは、やめてほしかったりするけど。
それ以上、君、固まってるよって感じで、
何の変化もないのが、これまたつまんない。
私は自分で好きでやってんだから。
それより、問題はあんたなんだから。
普通に人間だから、変な目で見るのは止めて頂戴って、
言ってはみたものの。
ここなんかの、処刑場なんですか?僕、これからどうなるんですか?って
やつに言われちゃったw。
確かに、この部屋って儀式用だから、
普通に生きてたら、知らなくてもよくて、見なくてもいい円が、
いっぱいあったり、円の中に三角描かれて、
そんなかに眼玉があったりの円や、円の三角が何個も重なる図形や、
何の意味があるの?っていう乱数のような数字の羅列や、
ビンゴゲームのカードを配られた図形もどきとか、
円に四角が描かれて、なぜ枝?なんか付いてたりする図形が、
天井・壁・床に白いペンキみたいなので描かれてるから、
真っ暗でも少し光って見えてたりすると、
内容分かってる私でも、正直怖いわな〜って思ったする。
(確かに、私も一人じゃ怖かったりけど。)
子供には関係ないのよ、この図形は。
ってビビってない風に大人の余裕で、キセルを飲んで煙を出す。
煙が行ったせいか?目にしみてるみたいで、彼は急き込んでいた。
「取って喰ったりしないわよ。」と、一応慰めの言葉をかけてやった。
ついでに立ちあがり、ツカツカと奥に置いてあるワイン棚から、
ワインを取り出し、二人分グラスに注いで、お盆無しでお行儀悪いが、
彼にも「はい。」って手渡た。
私もまたドスンと椅子に座りながら、早速ワインを口に含んだ。
ついでだから、ボトルも持ってきた。
ボトルのお顔を見ながら、また一口と口に含む。
これは、1971年モノのブルゴーニュ産の上物。
こんなガキに飲ませるには勿体ない代物だけど、
もらってる金額が金額だし、
怖がらせたって意味もあって、少し奮発してやったつもりだけど、
意味わかんないだろうな〜って、横目で見ながら私も彼を観察した。
(てか、未成年なのにねってw)
「僕、お酒なんか。。。」
彼は匂いを嗅いで、お酒とわかったみたいだ。
私が出した酒を小生意気にも、拒否しやがる。
いいの♪いいの♪って手で合図して、言ってやった。
「お酒じゃないわよ。キリストの血よ。」
「え?」
「嫌だったら飲まないでいいわよ。私が飲むから。」
自分はもう、飲み歩して、またグラスにワインを注いで、
それを半分以上飲んだところだった。
仕方がないのはわかってるけど、
一応、舐める程度に、彼はグラスに口を付けた。
そして、小さな声で、私に訪ねてきた。
「あ、あのぉ・・・」
「なに?」
「し、下着、見えてるけど・・・」
(なんじゃ、それってw
そこ、赤くなるとこ?
それ以上の事、やりまくってるのにw)って、
思ったけど、ちと、からかってやりたかったから
軽はずみにも、言ってしまった馬鹿な私。
「これ、見せてもいい下着だから、見えてもいいの。
それ以上の事、やっといて、私の下着見たくらいで、
赤くなったりしないでよね。」
椅子をクルクル中途半端に左右に揺らしながら、
彼の様子がどう変わるか?見てみたくて、
言ってしまった。
グラスの残りのワインを飲み干して、
私はまたグラスにワインを注ぎに、ヤバかったか?と
今頃、少し後悔の念に襲われる。
彼から目線を外さずには、いられなかった。
でも、チラっと見てしまう好奇心。
(私って最悪かも。。。)
彼は何の事?って感じで、一時ぽかんとした感じで、
私は彼の視線を全身でヒシヒシと受けていたが、無視を決め込んだ。
私の言葉の意味が、もしかして自分の事だと想像した時、
彼は、真っ赤と同時に私を怒鳴ってきた。
「ど、どういう意味だよ!さっきの・・・」
「ん?」
(やっぱりまずったか。。。)
彼は身体を私に向け片足降ろし、私の方へ身を乗り出すくらいの勢いで、
私に文句を言ってきた。黙って私は彼の言葉を聞く。
ワイン乃グラスを置くテーブルが近くにないので、手に持っていた
ボトルとグラスを床に置いて、身体を彼の方に今度はちゃんと向けて、
私は仕方がないから、開き直る態度で、彼を見て、モノを言っていた。
お酒は弱くないから、私にとってワインなんてジュースのようなもの。
でも、彼は違うかもしれないけど。
口は災いの元って、わかってるけど、
出てしまった言葉は消せない。
ここで私は腹をくくった。
「んって。。。僕に何したんだよ?」
「何をって?何を?」
「ごまかすなよ!ぼ、僕の事・・・。」
今度は立ちあがって、私に怒鳴ってきた彼。
だけど、手の届く私のところまで来て、詰め寄る根性はなさそうだった。
私は全く動じなかった。彼の怒りがこの程度位なら、尚更。
その場を動かず、じっと彼を私は見続けた。
知ったからって、なんだっていうの?
自分が選んだんでしょ?そういう人生。
自分勝手にてやってる癖にって言いたかったけど、
まだ、子供だから許してあげようと、
慈悲の慈愛の心で温かく、私はこの子を見てあげる事に
今から遅いかもしれないけど、始めた。
私は床からグラスを手にして、クイっと数杯目のワインを飲み干して、
彼に近寄る事もせず、今の位置を保ちながら、
彼と話をする事にした。
彼は私を睨んでいた。私は面白くなった。
(上等じゃない。私に勝てるとでも思ってんの?)
「僕の事が何?あなたの事なんて、私何も知らない。
椿 純子の息子ってくらいしかね。
その椿 純子があなたの記憶を消せって、
いきなりうちに乗り込んできたくらいよ。
私があなたについて知ってる事なんて。」
椅子を足を左右に大きく広げて、
(これで下着はもう、見えんだろう。)
椅子を左右にクルクル揺らして、嘘ついて言って。
フーッとため息ついて、彼を見る。
そして、私の首から下げてるロザリオを手に取り
に軽くキスをした。
私がこれからやることが正しいのか?
見ていてほしかったから。
どう話を展開していいか?私は彼の顔を見ていると悩んでしまう。
どんな時でも、練習より本番に強い私が、
今日はいつになく、言葉を探っていた。
「あなた、お酒回っちゃった?
そんなに睨んだり、怒ったりしないでよ。
私達、自己紹介もまだよ。
ちょっと、落ち着いてくれる?
言っとく。私はリリィよ。
よろしく。」
彼から近づいてくる事は絶対にないと思ったから、
床を勢いよく蹴って、長椅子の彼に椅子を廻しながら近づいた。
私より、少し目線が上な彼に手を出して、握手を求めた。
彼は長椅子に腰をかけるように座って、
出された私の手をじっと見て、それから私の顔をじっと見た。
「あなたは?何て名前なの?」
やっぱり、無反応。思った通り、彼は黙っている。
(・・・・・う〜ん)
何秒?何十秒?数分?経ったかな?
