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ラムド様と初デート

 

「ほら、行くんならさっさと行きますよ! 言っときますが、行ったらすぐ帰りますからね? 別にラムド様とのデートなんて、楽しみでも何でもないんですからね!?」


「あぁ、分かってるよ」


 慌てて弁解したら、ひと昔前のアニメツンデレキャラみたいな台詞になってしまった。


 これじゃまるで、私がラムド様を好きになっていってるみたいじゃない。


 いかん、いかん。

 この流れはいかん。


 部屋の隅で、ニヤニヤしてこちらを見ているライラを軽く睨む。


 ラムド様の台詞に戸惑っている場合じゃないわ。

 何とか好感度を下げないと。


 それにはまず、彼とのデートでドン引き女子を演じるのよ!


「じゃあ姫、ちょっと失礼して」


「ん? 何……ひゃあっ!?」


 昔ハマっていた乙女ゲームを思い出し、どうやったら好感度が下がるのか考えていると、突然の浮遊感。


 気付いたら、お姫様抱っこされていた。


 凄く自然にされたから、何が起きたのか理解するまでに時間がかかってしまった。


「ぶ、無礼ですよ! 下ろしなさいっ! ってか下ろして恥ずかしい!」


「こうでもしないと、ステラ姫はなかなか動いてくれなさそうだからね。急に暴れると危ないよ」


「普通は、お姫様抱っこって可愛いドレス姿だったら映えるの! 私今ジャージにパーカー姿だから! 可愛さの欠片も無いから」


「そんな事思ってたのかい? 僕は、姫が何を着てても気にしないよ」


「私が気にするの!」


「ほら、馬車に乗るからじっとして」


 何という事だ。

 あっという間に運ばれて、馬車に乗せられようとしている。


 あまりに自然な動き。

 女の子慣れしてるなぁと感じさせる。


「……どうしたの?」


 ゆっくりと座席に座らせられる。

 彼を睨み付けている私の視線に気付き、ラムド様は首を傾げる。


「……どうせ、他所の女の子にも同じ事してるんでしょ、って思って」


「ヤキモチ?」


「ち、違いますっ!」


 意味不明な事を言われたので、私はラムド様の前で馬車の扉を思い切り閉めてやった。


 ラムド様は、笑いながら馬車に乗り込み、私の向かい側に座る。


「何か、二人共良い感じじゃないですか……むしゃむしゃ」


「いつの間に隣に座ってんのよ、ライラ。というか、何食べてんの」


「姫様が、抱っこされてギャーギャー叫んでる間に先に乗り込んでました。そして、これは馬車のテーブルに乗ってあったチョコレートです……もぐもぐ」


「断りもなく、人の馬車のお菓子を食べるな。だいたいデートなのに、どうしてついてくるの」


「そりゃあ従者ですから……もぐもぐ」


 言いながら、ずっと食べている執事。

 だから勝手にもらうな、って。


「ラムド様も嫌がるでしょ、従者なんてついてきたら」


「大丈夫だよ。御者は、僕の従者でもあるからね。姫の執事と同じだよ」


「地獄の果てまでついていきますぜ、坊ちゃん!」


 御者が、馬に跨りながらこちらを振り向いて言う。

 なかなかにハイテンションな若者に、空気の読めない皇帝と、同じく空気というものを知らない女執事と4人でデートなんてカオスすぎるわ。


「んじゃ、動きますぜ皆さん」


 御者の元気な掛け声に合わせて、馬車は出発した。


 揺られて早々、気になる事がある。


「あの、ラムド様。デートって、どこに行くんですか」


「ここからしばらく馬車を走らせると、ムールって街があって、今はそこで丁度お祭りをしてるんだ。今日は、そこに行こうと思ってね」


「ラムド様って、隣国の皇帝ですよね。何で我が国の街なんて知ってるんですか」


「姫は、面白い事を言うなぁ。もしかして、忘れちゃってるのかい?」


「え、何を?」


「……申し訳ありません、ラムド様。姫様は、数日前の朝、寝ぼけてベッドから落ちた時に頭を打ったみたいで、そこから時々記憶が混濁するようになってしまったのです」


「えぇっ!? ステラ姫、大丈夫なのか? 医者に見せた方が……」


 至極真っ当な意見だ。

 私がラムド様でも、そう言うだろう。


 といっても、今はライラに合わせるしかない。

 うまい言い訳も思いつかないし。


「大丈夫です。ちょっと、記憶が曖昧になるだけで……日常生活には問題ありませんので」


「そ、そうか? けどちょっとでもおかしな症状がある時は、医者に診せた方が良い。何なら、名医を紹介するけど」


「あ、お気になさらず。私、医師免許を持ってますから」


「え、ライラってお医者様だったの!?」


 初めて、専属執事を見直したかもしれない。


「へぇ、それは優秀な執事を雇ってるんだな」


「いやいや、大したことはありません」


 ライラは照れながら、


「……この世界、実はあらゆる病とか怪我ってポーション一つで治っちゃうんで医師って必要無いんですけど、一般人ってそれ知らないんですよね。名医って、多分沢山の種類のポーション持ってるだけですよ」


 と、小声で教えてくれる。

 凄い衝撃の事実を知ってしまったんだけど!

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― 新着の感想 ―
超イージーモードに設定!! この辺からも普通の乙女ゲー転生ものとは違いますね。 そして始まるデート。 ってライラ、医者なのか? と思ったらそういう落ちかい!
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