ってくらい、時間の長さを感じるんだけど。。。私。
なんだか、すんごい彼から感情の波動変動が伝わんだけど。
それでもって、それがすごく激しいモノであったりで。
顔を私から背けて、まるで私が汚いかのように、
そんな感じに私は受け取れてしまうくらい、吐き捨てるように言った。
「僕の名前なんて、聞かなくても知ってるくせに。」
「・・・」
(怒り?照れ?どっちかわからないわ。)
もう、いちいち考えて喋ってやるのが、正直めんどくさくなる。
お金の問題じゃなくなってきたいた、私の中では。
「何も聞いてないわ。私。
あんたの口からわね。
私は、あんたの口から聞きたいのよ。
そうやって、ダンマリやってもいいけどさ〜、
そんな事しても、あなたは家に帰れないだけだから。」
不覚にも、ムキになってしまったのは、私の方だった。
少し反省、言葉、ちょっときつかったかしら・・・
なんだか、悔しそうな表情。
でも、なんだか可愛い。
片方しか見えないから、いまいち表情が読めないけど。
こんなところでに私の力を使うのも、もったいない気がしてね。。。
面倒だけど、彼が心を開く事から、始めようと私は思った。
(仕方がない。長期戦?上等よ。どっちが勝つかやってやるわ。)
「長期戦やる気なら、私この部屋から出て、
違う仕事したいんだけど、構わないかな?」
ざまあみろ。やっぱりビビってる。
フフんって口元、嫌味っぽく歪めて、私言ってやった。
彼も案の定、不安そうな顔してる。
あのセリフ言うと、大概の人間は折れる。
もっとも、私の経験上の話。。。だけどw
こんな気味悪い部屋で、変な物ばかり置いてて、
普通は落ち着けない。
よっぽどのオカルト好きじゃないとね。
困ってるって顔してるあの子。
その顔に縦線入ってたみたいだった。
(確かに変な部屋だけど、処刑場はないわよね。。。w)
彼を落とすのは、案外楽かも。。って思いながらも、
私はチラっと目線を反らしている、
彼の顔を下からのぞきこむようにて見た。
この子なりに、この部屋がただの部屋じゃないって事だけはわかってるみたい。
この空間の空気が、彼を圧迫させてるって事くらい、私でもわかる。
(なんだかんだって、やっぱり可愛いよね、この子。)
可愛いからって、今回は私は引けない。
この子の口から直に、教えてもらわなくちゃいけない事が、
沢山あり、いやあるから。
あなたを見据える私の目をしっかり見てみな!って心の訴えが、
彼には聞こえてるか?心配なんだけどね。
目線は反らしたままだけど、彼はやっと口を開いてくれた。
私は真剣に聞いて、質問するを繰り返すだけ。
「・・・僕、僕は椿 理央。」
「理央ね、リリィよ。よろしく。」
取りあえず、第一関門クリア。
少し、ホッとした。彼も普通の子供だってことで。
だけど、私はクスリともしてやらない。
無表情を装いながら、私を言葉を続けた。
彼の中で、私に対するムカつきよりも、
ここに残される不安の方が、勝ったように思った。
(正常な人間の反応ね。この子は、おかしくない。)
「よ、よろしく。リリィさん。」
「リリィでいいわよ。皆、そう言ってるから。
私、年上、年下とかって概念ないの。
結構リベラルな人間だから、何でも来いよw」
やっと、理央が私に近づいてくれた。
確かに私、あの子の頭の中を覗いてるから、
彼の言うとおり、当然名前なんて、わかってるけど、
でも、違うの。彼が私に直接言う事に意義があるの。
椅子をゆっくりと彼に近づけて見る。
そうやって、私は理央に近づいた。
座っても、身長は彼のが大きいみたいね。
ヒールの分で、丁度同じって感じか。。
苦労してなさそうな顔。
その分、母親が苦労してるか・・・
自分の事は棚に上げて、同じ過ちを犯そうとしてるのが、
あの母親には理解出来ないんだろうか?、
名前を教え合った後から。理央は私の顔をやっと直視できるようになっていた。
理央に、私はニッコリしてあげた。
彼もやっとだけれど、私に対して、ちょこっと頭を下げて私にお辞儀した。
何の意味もないお辞儀。そんなの私には全く意味がない。
私は理央に手を出して、再度握手を求めた。
とりあえず、友好的関係を築こうとしてるのよ。
喧嘩がしたい訳じゃない。
ただ、確かめたかった。
彼の潜在意識を見れば、簡単に彼の事なんてわかるけど、
私は彼の、彼の口から生の音がどうしても欲しかった。
色んな意味でね。
彼は恐る恐るッて感じで、手を出してくれた。
軽く握るだけ。
私も圧力をかけるつもりは、毛頭ないから。
握手が終わると、さっさと手を除けて、
彼から、少し距離を開ける為に、椅子をスッと後に引いた。
理央も長椅子にちょこんと座り直しするみたいに腰を少し上げた。
両手を長椅子にかけて、足を抛り出すように座り、
恐る恐る口を開いて、私に訪ねてきた。
早速ですか〜って思ったけど。
「き、聞いてもいいですか?」
「私に質問?いいわよ、どうぞ。」
覗かないでくる、質問ってなんだか新鮮で、
どんな質問か、ワクワクしちゃって、
この座ってる椅子は回転具合が中々だったりなので、
クルクルって、左右30度ずつくらい、
廻しちゃったって感じねw
こいつ、きっとこの女なんなんだ?って思ってるわよね。
もっと混乱しちゃえって思いながら、
楽しみながらw彼の声を待ってた。
でも、質問の内容は大体想像できるけど。
「こ、この部屋なん、何なんですか?
薄暗いし。。。ろうそくだけなんて。。。」
(そらきたw。どっちなんだよね。
私の身なりか?この部屋の変なところの話か?
どっちかなのよ。)
ちと、小悪魔チックに、笑みを浮かべながら、
恐怖をもっと増やしてやりたい気分で、私は答えていく。
「今時じゃない?って感じ?」
「な、なんか不気味な感じがして。。。
だって、あそこになんか丸まって、包帯巻かれて、
包帯みたいなのにも、なんか描かれてるし、
まして、釘で留められてるって感じが。。。」
ふ〜ん、あれね〜って感じで、彼の不気味に思ったモノに、
顔だけそっちに向けて、彼について思った事。。。
彼は結構、勘がいいかも。
暗いからぼんやりとしか見えないんだけど、普通は。
だって、ろうそくが数十本しかないし、どこが奥か手前はどこまで?
なんて、普通はわからないから。
よく、目線反らしてた割には観察してる!って印象を持った。
どこまで答えてやるかな〜と考え中。
もっと気持ち悪い事言ってやろうかとも思ったけど、
本題にいけないと困るから、ある程度で抑えようと、
私の考えはまとまった。
「そうね、あれは生贄ってやつかな。
頭の先から足の先まで、包帯みたいな布でグルグル巻いてる。
包帯のありとあらゆるところに眼が描かれていて、
その上から、動きを封じる為にまた包帯のような布でテープみたいに、
巻いて釘で止めてる。
蝶か、なんかのさなぎみたいなもんと思って。
ま、中身は内緒だけどね。」
この辺で終わりにして、反応を見た。
あれに眼が釘づけって感じだった。
怖いんだなって私、確信した。
続けて、喋って一応軽く教えてやろうと、答えをまとめた。
「ここは、私の本来の仕事場。
所謂、テンプルって場所。祭壇とも言う。
理央は気持ち悪い?
でもね、ここは意識や感情の開放場でもある。、
怖く見えるのは、あなたの心に何かがあれを
そう見えるだけ。
だって、普通に円と数字か記号しか書いてないもん。」
(ま、こんな家、普通にってないけどねw)
私的に少しは、気持ちを楽にしたやりたかったから、
バカっぽく喋ってみた。
彼の刺さる刺棘しい視線を少しでも緩和してみたくて。
「・・・そうやって、僕のも見たの?」
理央の視線が、私をグサグサ刺してくる。
興味の対象に私は、変わったのかしら?
真っ直ぐな、純粋な目でキラキラして見ていた。
また私は、ゆっくりと彼に椅子を近づけてみた。
彼が真剣勝負を挑んでるなら、そのお望みのままにってね。
「痛いとこ、ついてくるわよねw
確かに見たけど、その前にきこえたんだよね。。。
聞いてってお願いする声がさ。
あなたの中から。
だからあなたを眠らして、見せてもらった。」
「どうやって?眠らせたの?
何にも飲んでなかったのに?」
今時ね。。。
人を眠らせるのは薬だけ?って思ってるみたい。
私はポケットに入っている、ペンデュラムという先っぽに、
紫色の石がついている、輪っかにはなっていないけれど、
一本のチェーンがついたモノをだして、
彼の目の前で、右手に持って揺らし始めた。
紫の石が下になって、チェーンの上のところを指先で持ち、
石が揺れている。
先っぽに金の装飾がついていて、結構綺麗なのもの。
「これ。
これで寝かせた。」
ペンデュラムはまだ揺れてる。振り子みたいに。
見たらまた寝るから直視しないでよって説明入れて、
私はまたペンデュラムをポッケに直した。
彼の表情は、こんなもので?って指さすくらい、
簡単な造りのモノに見えて、有り得ないって顔していた。
別に信じてもらわなくてもいいんだけど、
結構疑り深い性格って分かったから、
見えたモノをある程度、教えてあげた。
史登ってやつとどうやって知り合ったか?
理央が倒れた時、史登と向井地が、
あなたの家に向かったとか・・・
その史登とのベッドの中での事とか・・・
簡単に話してあげた。
こんなの魔術じゃなく、この部屋でもなくてもいいんだけど、
静かな方がいいかな?って思ってここにしただけで
理央には、疑う事が余地が無いというか。。。。
理央は、あっけなく私の話に堕ちた。、
私的にはもう少し反論とかしてもらって、ごねてもらう方が楽しみでもあったけど、
面白くな〜いとか、物足りね〜とか、不謹慎だけど思った。
物足りないモノを埋めるように、またワインを床から取って
今度は椅子じゃなくて、長椅子の彼の横に座って
彼と、話をしていこうと思ったので、席移動!。
ついでにキセルも吸いながら。
「こんなもので?って思ったでしょ?
結構出来るもんなのよw
初めて知った?
聞いたことあるかな?ダウジングって。
これもその一つなのね。
ま、私は何でも出来るからw」
ダウジングは、知らなかったみたい。
へ〜って顔してる理央。
ちょっとは、いい気分にさせてくれるじゃないって思っちゃった。
理央はさっきの見せてくれって、私に頼んできた。
(興味あるのかな?見せるくらい何でもないけど・・・)
私はポッケからだして、彼に渡してあげたけど、
紫色の石が珍しく思えたのかな?
自分で揺らしてみて、これで寝ちゃうんだって、
ある意味感心して、揺らして遊んでいた。
(こうなると、普通に少年なんだけどね。。。)
「あげようか?」
「えっ?」
驚いて、私を見る表情の彼は、これまた結構可愛い。
これ自体持ってても、技術がないと寝ないし。
持ってるだけなら、アクセと変わらない。
何の害もないから。
「いいわよ。あげる。
勝手に視てるし、お詫びも兼ねてw
あげるわ。」
「ホントにいいの?」
「いいわよ、高いもんじゃないし。あげる。」
「あ、ありがとう。」
ぺこっと、軽く私に頭を下げて、
嬉しそうに紫の石を綺麗だって言って見ていた。
「あ、一応言っておくけど、
これだけじゃ、寝ないからw
腕がいるわよ。w」
と、付けたし。
え、そうなの?って表情も、可愛かったり。。
何に使うつもりよ!って突っ込みたかったけどやめた。
聞くだけ、野暮?ってやつと思ったから。
いちいち可愛いな〜って思いながら、
横目で彼の表情は逐一チェック!。
「だって、教えられないわよ、
そんなの。
ま、アクセにでもしなさいよ。
私が使ってたから、他のよりは結構霊性強いし。
お守り程度にはなるから。
チェーンだけ変えたら、ネックレスにはなるわよ。」
そうだね。。。って少し残念そうだけど、
可愛いから、ワイン飲みながら、
一言アドバイスしてあげ。
とにかく、早くこの件片付けて、次へ行きたい私としては、
彼にご機嫌を直してもらう事が、重要な事でもあった。
「霊性って?なに?」
「霊性?
そうね〜この場合だと、
守ってくれる石の力の強さって言う感じかな・・・」
「色んな意味があるの?霊性って?
この石、持つと強くなれるの?」
「色んな意味はないけどね。これの使い方としてって意味で。
体力が出てくるとかってんじゃないわよ。
精神的な強さを与えてくれるっていうか。。。
あと、勘とか良くなったり、
ひらめきが強くなったりとかってあるよ。」
そうなんだ。。って顔して、まじまじ石を見る理央。
視なくても、彼の考えが分かったりする私。
私も少し閃いた。
すくっと立ち上がって、でもグラスは離さない私だけどw
奥の方へテクテクと歩いていった。
少しガサゴソと物色中。
確かこの奥にって、私の忘れっぽい記憶をなんとか手掛かりに、
机に上半身乗っかって、引き出し漁ってる私。
当然、彼の方からすれば、また下着が見えてるよって、
状態なんだけれど。
この年なったら、あんまり気にもしなくなり。。。
今の私より、たぶん理央の方が、エロ可愛いんだと思う。。。と
我ながら、理央に感心してたりする。
(私も甘いよな〜。)
「っと、みっつけたとッ!」
以前、引き出しの奥底に、こんなの使えね〜って投げ飛ばしたはずの
同じような代物を発見して、天高くゲットした物を掲げて、
ニッコリ満面の笑みで、理央の方を振り向きニタって笑った。
またカツカツ歩いて、彼の隣にガタっと座る。
手に持ったモノにすごく興味があるみたいで、
私の手をずっと直視の理央。
(可愛いな。。。史登が夢中にもなる訳だわな。。。
こりゃ、たまらんわ。)
なんて彼の顔を見ながら、思ったりして、
彼の手に私のゲットした代物を乗せてやった。
それは同じタイプの石が薄ピンクのペンデュラム。
サーモンピンクが、理央には合いそうな気がしてね。
「ついでにこれもあげるわ。
さっきの霊性が強いものんで、こっちは恋愛がかなうやつ。
あんた的には、こっちのピンクのが良くないの?」
どうよ、あんたっ?て感じで、顔をわざと覗きこむ。
少しだけど、赤くなる理央の顔を生で見ちゃってると、
もし、私も男であって、理央が男だってわかってても、
抱きついて、押し倒したくなるよなって、
思っちゃうくらい可愛いやつ。
私って、ホント腐女子ってやつだよねw
「ピンクはあんまり使ってないから、
どんなのかよくわかんないけど、石にお願いしたらいいよ。
恋愛がうまくいくようにって。
ピンクはローズクォーツ、紫はアメジストって言うのが、
石の名前よ。」
「う、うまくって。。。でも、記憶消すとかって。。。
言って・・た。」
「それは、あんたのママゴンが言ってるんでしょ?
あんたはどうなの?
これね、ペンデュラムって言ってさ、
自分が好きな相手がどう思ってるかとかって、石にね聞くの。
ま、例えば、そこにYESorNOのマークを勝手に、
作って置いておくとしよう。
そこで、廻しながら聞くの、相手はどう思ってる?って、
そしたら、どっちかに動いてくれる。
その止まった方向が答えって言う風に、本来は使うんだよね。
ただ、私みたいに催眠にも使えるし、チェーン変えたらお守りにもなるって、
便利な奴なのよ。
でも、そういう風に答えてくれるまで、石とはだいぶん、仲良くなってないと、
ダメだから。アクセで使えば?石もメンテいるからめんどくさいわよ。」
またワインを注ぎながら、若い子相手に飲むのって、
気持ちいい感じになってきながら、
もう一口を何度も繰り返して飲んでたりする。
よし!理央は嬉しそうにしてる、私へ心もある程度開いた。
こっから、ぶっちゃけトークだ!
「ねぇ、聞きたいんだけど、
あんた、ほんとに記憶消してほしいの?」
えっ?って顔をして私を見た。
何驚いてんの?って思ったけど、
私がキセル吸いながら、ワイン片手に言っても
単なる酔っ払いのたわごとにしか聞こえないかもしれないなって
自分がその立場なら、思うかもって考えたから。
彼にも一杯、飲めって注いで手渡した。
今度は少し少なめにして。
飲むの?って、顔をして私に見せるけど、私が注いだ酒が飲めんのか!って、威嚇して、
顎でくいっと促して、飲めよっと命令。
理央はしぶしぶ飲んだ。バツ悪そうに
その顔を見るだけでも、私は楽しくってしょうがない。
「しぶ。。ッ」
「あら、何度も言うけど、これはキリストの血よ?
しぶっ?ってないでしょw
それに、これ上物よw
あんたが生まれる前から、作られてて眠ってた代物。
高級品よwほんと、お子ちゃまね〜w」
アハハって笑いながら、キセルを吹かす。
私は、煙の先をなんとなく見てた。
だんだん薄く引き延ばされて、消えていく煙。
遊びはこの辺にして、そろそろ本題に入らないとって。
少し、ワインは止めにして、彼の話を聞き出す方に誘導しようと、
口卑しいのか?なにか、ないとイライラしちゃう性格だったりする。
彼から口を割ることはないだろう。
だからと言って、私は待つ気もない。
私は、いつも直球でしか勝負はしない。
子供かもしれないが、恋愛もそこそこやった人間が目の前にいる。
だからこそ、対等に勝負してやらなくちゃって、思った。
視なくてもわかる。
理央が史登ってやつを、どれだけ好きかって事は。
理央の目は、もう十分に恋する大人の目だから。
私は、彼の方に向いて、胡坐かいて座って、真っ直ぐに、
長椅子に座って、彼を見る事にした。
私の体勢が変わって、目つきが少し変わったのも、
彼は察したのか?少し後ろに身を引いていた。
(また、下着見えてる?
それか、リリィが酔っ払ったとでも思ってるのかしら?
言っとくけど、私ザルだから。。。)
と、心の声が叫んでる。
ま、私としてはどっちでもいい。
そんなの関係ないから。
少しずつだけど、彼は私に心を開いた。
それが証拠で十分だった。
「私、酔っ払ってないので、あしからず。
それと、私は直球勝負しかしない。
あなたの気持ちをあなたの言葉で聞かせて。」
一方的に投げ掛ける私の言葉に、何の反応もなかった。
半分以上意味が分かってないと見た。
彼は、取りあえずという意味だろう、うんとだけ、頷いた。
「何個か、質問する。
真面目に答えて。
初めにも言ったけど、リベラル派です。
それに私自身こんななりの女。
偏見とかそういう固定観念は一切無いから。
言いたい事言って頂戴。
もう、催眠状態は嫌でしょ?」
冗談混じりえたつもりなので、クスって笑ってあげた。
少しここで緊張を解そうと思っただけ。
無理矢理答えを引き出したって、意味がないから。
その意図だけは、分かってもらえたんだろう。
そこはしっかりと、うんと理央は頷いた。
理央も身体を私に向けて、足を抱えて座った。
(上等ね。いい心構えし、いい面してんじゃないの。)
「んじゃ、早速。
いつ、見つかったの?
二人の関係は?」
理央の目の表情が一気に曇った。
というか、身体が硬直?固まったっていうやつか。
あまりに直球すぎたか。。。
でも、聞かなくちゃいけない事だから、仕方がない。
口から出た言葉を消すことは出来ない。
でも、私は信じていたい。彼の本音が出る事を。
あなたを一人の人間として、私は見てるから。
私からは、逃げないで欲しかった。。
何の変化もない二人、全く動かないといってもいいくらい。
いや、彼は微かに戦慄いてるというか・・・
その数秒でも、私にはすっごく長く感じた。
でも、待つ事を知ってる私は、少し目を伏せた。
真実を欲しがる私の目が、彼には鋭い矢のように思えるかもしれない。
そんな矢のように視線が刺さるようでは、
彼以外であっても誰であっても、話せる事も話せないだろうから。
でも、理央は少しずつ話してくれた。
私のアンテナがピクッと動く。でも、目は閉じたままで胡坐もかいたまま。
「ぼ、僕の家で。。てか、全部見たんじゃ?
こんなこと、今更僕が言わなくても。。。」
「僕の家でどうしたの?」
私は強い口調で、怒鳴る感じで言い放った。
奴の弱い意志の言葉なんて、聞かない。可愛いってだけでは許さない。
今は、話だけを進める事に私は集中した。
(さあ、話せ。そして私が欲しいモノを頂戴。)
口調の荒さに私の真剣さが、理央にも伝わったみたい。
理央は嫌々?いや、それより恥ずかしさの方が勝ってたか。
さっきまで真正面に私を見ていた視線は、いきなり下に向きながら、
私の顔を全く見ないで、話していった。
「僕の家に彼が来る事は、何度かあったんだけど、
その日も、ママは帰って来る日じゃないって事で、
僕も安心して、彼を呼べたんだ。
そしたら、ママは急に帰ってきて、使用人の中の一人が
ママに彼が来てるのを言ったみたいで。
たぶん、ママは嬉しかったんだと思う。
彼と僕が仲良しで家にも来てくれるようになってって、
だから、ママは・・・」
理央の言葉は段々小さくなって、聞き取れないくらいの声の音になった。
(そこが大事だちゅ〜のに!)
説明は後で、とにかく音をくれって思ってるのに、
小さくなっていくなんて!信じらんれない!
ちと、怒りモードが私の中で発令されたようで、
彼には悪いが、語尾を強めて、理央に言った。
「ママはどうしたの?」
「え?」
「え?じゃわからない。ママはどうしたの?
聞こえない。ちゃんと答えて。」
私は目をずっと閉じたままだった。でも、言葉は強く真っ直ぐに。
顔も当然、理央へ真っ直ぐ向けて。
私にとてって今は、理央に喋らすことが、一番の目的だったから。
フラフラした私と、うって変わった今の態度が、怖かったのか?
理央は大人しく私の言う事に従った。
人に話をするなんて、初めてだと思うから。
可哀そうでもあるのだが、ここは折れてもらわないと、仕方がないのよ。
言いたくないオーラが理央の全身から感じたけれど、そんなの私は全く無視!
観念した理央は、この頃から普通に話せるようになってきた。
「ママが僕の部屋にいきなり入ってきたんだ。
ノックもしないで。。。
でも、されてても分かんなかったかもしれない。
僕達、Hしてた最中だったから、そっちに夢中で。。。」
「それで?」
「僕達いい訳のしようもなくて、ママはそれを見て発狂するくらい、
大きな声っていうか、すごい声だしてた。」
「なにか言われた?ママに」
「何してんの?あんた達みたいな感じで言われて、
その声で僕達もびっくりして、途中だったけど、
服に二人とも慌てて着替えて、でももう僕達の言葉は聞いてくれなくて、
ママは彼を追い出して、僕の携帯も取り上げられて、
そっから、彼にも学校にも会ってないし、行ってない。」
「その彼に何か言ったの?あなたのママは。」
記憶をたどってる?それとも考えてる?どっち?
冷たい空気が余計に重く感じてしまう。
でも、答えて、理央。あなたの為でもあるから。
多分、一生懸命考えたんだと思う。
言葉を選んでいるのか?少し考えた様子の彼。
「とりあえず、帰ってくれって。
でも感じ的には、まるで叩き出すって感じだった。
それからも僕の話は全く聞いてくれなくて、ママは。
ママは僕が病気だって、思っちゃって。。。
精神科とか、心療内科ってところとか、
色々、行ったけど、どこもダメで。。。」
「ダメッて何が?」
「僕が、彼を好きだって事が、頭から消えないっていうか。。。」
「ママは男同士っていうのが理解できなくて、
女と男でも上手くいかないのに、男同士でどうこうなるって有り得ないって。」
「あんたの気持ちはどうなの?
その史登って奴への気持ちは?」
「ど、どうって?どういえば。。。」
「好きなの?嫌いなの?愛してるの?どれ?」
下向いてた彼の顔が、私を真っ直ぐいきなり見た。
彼の視線を感じる。強い意志とも言える。
石のせいか?ヒシヒシと、私の中の血液へ電流が流れるように感じる。
(この気持ちは嘘じゃないね。)
「嘘じゃないよ!本当に好きなんだ。
確かに、初めは利用してやろうと思ったところもあって。。。」
「利用?」
「う、うん。」
「彼の気持ちを?」
「そう。いつも僕と視線が合って、僕、気持悪いって思ったから、
席も変わってもらって、一度学校の中庭に倒れた時、
僕を抱えて家まで連れて帰ってくれたんだ。」
「そう、それで?」
「ママは、史登の家と懇意になりたかったから、
ママは史登の事ばかり褒めて。。。
彼を家に招きなさいって命令されて。
僕なんてどうでもいいんだって、ママに逆恨みしちゃって。」
「そうか、でも助けてもらったんでしょ?理央は。」
「うん、だから、お礼言おうって思って。
そしたら、彼にキスされて、びっくりしたけど。
史登は家に来る?って言ってきた。
なんとなくわかっていたけど、ママの事もあるし、
そういうの、初めてでわかんなかったから。。。」
「んで、家についていったって訳ね。」
「うん。」
「んで、そこで最初に身体の関係ってやつか?」
「そう、その時は、どうでもよかった。
ママはこの関係知ったら、面白いとかだろうとか、
ママを裏切ってるのが、楽しかったりとかって
思ってて。ざまぁみろって感じで思ってた。」
「なるほどね。」
「それからは、彼の家に毎日行くようになって、
僕の家の迎えの車も止めて、二人で帰るようになって。
彼の部屋は一番奥だったから、誰も邪魔する人いないし、
部屋にシャワーもついてるしで。
それに日本画家の息子で、家も僕の家よりすごく広くて、
少し相手してれば、僕も気持ち良かったし。
ママに対して、やっと反抗というか、
そう言うの出来る状態が出来たのが、うれしかった。」
「屈折してるわね。。。親への愛情が・・・」
「うん。そういう気のない僕に、史登は怒ってきて、
その時、SMみたいな事されたんだけど、
その時は、どうして?って思ったんだ。辛かったし・・・
でもそれは僕が悪かったって反省して、
そんな僕にでも、史登はすごく優しくて気を使ってくれて、
僕は、彼も寂しい人なんだって思って、僕と同じだって。」
「嘘が本気になったって事?それとも同情?」
「史登が好きな気持ちがあるって気がついて、
彼しか嫌になっていたんだ。
彼と本当の恋人になれたって思えた。
だから、彼を自分の家にも呼ぶようになって。。。」
「殆どっていうほど、二人でいたんだ。」
「うん、そういうのってあんまり気にしないっていうか、
普通っていうか、僕の学校。。。」
「確か銀蘭だったよね?お坊ちゃま学校の。」
「うん、先輩に憧れる後輩も多くて、付き合ってるとかって
話もよくあるんだ。それに彼も2年ダブってるから、
僕からしたら、同年でも先輩の人でもあるし。。。」
「彼、その史登ってやつのこと、愛してるの?」
「うん、だと思う。いつも助けてくれて、
強姦じゃないけど、言い寄られて迫られてた時も、
いつも、守ってくれて、傍にいてくれて、
すごく安心できて、飾らない自分がそこにはいて。
ママより実際安心できて、愛されてるって思えた。」
「今、どんな気持ち?」
「史登に会いたい。会って謝りたい。
ママのした事、自分の事の悪かった事とか、
もう一度、チャンス欲しいって言いたい。」
「別れた訳じゃないんでしょ?」
「でも、僕あれから連絡取れてないし。
あんな扱いされて、僕なんてどうでもいいって、
思われたどうしようって・・・」
「そうなんだ。」
「リリィさんがタバコ吸うから、彼と似てるなって。
それだけでも泣きそうになったりして。。。
僕、捨てられるかな。。。」
私はやっと眼を開けた。
そこには、グスグス涙を流してる理央がいた。
両手で一生懸命、涙を拭いていた。
私は、座ってる長椅子に立ち上がった。
急に立ちあがったもんだから、
グラスがガシャンと音を立てて、下に落ち割れた。
ボトルは、音で気がついた理央がなんとか押さえて
助かったが、私はそんな事今は、どうでもよかった。
私が今度は理央を見下ろす番。
何が起こるのか、私の行動から眼を離せないでいる理央。
「分かった、んじゃ口開けて!」
「?」
「いいから!」
私は声高くして、理央の顔を両手で挟むようにして、
自分の方へと引っ張った。
(今だ!)
理央の顔を左手で固定して、右手を口の中に突っ込んだ。
何?何が起きてる?リリィ何するんだ?って顔してる理央。
手を突っ込んで、私はあるものを取りだした。
さっき彼が口にした気持ち。
そして彼の口から発せらた音。
それらは、そんな奥まで手を突っ込まなくても取れた。
というか勝手にというか出てきた霊が二つ。
そんな大きくなかったけれど。
水色と紫色の霊、二つを私は理央から取り出した。
それらは小さく輝いていて、指でピンって弾くとふわふわ浮いていた。
「取り出すのに、それほど苦しくなかったでしょ?」
アワアワって口が半開きの理央。
理央は、何これ?という顔してる。
僕の中から異物がでてきたってな位の感覚はず。
取りだすってなかなか、できないから
見た事ないのが、普通の人間。
(口半開きも可愛いなって、私重症かしら?)
なんて、理央の顔見て思っちゃった。
私はふわふわしたこの霊二つ右手で、
一つずつ飲み込むように、口へ運んだ。
「あぐッ!」
ゴクリと飲み込んだ後、理央は飲んだよ!?って顔。
意味が全く分からないし、さっぱりだから、完全に目が泳いでいた。
少し震えているともいえるだろうね。
私が怖いって思ったんだろう。
距離を取ろうと、後ぎりぎりまで、身を引いていた。
いや、後ずさりというんでしょうね。これって。
(ま、説明してないからな〜、てか、しないとだな。)
普通は見えない人も居たりする中で、
彼の反応は二つとも見えた。
石のせいか?
それともこの子の素質?
今はどっちでもいい?
それの確認は後でもできる。
きっちり飲み込んで、昇華するまでは。。。ダンマリだ!
口の中に入って、喉を通るのが分かった。
そして胃に入ったのを、私は自分で確認してから、
理央に私は今の事を説明する事にした。
めんどくさいけど。。。
「さっきのは、言霊と音霊っていうんだよ。
理央の言葉が、本当かどうか?確認して、
あんたの気持ちが嘘じゃないって分かったから、
取りだしたのよん。」
ん?って頭の上に?マークが何個も乗ってるような感じの理央。
理解してもらおうって、サラサラ思ってないから、私。
そしたら、私に今度は異変。
これは私の想定通りの事。
私はブツブツと言いだして、口から包帯のような布を、
エンドレスのように両手で、引っ張り出してきた。
まるで手品でしょうw
床の一部に白い包帯のモノが山盛りになるくらい、
その布は私の口から出てきた。
「理央、来なさいな。」
私は理央をクイっと、首で来いって感じで表わして、
そのたんまり溜まった包帯には、ミミズが小さく這ってるような、
文字か?絵なのか?
わかんないッ様な、にょろにょろした線が縦にいっぱいというより、
気持悪くて、それが体内から出てきた事によって、
気分が悪くなるような曲線ばかり、描かれていた。
溜まりにたまった包帯のようなモノに曲線がいっぱい縦に、
描かれたこの物を、床に飛び降りて、ある所へ運んだ。
理央も私に取りあえず、ついてくる。
たぶん、怖かったんだろう。
同じ部屋の中といえど、私にひっついてないと、
不安だったと思う。
私は立ち止った
理央も立ち止ったけど、段々後に下がっていく。
そこは、さっきの目玉の生贄の場所だった。
私の後ろにひっついていた、理央が少し後ずさりしていた。
私はその生贄を前にして、布をこんもりと手に持ちながら、
引きずりながら、背中の方にいる理央に視線を感じながら尋ねた。
「理央、その記憶はあなたにとってどんなもの?」
「え?」
私のフインキを感じたのだろう。
怖いって言う、こいつ何もんだっていう不安感。
彼の顔を見なくても分かる。
少し振り向く感じで。私もう一度理央に聞いた。
「理央にとって、この記憶はどうしたいの?」
「どうしたいとは・・・?」
「いるの?要らないの?」
「いる!で、でもママのことは。。。」
「ママのことは・・・?」
「まだいい。知ってもらなくて。。。
その時が来たらまたその時で・・・」
「消したい?消したくないの?」
「消さないで。リリィお願い。
史登との事は全部僕にとって必要なんだ。
だから、僕の中から、消さないで。」
「わかった。ユークリッド入ってきて、そこに居るんでしょ?」
「・・・っへへ。」
私はどこも見ないで、ずっといる存在に言った。
え?どこ?って顔の理央は、
可哀そうだけど、またまた驚いた顔をして、
とりあえず扉の方を向いた。どこから聞こえてるか?わかってないのだが。
「ユークリッド、頼んだものは?」
続けて言う。
「あるよ、ほら。」
ユークリッドなるものは、扉の方にゆらゆらして立っていた。
そして、足音とか殆ど、立てないで、
ここはフローリングだが、音を立てないで、
リリィのところに向かってきた。
「理央、驚かしてごめんね。こいつは私の相棒なの。
お行儀悪い子だけど、私に免じて許してやって頂戴。」
ユークリッドは私リリィよりも、いや、理央よりも数十cmも身長が高く、
線の細い男で、髪の毛はリリィと同じ黒で牧師みたいな上下つなぎのような、
ところどころ白の線が入った黒い服を着て、大きなとんがりハットを被っていて、
髪の毛は黒のザンバラって感じで、薔薇の匂いのする男だ。
やぁ!と私と理央に声をかけ、両腕に抱えたモノを床にそっと置いた。
「あっ!」
理央は驚いて、床に置かれたものの方へ動きだし、座りこんだ。
「そう、史登よ。」
私は、理央に言った。
「会いたかったでしょ?
本物だから、大丈夫よ。
ユークリッドに言って、連れて来てもらった。
理央、心配なら起こしてあげて。」
理央は、うんと言って、史登の上半身を起こして、
「起きて、史登。僕だよ。」って何度も言っていた。
「ユークリッド、無茶はしてないでしょうね?」
史登を置いて、私の傍に来たユークリッドを少し睨むようにして言った。
「大丈夫だよ。寝てるときに持ってきたから。
少し、薬は使ったけどね。
理央君。キスしてあげると起きるよ。たぶんだけど。」
ククって気味悪い感じで笑って、理央を見ながら言った。
ユークリッドは近くで見ないと、わからないが眼鏡をかけている。
その眼鏡をいじりながら、立っていた。
「僕は眼鏡をはずすと、何も見えないから、大丈夫だよ。」
理央が、何を気にしてる理由がユークリッドには察知したみたいで、
気まずそうではあったが、私も背にしてるし、
とりあえず、大丈夫だから起こしてあげてと、私も言ってあげた。
返事がないまま、でも理央の動作は背中で感じる。
ユークリッドは見ないと言っていたが、あいつこそ、嘘つきの権化みたいな
野郎だから、どんな方法を使っても見てるだろうとは思ったが、
理央には悪いけど、内緒に私はしておいた。
彼、可愛いねっとユークリッドは私の耳元で言った。
私は、黙ってろ!って心で語り、ユークリッドを睨んだ。
ユークリッドは、おぉ怖ってな表情をして、
私の手のモノを拝見と言って、眼鏡をかけてジロジロ見てきた。
「これが彼から出た霊?」
「そうよ。」
「へぇ〜、結構素質あるんじゃないの?」
「そうね、あんたの代わりにはなるんじゃないの?」
「司祭を怒らすと怖いからね。黙ってるよ。」
私はまたユークリッドはを睨んだ。
やっと彼は静かになった。やっと大人しく私の隣で立つ事を選んでくれた。
(まだかよ。。。早くしないと、これが。。。)
これ以上は待てないかも?って、私は少し焦りもあった。
彼から取った霊二つを具現化して、これを早く使わないと、
これ自体が消えちゃうから。
催促をしようとした時、史登はうっと声をあげた。
(起きたか?)
「史登、僕だよ。理央。わかる?」と、懸命に声をかける理央。
「ユークリッド、何したのよ。こんなに起きないって。」
「う〜ん。少し気持ち良くなる薬っていうか・・・」
「あんたね・・・正直にいいなさいよ。」
また不安そうな顔の理央が目に見えるようだった。
もう、勘弁こんなの繰りかすの!って思いながらも、
一応励ます私。
「大丈夫よ、ユークリッドは医者だから。非合法な物は使わないから。
単に麻酔系の薬を使っただけだから。心配しないで。
何かあったら、私はすぐわかる。
それにこいつをタダではおかないし。
こうやってるときのユークリッドは、やましい事のない証拠だから。」
「あっ!史登!」
史登がやっと目が覚めたみたいだった。
頭を振りながら、少し呻いたが理央の顔が目に入った途端、
史登は理央を抱きしめていた。
(こっちは時間がないんですが。。。)
なんて、私のイライラはそっちのけで、二人は抱擁を交わしてる様子。
そんな私のいら立ちをユークリッドはわかるから、
フフって鼻で笑ってるみたい。
手が空いたら、殴ってやると心に決めて、
取りあえず、大きく私は咳ばらいをした。
「ウォフォッン!」
やっと二人の視線が、私に来た。
私は振りむけないんだって、言えないから。
「お目覚め?史登さん。私はリリィ。こっちの大男はユークリッド。
よろしくね。
時間が無いから、さっさとするけれど。
理央から話は聞いたわ。あなた達が、理央の母親に引き裂かれた時、
あなたはどう思ったの?」
「?」
「時間が無いの!早く答えて!」
この女、なんで怒鳴ってるんだ?って思われてるでしょうけど。
そこは流石相棒、ユークリッドがフォローに入る。
「君たちが見つかった時の事だ。
理央君に対して、君はどう思ったかを教えてほしい。
素直な気持ちを伝えてくれ。
頭がボーっとしてるかもしれないが、
時間がないんだ。答えてくれないか?」
(相棒やるじゃないのさ。)
黙ってたらいい男なんだけどね、こいつも。
そんな感想を抱きながらも、言ってやると調子に乗るから、
言わないでおく。
「私たちはやるべき事があるの、その為にはあなたの協力がいる。
理央があなたにとって、今はどうでもいい存在なら、
答えなくてもいい。心で言って頂戴。
そうじゃないなら、口で言ってほしいの。
理央、あなたは私の隣に立って頂戴。」
理央の不安そうな顔が私にもわかる。
弱々しいオーラ。
私は理央を、私のそばに呼んだ。
どうせ、ここに立たなきゃいけないから。
後先になっただけの話だし。
理央は彼を残すのを心苦しい感じで、史登を見ながら、
私の傍に来た。
「俺は、変わらないよ。リリィさん。」
「言葉にして頂戴。それじゃ私には分からないわ。」
「俺は誰がどうであっても、理央を離さす気はないし、
誰よりも一番に思ってるつもりだ。
それは変わらない。」
「愛してるのね。理央を。」
「あぁ、一度も忘れた事なんてない。」
「ありがとう、史登さん。助かったわ。
少し、ユークリッドがおいたをするけど、
少し我慢してね。」
私はユークリッドに、私が理央にした事と同じ事をするように、
眼で合図した。
彼も承知とばかりに、史登の傍に行き、史登の顔を押さえて、
片手を史登の口の中に突っ込んだ。
「うっ!」
史登の苦しそうなうめき声が出た。
理央は史登の方を振り向こうとしていたところを、
私は前を向け!って大きな声で命令した。
理央はウサギのようにビクっとして、耳を垂れるように、
しょぼんとして、前を嫌々向いていた。
史登のうめき声は少し、理央より長く続いたが、
やっと霊が二つ浮んできた。
それをゆっくりフワフワ浮ばせ、ユークリッドは私にこの二つの霊を
見せてくれた。
すごいだろって言わんばかりの顔が、何気に嬉しそうな感じで。
「ユークリッド、悪いけど食べないで、出してね。
分かってるわよね。」
「司祭の前で食べたら、俺、破門だろ?
する訳ないじゃない。少し待ってろ。リリィ。今出すから。」
ユークリッドは、私と同じように霊を二つ口の中に入れた。
理央より数倍大きい霊だった。
ユークリッドにやってもらって正解だった。
私なら、もっと時間がかかるだろう。
理央もすごいって顔してる。
私は理央に説明してあげた。
「私が理央にした事を史登にして、ユークリッドは私と同じ事をしてるのよ。
理央より大きいでしょ。それだけ気持ちが大きいのよ、あなたに対して。
よかったわね。理央。」
「そうなの?」
「うん。」
「心の中に空洞が出来たのと、同じ事。
この中にまたあなたたちは、新しい二人の思い出を入れる事が出来る。
あと少しだから、我慢してね。理央。」
さっぱり何の事だかわからない、史登だけど。
説明は理央からしてもらってって感じに、私はなっていたから。
彼には全く触れずにいた。
可愛そうだから、理央を彼の元に戻れと指示をして、
そこにじっとしてろって言った。
ユークリッドから布が出てきた。
同じニョロニョロな線がいっぱい書かれた布だ。
量が多いかったが、ユークリッドは、頑張って全部出し切ってくれた。
そして、それをわたしの腕の上に乗せてくれた。
「よし、集まった。ユークリッド。始めるわ。
魔法円の設置をして。簡易でいいわ。問題ないでしょ。」
「そうだね。乗せるだけだからね。」
ユークリッドと意見が合ったところで、彼は魔法円の設置をした。
丁度、この生贄が中央にある円は、古代ソロモン王の紋章と言われる、
円の中に複数の四角と三角形がまじり、
ヘブライ語で書かれた聖書詩編7章の文字が円のいたるところに書かれていた。
ユークリッドは四方の壁に清めの儀式をする。
段々円の淵が明るくなる。
ユークリッドは、東西南北の門を開け、物見の塔への守護神達に挨拶をし、
そして、私たちを諸界の狭間という世界に連れていくことが出来た。
空中に4つの5芒星が青白く光る。
後の二人は円の中に居る事も確認した。
私はそこから言われるまでじっとしてろと命令した。
二人には視えていないだろうが、私たちには視えている世界があって、
それは小さな正方形の箱二つを中心として、
造られた想念の世界でもあった。
そして、ユークリッドは、チャントと呼ばれる歌を歌った。
神々に捧げる歌でもあった。
それが終わると同時に私は言った。
「全ての中心より上下内外至るところ全ての中心より力を受けよ。
諸界の狭間において、全ての世界に置いて我らを助けるべく。
かくあるべし。」と。
私がいい終わると、私の手にあった布が一本ずつ時間差で天井高く飛び、
そして、生贄に布の上に更に勢いよく、巻きついていく。
シュッシュッと音を立てながら、目の前の生贄に巻きついていった。
まるで、自分の意志があるかのようで、多分、後の二人は何がなんだか、
分からない状態であろうけれど。
門が閉まるのまでに時間がない。
私は、とにかく進めていく事に集中した。
「カーヴァンクルの魔犬は出すかね?」
クスクス笑いながら、ユークリッドは私に耳元で囁いた。
「あんた、殺されたいの?」
「冗談だよ。リリィ。生贄が女だとどうしても、調子が悪くてね。」
「年取りすぎじゃない?燃費悪そうだしね。」
ムカつく答えにはムカつく答えで応戦してる私。
でも、ユークリッドがこんな事言う時は、まだ時間があるからという
私への無言の合図だった。
こんなくだらないやり取りの間に布は全て、生贄に巻きつき、
今までの眼は全て隠れて、今度はニョロニョロの線がたくさん書かれた、
布に巻きつかれている状態だった。
ただ、釘で押さえつけられている部分だけに、眼の布は姿を視る事ができた。
そのニョロニョロの文字の上に私は、私の紋章を自分の右手の人差し指を噛み切り、
血を出して、絞りながらはっきりと分かるように書いた。
ユークリッドが釘を左回りに回りながら、抜いていく。
計13本。
ユークリッドは、抜いて私に渡してくれた。
私は言った。
「布よ、巻きつけ。力よ、呪縛されよ。光よ、明らかにせよ。
さぁ、封印せよ。」と。
13本に刺された布は、生贄に急速なスピードで巻きつく。
ランダム的な感覚で、同じように時間差を作って。
全てが巻き終わった時、時間が一時止まった感覚。
私とユークリッドだけは、瞬きもせず、その布を凝視していた。
すると、布は床に溶けていくように少しずつ消えていく。
段々、溶けてなくなると同時に、私は右回りに13本の釘も元ある場所へ
刺していった。
その13本の釘は、布が消えると同時に、布と同じように、
床へ溶けていくように段々下へ落ちていった。
まるで、全てのモノが地球の真ん中に力を封印するために、
戻っていくような感じで。
私はやっと息をつく事が出来た。
時間までに間に合ったから。
そして、言った。
「ユークリッド、門を閉めて頂戴。全部終わったわ。」
「わかった。」
ユークリッドは神々に終わりの挨拶をし、
そして、東西南北の門を閉めていった。
すると、先ほどまで宙に浮いて視えていた青い5芒星も、
下に地球の元に溶けていくように段々薄くなって、
しまいには無くなって消えてしまった。
やっと私は二人に振り無事が出来た。
「終わったよん、これであなた達は大丈夫。」
私とユークリッドが、家にえが見えるように二人の前から少し、
自分たちの位置をずらして、見えるようにしてやった。
理央と史登は同時に声をあげた。
「あっ!」と。
それは仰天ともいえる、ひっくり返るような大声で驚いていた。
「マ、ママ!?」
理央は避けんだ。
理央が生贄にかけようろとした時、ユークリッドは足を出して、
わざと理央を転ばすように仕向けた。
私はそれを怒らない。
何故なら、今ここで生贄に起きてもらっては問題があったからだ。
「まだ起こさないで。
悪いけど。理央。」
こけた理央を見下ろしていった。
ユークリッドが、私にワインを注いで持ってきてくれた。
お疲れって言いながら、そして自分もグラスにワインを注いで、
二人で、乾杯をして飲んだ。
「の、飲んでる場合じゃなッ!」
「起こしたら、失敗になるよ。」
ユークリッドは、理央の言葉をさえぎるようにしていった。
「ごめんね。今から説明するわ。
時間がなかったのよ。
だから、勝手に進めちゃったけどね。」
ワインを飲んだら、少し気が楽になって、
理央にも優しく言える自分に戻ってた。
(なんとか間に合って、成功した。)
フーっと息をついて、へたり込む理央の目の前にかがみこんで、
またニコっとしてやった。
「あんた達の言葉は真実だった。
私はそれを否定したくない。
だから、簡単なのは、あなたのママゴンの記憶を消して、
これは後々だけど、あんた方を認められる包容力を持てば、
問題ないと思わない。
一時だけど、あの記憶はママゴンは消えてるから。
当分、ばれない様に二人ともしてね。
当面、あんたん家では、やんないことね。
ばれる可能性あるから。
後々、あんた達が大人になって、ちゃんと自活できるようにでも、
なれば、カミングアウトしても理解できるようにしてあげたの。
それまで、一時あの記憶は封印させてもらった。
次思い出す時、それはあんた達にとって良い方へ、
彼女の思考が行くように力を向けた。
そのためにも、今は力が馴染むまでそっとしておいて欲しいの。
おわかり?」
今出来る言葉での説明は、したつもり。
ユークリッドもそうそうと眼を閉じで、我ながらすごいとでも
言わんばかりの大きな態度(私にはそう見える)で、
私の話に頷いていた。
初めに史登が唇を切った。
「信じていいのか?」
私はスッと立ちあがって、史登を見降ろしながら言った。
「なんなら、起こしてみる?
知らないわよ。私。
後で困ったって言っても、助けてやんないから。
私が助けるのは一度だけ。
どうする?史登さん。
どうせダメなら、一度は私に賭けてみない?」
こういう時、ユークリッドは、気が利く。
私にキセルに火をつけて、持ってきてれた。
私は仕事の後の一服ッて感じで、フーっと煙を吐いた。
うさんくせぇとでも思ってるんでしょって感じで、
見てるのは、わかってるんだけど、初めだからそういう態度でも、
仕方が居ないのはわかってる。
(さぁ、どうする気?)
もう一服。フーと煙をはき、ユークリッドが灰皿まで用意してくれてる。
そこに灰をコンっと落とした時。
答えたのは、理央だった。
「いつまで?マ、ママはこうしてるの?」
「明日まで、ちゃんとユークリッドがあんたの家まで、
送っていくわ。」
「信じていい?」
「自分で考えて。」
少し考えて、ママを見ながら。
涙も浮かべてたかもしれないけど。。。
理央はちゃんと言った。
「リリィさんの言葉信じるよ。僕。」
「あら、すごい信用ね。私。」
敢えて嫌みで答えてやった。
「だって、僕の話ちゃんと聞いてくれたし。。。」
「ダメな時は、文句を言いに来る!」
「アハハ、私逃げてるかもよ。」
ウっと答えに詰まる理央。
こういう小動物系は苛めると楽しい。
「その辺にしといたら。」
「あらら、ユークリッドに言われたわw
私も年かしら?w
もしかして、理央に惚れた?
ユークリッド。
あ、そうそう。この人もお仲間だから。
それに友達少ないし。仲良くしてやってよw」
私は笑いながら、言ってやったけど。
ユークリッドは、キセル吸う私にまた灰皿を向けてくれた。
そして、灰をまた落とす。
彼は眼鏡をいじりながら、フフって口元歪めて笑った。
「理央がそういうなら、俺も信じるよ。」
ふ〜んって顔で、肩越しに史登を見た。
「上等ね、二人とも。いい根性よ。
私、そういう子大好きなの。
安心して。私は嘘は嫌いだから。」
ヘタってる理央に合わせて、私は屈んでほっぺにキスしてあげた。
そして、既に立ち上がっている史登にも、同じところにキスしてあげた。
「んじゃ、契約成立ね。
明日が楽しみね。
んじゃ、乾杯しましょ。」
ユークリッドが史登と理央にワインの入ったグラスを渡した。
史登はこれは。。って顔したけど。
「大丈夫よ。キリストの血よ。
祝福の時は、飲むべきものよ。
んじゃ、乾杯〜!」
そう言って、私はグラスを高く上げた。
ユークリッドも、同様にして、口にワインを含んだ。
まるで一気飲みのようにも、私のには感じたが。
「ユークリッドさんは身長高いんですね。
史登より大きいみたい。」
理央がグラスを持ちながら聞いた。
「ユークリッドは190以上はあるわよ。
さぁ、飲んで飲んで、
理央に言ったけど、71年モノよ。」
私は、二人が飲んでくれるのを楽しみに待った。
史登には少し知識があるみたいだった。
へ〜っと感心してるみたいで、そこから迷わずグッと飲んだ。
理央は舐めるようにペロッペロッと味わった。
私は二人の様子を微笑ましく眺めていた。
そして言った。
ユークリッドが、私をチラっと見たから。
「ありがとね、飲んでくれて。
悪いんだけど、ここから普通に帰してあげられないの。
いったん、いい子でお寝んねしてくれるかしら?
二人とも。」
私の発言に驚いた二人は、私の顔を眼を見開くような目で見たが、
もう遅かった。
身体の自由が利かないみたいで、立っていた史登は膝をガクっと
ついて倒れかけていた。
理央はもう、半分意識が無かった。
「・・・・・・・」
「言葉にならないでしょ。史登さん。
理央には言ってるけど、ユークリッドは、医者なのよ。
少しの間、あんた達には眠ってもらうわ。
ちゃんと二人とも、無事に帰してあげる。
だって、大きな子供二人なんて、私には邪魔で仕方がないのよ。
おやすみなさい。」
ニコって笑って、史登の唇に私は口づけた。
(これでもう、意識はない。)
その通りに、彼は倒れた。
もうすでに眠りこけてる理央にも、口づけた。
「よくがんばったわね。理央。
また会いましょう。」
「ユークリッド、ここから出るわよ。」
彼は無言で私に頷き、そして、私たちは彼らを少し振り返って、
眠っているのを確認し、重い扉を開けて、この部屋から出ていった。
史登と理央を残して。